21.異界の乙女とは…
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パラムの森で最後の渦を浄化し、一度塞がった傷が開いてしまったミオは浄化と同時に意識を失い倒れてしまった。緊急を要する為、アルンに指示を出し緊急用に所持していた魔石を使い転移する事を決め、王女と騎士団の事をテオに指示し、返事を待たずに転移させた。
城に戻り、すぐ治癒師を呼んだ。ミオを部屋に運び、ベットにそっと降ろす。侍女を呼び…血で汚れた着替えと、身体を清める様に指示を出す。ミオの傍に寄り…血の気の失せた青白い額に、そっと唇を落とす。終わったら声を掛けるように言い、王に報告する為に部屋を後にした。
***
テオや王女、騎士達も無事帰還を果たした。ミオは未だ目覚めない、つい先ほどまでジークが傍から離れなかったが…王から呼ばれ席を外した。
ジークが謁見の間に到着すると、王と王妃の横で…真っ赤な顔で怒りを隠さないエリザベータがいた。
「ジークお兄様っ、なぜですのっ!なぜ転移するのに、わたくしを置いて行ったのですか!」
「異界の乙女の緊急事態でしたので」務めて冷静に、しかし冷たい視線で応対する。自分が原因で人が傷つき、命の危険があったのにも関わらず…ここまで自分本位とは、同じ王族であり親戚として恥ずかしくなる。
「しかし、王女であるわたくしを置いていくなんて、おかしいわっ!せめてジークお兄様が残って、魔術師があの子を連れて帰れば良かったでしょう!」
「あの時王女を庇い重傷を負った乙女と、まったくの無傷だった王女。緊急用の魔石を使って転移出来るのは3人が限界でした、術者のアルンそして私は異界の乙女の責任者です。城に戻ってからの対応がアルンだけでは無理だと判断し、一緒に帰還したまでです。どちらを優先するかは明白。この件に関して、問題がありますか?パラム王」
「うむ……エリザよ、乙女はおまえを庇われて傷を負われたのだろう。それ以上ジークを責めるのはおやめ」
「下の者が高貴である王族を守り助けるのは、当たり前じゃない!」
「彼女は貴方に仕える人間じゃない、まだ何も分からないのかっ!」
髪を振り乱し喚き続ける王女に、ジークが声を荒げる。
「あなた方は、異界の乙女についての報告は受けているはずだ。彼女にも、元の世界に愛する家族がいた事。承諾なく我が国に召喚された事。乙女の力は自分自身には掛けられず、自分の傷や病気を治す事は出来ないんです!それなのに自分の身を挺して、王女を助けられた!」
ジークは震える身体を抑えつつ、拳を力の限り握り絞め続ける。
「あの御方は関係のないこの世界の人々の為に、何が起こるか分からない魔獣のいる場所に赴き…騎士でも魔術師でもない普通の女性が、森の奥深くまで入らなければならない。今回、再三の説得を無視し…王女の我儘で、戦うべき騎士達が護衛に回り日程を変更させ、王女の勝手行動で何が起きたのか…。まだ理解出来ないのですか!この世界にたった一人しかいない彼女を、瘴気や…その渦を浄化出来る唯一のあの御方を…。命の危険に晒した事を…。それがどんな意味を持ち、どんな罪があるのか改めて考えて頂きたい。」
「た、助けてくれなんて!頼んでないわっ!!」
それでもなお理解しない王女に、呆れを通り越して無表情になったジークは答える。
「いくら従妹と婚姻が可能であろうとも、人への対応や行動言動を考え見て…誰が誰に相応しいというのか理解出来ませんね。私との婚姻も、初めからあり得ませんでしたが。今後どなたかと婚姻を結ぶ為にも、王女としての日々の立ち振る舞いなど恥ずかしくない様に再度見直してみてはいかがですか?」
「なっ…」王女はそれ以上言葉が出てこないのか、真っ赤な顔で口を開けていた。
「あぁ、それから今回の件は父王に全て報告させて頂きます。いくら同盟国とはいえど、ヨハンネル王国王族と同じ地位を持ち…この国の王女の命を助け、森の浄化をしてくださった乙女を命の危険にさらした事への代償は、しかと考えた方がよろしいでしょうね。私達は、すぐに転移門で王国に帰国させて頂きますのでご了承の程…御前失礼致します。」
怒りはまだ収まらないが、これ以上彼女を…この国に置いておきたくはない。部屋にいた全ての人に視線をやり、周りを凍り付かせる様な表情のままゆっくり部屋を後にした。
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