第十六話~騎士、規格外に頼られ自尊心を満たす~
今日水着ガチャPU2きますかね……月曜の気もしますがどうなることやら
ギリギリまで訂正してたら少し遅れて申し訳ありません
「しかしまぁ随分と大量にわいたものね……これじゃ、街道の方から人を外せないのも仕方ないわ」
「まさか小鬼の群れだけでなく他の魔物までわいてくるとは……こっちの魔物は食べられそうですが」
俺がレベルの違いを思い知らされたあの後、さらに追加でやってきた魔物(今度はグレイウルフという狼に近い魔物だった)の群れも一瞬で殲滅した……俺は何もできなかったが。
「処理してる時間がもったいないし、あたしが薬品かけたのはちょっと食べたくないかにゃ~。お口の中溶けちゃうと思うし~」
「わかってます。今回は時間がもったいないですし、小鬼ともども全部燃やして処理しましょう……変な病気がわきでもしたら大変ですしね」
「はいはい、それじゃわたしがやっておくわ。ファットに任せたら周囲ごと焼き払いそうで怖いですし」
「ちょ、ちょっとお待ちを!せ、セリン様そのようなことはお、俺が」
当たり前のように魔物の死体を”処理”しようとしているセリン様やそれを止めようともしないファットたちに対して、俺はあわてて声をかける。せ、せめてそういうことは俺が……というか、王女になにやらそうとしているんだこいつら!!
「別にいいですよ。こういうのは火の魔法が使えるわたしがやったほうがさっさと終わりますし時間ももったいないですし」
「そ、そうですか……」
なのに、俺の申し出はあっさりと拒否され戦闘の後の雑用すら、させてもらえない。これでは俺は完全に足手まといのおにも……
「では、セリン様お願いします。そしてオルドー殿もお疲れさまです、おかげで助かりました」
「……は?」
助かった?何を言ってるんだ?俺は何もできずにずっとただつったっていただけ……
「私達が戦っている間、馬を落ち着かせてその場にとどまらせてくださったじゃないですか。おかげで馬車を失わずにすみましたよ」
俺が怪訝に思ったのが伝わったのか、ファットが大真面目な顔でお礼をいってくる。しかしその内容が予想外というかなんというかで……
「いやそんな当たり前のことを言われても……剣をもって戦う、騎士としての務めはまるで」
「少なくとも貴殿がそれをしてくれず、馬車が逃げたら私3日で餓死する自身がありますが」
「……3日は流石に言い過ぎでは?」
「私は普通よりも消費量が多いですし、空腹は苦手ですから3日もたない気もします」
自信満々に断言するその姿に俺はもはや苦笑するしかなかった。本当にこいつはさっき小鬼長を握りつぶしていた男なのか?
「は、はぁ……お、お役に立てたようでなによりです」
「そうそう、役にたってるんだよー……んで、役立ちついでにさー、今の魔物たちについてどーおもう?」
「どう思うって……いや、そもそもなんで俺……私に聞かれるので」
「なんでって、へーかがつけた案内役でこのあたりに一番くわしいからにきまってんじゃん」
「いえ、ですが俺の意見は別にあとでも」
「意見に意味があるかどーかはあたしが決める。つーか、こーいうのは昔と今、それから他の所との比較対象が必須なのが大前提なの!んで、あたしらみんな昔知らないからやりようがないの!」
「ですね……私もセルヴァもオイリー男爵領を離れたのはこれが初めてですし」
「あたしも基本おーとからでないし、おーじょちゃんが旅慣れてるはずないしねー。そーいうわけだからさっさと意見とじょーほーよーこーせー!」
言われてみるとたしかに貴族の嫡男にお付きの従者、研究者に王女と全員が旅とは無縁というか、旅してはいけないというか、旅は無理だろというか。
となると旅慣れしているのは俺だけで、旅先の情報やらは俺頼り……
「そういうことなら……えーと……」
自分が頼られていると確信できると、俺も現金なもので急にやる気も元気も出るというもの。そうだな、今までのことを考えるとこれは……
「妙、だな」
ぽろっと、
「妙って?」
