19.晩餐会
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森へ出立する前日、身内だけの晩餐会が開かれる事になっていた。服装をどうしようか悩んでいると、ノックの音がして大きな箱を手にテオと侍女が入ってきた。
「最近元気ねーなぁ、これで気分転嫁しろ」
そういって大きな箱をテーブルに置くと、控えていた侍女さんが箱を開ける。
「わぁ…綺麗…」
「晩餐会の服装困ってるんだろ。これ着て旨い料理食べようぜ」
箱からは、黒をベースに銀糸で刺繍が施されたマーメードラインのドレスが入っていて、他にはエメラルドの首飾りに耳飾り…一式全て揃っていた。
「テオ、ありがとう」
「じゃぁ、準備が終わる頃に迎えにくるよ」
そういって颯爽と部屋から出ていく、控えていた侍女さんに促され準備する。何度かしてるけど、淑女の準備は本当に過酷だと思う。侍女さんにお礼を伝え準備を終えると、タイミング良くテオとアルン様が迎えにやって来た。
「やっぱりミオは、夜の妖精だから黒が良く似合うな」
「普段着飾らないから、余計に映えますね」
二人にしっかり褒めてもらい晩餐会の部屋に向かう途中の廊下で、お揃いの様な銀髪に、藍色のドレスを纏ったエリザベータ様をエスコートするジークと会う。
また胸が痛むのを誤魔化して俯く。
図らずもテオの色を纏っている私を見たジークが苦虫を噛み潰したように顔を歪めた事は、私には分からなかった。
晩餐会は、王・王妃・王女・ジーク・テオ・アルンと私の7人だけのものだった。緊張して視線を泳がすと、テオはウィンクしてアルン様は頷いてくれて少し笑顔になる。ミッシェル様に習ったテーブルマナーをしっかり実践し、多分間違えてないはずとドキドキしながら食事を終え、お茶とデザートで談笑していると
「お父様、わたくしも成人した事ですし婚約者を決めても良い頃だと思いますの。」
「ふむ、もうそんな頃合いか。自分から言い出すのだから、何か考えがあるのだろう?」
「勿論ですわっ!年の頃合いも良いですし、国同士もっと関係が良くなります。何よりわたくしに相応しい方ですもの。ね、ジークお兄様」
「は?」目を見開き困惑するジーク。
「おーそうか、そうだな。ジークなら全てにおいて相応しい」
「まぁ、まぁ、故郷とさらに絆が深まりますものね」
王も王妃も手放しで喜び話を進める。
「パラム王、私は兄上であるレナードを国内で支えていく所存です」
「まぁ、焦って返事をする必要はないだろう。義兄上とも話をしてみんとな」
「お待ちください―」
ジークも丁重に断りを入れるが、どんどん進む話に私の頭がついていかない。婚約?結婚?ジークとエリザベータ様が?従妹なのに?思考はパニックになって黙って俯くしかない。
いつの間にか晩餐会は終わり、テオにエスコートされて部屋に戻る途中だった。相当呆けていたのか、いつ退室したのかハッキリしない。テオが、ゆっくりとした足取りで中庭に連れてきてくれた。
「ミオ、大丈夫か?」
「うん…。あの…この世界って、従妹でも結婚出来るもの、なの?」
「あぁ、従妹は…大丈夫なんだ。ミオの世界では違うのか?」
「直系の血族も婚姻は不可能だし、3親等も法律では許可されてなかったかな…」
あーうーとテオは、自分の頭をガシガシ掻きながら
「まぁ、ジークは自国を出るつもりもないみたいだし、このまま話が進むのはないと思うぞ?」
「そう、なんだね…」
「そんなに、あの二人に何かあるのが心配か?」
凄く真剣なテオの視線に身動きが取れない。
「そ、そうじゃない、けど…なんだか驚いて、しまって…」
震えない様に絞り出した声で答えると、テオはゆっくり一息おいて俯く私に「今日は冷えるから部屋に戻ろう」と送ってくれた。私の用意された部屋の前には、先程会ったばかりのエリザベータ様が待ち構えていた。
「これで分かったでしょう?王族であるお父様もお母さまも喜んで話を進めているわ。いくら特別な力があったとしても、貴方自身が平民でたかが知れているものね。わたくしが、ジーク様の横に立つのに立場も全て相応しいのよ。あなたは、そこの副団長とよろしくやっていればいいわ」
言うだけ言って去っていく王女を、ただ茫然と見つめるしかなかった。泣きたくなかった、涙を見せたら蓋をした全部溢れてしまいそうだったから…俯き唇を噛んで耐えるしかない私の背中を、ずっと優しく撫でてくれているテオの手が温かかった。
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