25.囚われた乙女
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私の左肩から肘にかけて着いた傷痕は消える事はなく、あの時の行動に後悔はないけれど心には影を落とした…そして完治した頃、次の浄化を要請された。
パルムよりも、さらに小さな国ミルカンドで瘴気の森の範囲も小さいので今回も騎士団をミルカンドが出し、私達は少数での移動となった。
到着したミルカンドでは歓迎の晩餐会が開かれ、王族・貴族と挨拶を交わした。その中でも王の姪である公爵令嬢ゾフィー様が、私を大変気に入ったとかで…凄い押しの強さだった。お茶やら何やらお誘いを受けたが、取り合えず浄化が先なのでと曖昧にしてお断りをしていた。
森への移動も短く、浄化範囲も狭かった事から馬車なしの日帰りで浄化を終える事が出来た。その日は帰りが遅かった事もあり、すぐ身体を休める事にした。
次の日、急な突撃訪問でやってきたゾフィー様が…あれよあれよと私を馬車に押し込めて町へ向かう。ジーク達が席を外している間の出来事だったので、確認も取れず慌てた護衛は急ぎ馬で並走し着いて来てくれた。
「もう、やっと乙女様と一緒にいられますわね!」
「は、はぁ…」
「ずっとお断りされて、わたくし悲しかったんですのよ」
作った様な泣きそうな顔で話を続けるゾフィー様。私の頭の中は、最近過保護になっているジークに帰ったら怒られるかも…そんな事を考えていた。町の広場に到着し散策を始めるゾフィー様、私の護衛もしっかり着いてきてくれている。それにしてもゾフィー様には護衛がいない、公爵令嬢なのに変だなと思いながら腕を引かれていると…急に小さな爆発音が起こる。
「きゃっ、何事かしら?」
「さぁ、爆発の様な音でしたけど…ゾフィー様動かないでくださいね」
キョロキョロしながら周囲の様子を伺う、視界の端では護衛達も警戒している。しかし、怪我人がいるかもしれないし…私ならすぐに治療する事も出来る。
辺りが騒然とする中、怪我人がいるか確認しようと動き出した時…悲鳴と共にゾフィー様が攫われて行く様子が目に入る。一人の護衛に声を掛けて、もう一人の護衛とここを動かないからゾフィー様を追う様に言う。渋りながらも護衛はゾフィーを追いかけて行った。
「何が起こっているの?」
「分かりませんが、警戒したままの方が良いでしょう。私から離れないでください」
護衛に頷き返す。その時爆発音の方から、小さな子供が駆け寄り声を掛けてきた。
「乙女様!あっちに怪我人がいるの!!」と…変な違和感を感じながらも、強引に腕を引かれ…護衛と一緒に足を進める。裏道に差し掛かり辺りを見回した瞬間。
「ぐっ…」と呻き声と共に護衛が倒され、呆然としてる間に後頭部に衝撃を感じ思考は暗闇の中に落ちた。
***
目が覚め、ガンガンと痛む頭を押さえ起き上がると…見慣れぬ豪華な部屋。状況を顧みても攫われたんだろう。どうすればいいだろう…殺される事は…多分ないだろう。とにかく置かれている状況を把握しなければ。そう考えていた所でノックと共に一人の男性が入ってきた。
「お気づきになりましたか。初めまして、乙女様。私はゲルドと申します、以後お見知りおきを」
「ここは何処ですか?なぜ、私は攫われてここにいるのでしょうか?」
「攫うなどと物騒ですね、私共は野党に襲われた乙女様を保護させて頂いたのであります。ここは我が国ネロールとなります」
「物は言いようですね、ミルカンドいたのにネロールとは…保護した場所で国に申し出れば宜しかったのでわ?」
「保護した際は、まさか貴方が『異界の乙女』様などと思いもしませんでしたので…自国に一緒に連れてきただけの事」
「本当に言いようですね」
大袈裟なジェスチャーと笑ってない目でニコニコと微笑むゲルドに、呆れた顔を見せる。
「で…異界の乙女と分かったのですから、帰して頂けるのでしょう?」
「我がネロールは、ヨハンネル王国と同盟は結んでおりませんし国交も余りありません。それに異界の乙女様は、どこかの国に属している訳ではありませんでしょう。ですから、どこの国に居ても自由なのです」
国から抗議されたとしても帰す気はないという事ですか…。ここで騒いで監禁などされるより、様子を見て機会を待つしかない。我慢して耐えるしかない…。
「そうですか…それで貴方達の国は私に、何をして欲しいのですか?」
「じきに分かりますので、それまで部屋でおくつろぎ下さい。後程、乙女様付き侍女と護衛を紹介させて頂きます」
それだけ言うと、ゲルドは部屋から出ていった。窓の外はもう夕暮れていて、ネロールとミルカンドの距離を考えると転移でもしたのだろう。胸の真ん中に両手を置き…あれからずっと肌身離さず着けていたネックレスを押さえて彼を想う…「ジーク…」誰にも届かない声で呟いた。
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