「いやなんというかな……小鬼長ってのは、そう簡単に出てくるものじゃねぇというか……もっとこう、放置されてたり治安が悪かったりする場所とかに拠点を構えているもんなんだわ」
考えながらだからか、あるいはのせられたのからか、騎士としての礼儀とかそういうのを取り繕うことができず、俺は昔の武者修行時代の口調になってしまう。が、誰も気にしないようなのでそのまま俺は言葉を口にする。
「俺が昔あいつとやりあったのもど田舎の山奥の洞窟で手下と罠があったしな……なのに、常駐の兵がいる太い街道から近い山への道中でこいつがいるのも、そして襲ってくるのもおかしいぜ」
「えーと……ファットの食料や匂いに引きつけられてってのは?」
「拠点でない場所でというのは考えにくいな。グレイウルフのほうは匂いとかでまぁわからんでもないが、こいつらだってだいたいは人があまりいない山奥なんかにいて、人よりも兎やらなんやらを相手にすることのが多いんだが……」
周囲にいるやつらが異常すぎて違和感を感じられなくなってたがうん、たしかになんでこんなところ小鬼長の一団やグレイウルフがいやがるんだ?ここ、そんなに危ない場所じゃないのは常識だってのに……
「となると、考えられるパターンは”外から持ってきた”か”中からもれてきた”かですね」
「そうなるねぇ」
俺がそこまで言って考え込んだところで、ファットとシトロの二人が何やら納得したように会話を始める。
「どういうことだ?」
「そのまんまだよ。今までいなかった場所でぽかじゃかいるはずのないのがでてきているってことは外から魔物の群れが”外的要因で”持ち込まれたか、あるいは今まで隠れていた場所から逃げ出してこなきゃいけないくらいのなにかがあるか、ってこと」
おいまて、それって
「が、外的要因なら、こ、この近くに他国に通じる街道があるんだからへ、下手したら戦争になりかねないことを引き起こしているし、に、逃げ出してきたほうならや、やばいなにかがあるってことじゃねぇか!?」
「そうなるねー。下手したら他所の国がせんそーもくてきでしかけたのかもだしー。いやー、なんか面白そうだねぇ!」
「面白くねぇよ馬鹿野郎!!」
わかってていってんのかこのバカ!?外的要因なら内乱目的にしろ戦争の引き金にしろ大事だってのに!!
「面白いよー。だってそーんな愉快で危ないことを今からあたしたちで解決できるんだもん。んでんで、もーし外的要因なら」
「誰がやったか突き止めて、なめた真似してくれたことを存分に焼きを入れて後悔させればいいですしね」
シトロの言葉を、魔物たちを処理し終えたセリン様がつなげる。その額には俺の見間違いでなければくっきりと青筋が浮かんでいて……うん、これやばいやつだ
「そして後者なら幸いファットがいてくれますしね……結果として軍を動かさなかったお父様は英断をされたといっていいわ」
怒りをこらえるように、それでいて心を落ち着かせるようにつぶやくセリン様。だが、その言葉には俺もまったくもって同感だ。
小鬼長のような強力な魔物を群れごともってくる陰謀があるにせよ、群れごと逃げ出すようななにかがいるにせよ……どっちにしろ、とんでもなく厄介な事態なのは間違いなく、もし軍隊を派遣していたら少なくない数の被害がでていた可能性は高い。だがこの場にいるのは……
「はは、期待に添えるようにしっかり食べて頑張らせてもらいますね」
緊張感の欠片もなく従者の淹れた茶と菓子を貪っていて、とてもそうは見えないが恩寵者のファットだ。その力は本物、こいつがいたらまぁどうにでもなる。そう確信できるだけの実力はある。
だからまぁ俺たちがここにいるのは幸運だし、このままいけば俺は大きな手柄を立てることができると確信していた。なんであれ、あとは指示された山を調べて原因を取り除けばおしまい、ファットがいれば楽な仕事なんだと。だから……
「我の領域で暴威を振るうか”神の犬”め!!!」
まさかこのあと、伝説に……”生きた龍”と出くわし、対峙することとなるなんて……そう、恩寵者がただ強いだけの存在でないのだとこれ以上ないほど理解することになるなんて思いもしなかったのだ




