第十九話~王女、龍と対話する~
投下時間ちょっとかえるべきか……遅刻本当にすいません
「……神は何を考えて恩寵を与えたのだ。いや逆か?神の恩寵のせいでこうなったのか?ファット、汝ほんとなんの神に恩寵を受けたのだ」
「脂の神グレス様より脂肪の素晴らしさを伝えよ、”人よ、肥えよ太れよ脂に満ちよ”と言われましたが、それがなにか」
「……なぁ、それ神というよりどこかおぞましい邪神に思えるんだがどうなんだ?我の感性が人と違いすぎるだけか?」
ファットの堂々とした振る舞いと語る内容の激しすぎるギャップにさしもの龍も参ってしまったようですがるような目線をこちらに向けてきます。うん、ちょっとまって、こっち見ないで。
「どっちにせよその、ファットはファットですので、ええ……そ、それに豊かに云々については正しくていいことですから、はい」
邪神っぽいのは否定できませんが、というか邪神な気がすごいしますけど。
「そりゃ我も雌であるし、肥え太ることも太らすこともできぬ甲斐性なしの雄は論外ではあるがそれにしてももうちょっとこう、言い方というかやりようというかがあると思うのだが……」
……性別あるんですね。というか雌なのね。
「と、ともかく!あれだ、じ……神の走狗たる恩寵者が我が領域にて力を振るった。それに対してはけじめをつけてもらう!!」
邪神っていいかけましたね……
「けじめ、ですか。確かに礼を失したのはこちらですからそれはまぁ当然ですが、どうお詫びをしたら……」
「決まっている!!この領域で力を使ってよいのは我とその一族だけ。その原則に則り、ファットよ我の番となれ!」
「「「「は?」」」」
イマコノリュウハナントイッタノデスカ?
「いま、番と、婿になれとファットに言いました?……正気で?」
「何を驚く。優れた人を番にするのは龍では常識、汝らも聞いたことがあろうが」
聞き間違いと思いたかったその内容をあっさりと龍は肯定する。いや常識ってそんな……
「あー、そういや龍やら魔物が美しい姫やらなんやらをさらって嫁にって定番だわなー、俺旅先でもそーいう話よくきいたわ」
「うーむ……種族は違うけどたよーせーを考えれば理にかなってると言えなくもないからありかなしかならありなのかなー」
ですがオルドーも、そしてシトロもまたそれぞれの理屈で納得を示してます。え、これわたしがおかしいの?
「そう、ありもあり。おおありなのだ。いやまぁ神の走狗であるのは気に入らん。気に入らんがそれだけ優秀であるし、これほどの美丈夫を神から奪い婿にするのは雌龍の醍醐味。だが仕方ないよの、原則を破ったのはそちらであるしな」
なんかもうこれ以上ないほどうっきうっきした感じで声を弾ませ、威厳もへったくれもなく妄想を垂れ流す龍。その姿に……
「わかった、あなた喪女いや喪雌ね」
ワタシノナカノナニカガキレタ
「……何を言っているのかわかっておるのか?アレの子孫といえど容赦は」
「いやでも神祖と顔見知りってことはあなた年齢3桁だか4桁でしょ?なのに番云々とかいいだすってことは相手いない年季のはいったボッチじゃない」
「ぼ、ぼぼぼぼ、ぼっち!?い、言うに事欠いてボッチだと!?こ、この地の支配者であった我に対して年季の入った喪女だと!?卵も産んだことがない生雌であると!?」
「いやそこまでは誰も言ってないじゃない……でもそうか、あなた生娘ならぬ生雌なのねー、そっかそっかー」
卵産んだことがないがそういう言葉っていうのが面白いわね……でもなんか自爆したからつけこまないとか嘘でしょ。
「というかー?サイズ差考えなさいよ。あなた、ファットの何倍も大きいけどそれで結婚生活できるんですか~?無理あるでしょ~」
「ば、馬鹿にするな!龍が人と婚ぐことは珍しくないならちゃんとなんとかする術があるに決まっておろう!」
「はいはい、そーですか。それはよかったですねぇ~口先だけなら何でも言えますねぇ~卵産んだことないのに偉いでちゅねぇ~」
やけというかなんというか、力の差がありすぎるせいでもう色々と麻痺して言葉が次々とでてきて楽しくなってきていた。
「くっ……ファット!そこの無礼者になんぞいってやれ!」
「ファット、あなた王女たるわたしよりもトカゲに敬意を払うつもり?」
「と、とか!?言うに事欠いてトカゲ!?貴様本気でぶっ殺すぞ!?」
「いやあの、お二人?とも落ち着いていただけたらなぁって……」
わたしとトカゲに挟まれて脂汗をかきながら困り果てた顔をするファット。あ、ファットってこういう顔するんですね、少し可愛いかもしれません。
「落ち着いておる!ああ、落ち着いておるとも!!だからファット!はようそこの女に言うてやれ!責任とって我の婿になると」
などとわたしが考えているとトカゲがファットに対して都合のいい妄言を吐き出して……
「お断りします」
一刀両断されました。
「え?」
「いやあの、なんといいますか……わたしには民を太らせる仕事がありますし、ここにこもったらそれができませんから」
「よく言いましたファット!太らせる仕事じゃなくて豊かにすると言ったら満点でしたがそこはよしとします!」
「どっちでもいっしょだしスルーしてあげなよそこは。ま、でもそうだよねー、こーんなところでひっきーしてたらなーんもできないで時間だけ過ぎちゃうよねー」
「ワタシとしましては、ここでは食材が豊富とは言い難いので腕の振るい甲斐があまり……掃除はたっぷりできそうですが、それでももう少し良い場所、良いキッチンがないとファット様のためになりませんし。婚姻だなんだはまずそこから改善していただきませんと」
そのあまりにもバッサリな言いように思わず喝采をあげ、それをシトロが肯定します。ああ、これが勝利の味。実に気持ちがいいものです。
というかセルヴァ、あなたふっつーについていく前提なのね。いやさすが従者と褒めるべき?気にする所そこって突っ込むべき?
「なるほど、よくわかった」
そしてわたしたちの言葉を受けてプルプルと震えながら龍がつぶやきます。
「わかっていただけましたか。では、早速住環境の改善をですね」
そう、この時わたしたちは感覚が完全に麻痺したか勘違いしていた。それ故に……
「お前ら全員、龍らしく殲滅してから獲物を我が巣で堪能するとしよう」
結果として龍の逆鱗に触れることとなってしまったのでした。




