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脂肪遊戯~豚脂はエリクサー~  作者: 鈴木稜
第一章~みちよ脂肪と恩寵者はいった~
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第十話~王女、規格外と交流す~

FGOの水着イベ、いよいよはじまりましたね……

「にゃははは~、このカットレットっていい香り~、ぶーちゃんをぶーちゃんの脂で揚げてるから香りがすんごいことなってるよぉ~」


「香りだけではありません、味もまた絶品です。ささシトロ様、このワタシ特性のマヨをドバドバっとたっぷりかけて堪能してくださいませ」


「このマヨがまた美味しいんですよ、シトロさん。キャベツを刻んだものにかけるとそれだけでいくらでも、カットレットの間にそれをたべれば……」


 お父様と話し合った翌日、わたしがどんな思いを抱えているかも知らずに、ファットとシトロ、そしてセルヴァはファットたちの滞在用に当家より貸し与えられた邸宅で、のんきにやたら食欲をそそる脂の塊みたいな料理に群がっています。

 その姿をみていると彼らが”恩寵者”に”当国始まって以来の才女”といわれる存在などとは思えません。本当に……彼らが見たままの存在ならどれほど楽なことか。

 

「ファットの香りもこれにちかいよねぇ、太っちょの汗っかきなのに臭くないっていうかむしろいい香りなんだよねぇ~ふしぎぃ~」


「それは私が寵愛のおかげで脂肪の純度が高いからですね。植物だろうと動物だろうと良質な脂はいい匂いがするものですから」


「なるほどねぇ~、ますます興味がわくというかデタラメだねぇ神様の恩寵って」


 そう、デタラメ。ファットの力は昨日みせてもらった鎧を溶かしたあれだけでわかるほどでたらめなものです。

 そしてそれ以外にも本質を見抜く優れた見識や、当家が出資した国最高の研究所ですらもてあましたシトロを懐かせるだけの度量……これらは英雄としての片鱗であり素質なのでしょう。

 それがわかるからこそ、わたしの中で、王家の者でありながらこの大器を放置してはいけないという思いがこみ上げてきます。

 でも同時に、お父様の言う通り。ファットを国の英雄として祭り上げるのは正直どうなの?近隣他国から正気を疑われるし、王家で抱え込んで切り札として秘匿してもそれを見抜かれた時、他国の付け入る隙となるのもわかります。

 だからこのまま、特に掣肘することなく放置しておいてほとぼりがさめたら領地に戻ってもらうというのはたしかに悪くない案なのでしょう。

 当家はファットにたいして何も不利益を与えていませんし、立場的には礼を尽くしました。だから積極的に害を与えることもないでしょうし、むしろ今回のことを恩として自領を、ひいては国を栄えさせてくれるでしょう。


 ……ですが、本当にそれでいいのかしら?しっかりと向き合わず、体裁だけを気にして距離をとっておこぼれだけを授かるのは健全な関係といっていいの?


 そんな答えがでないことをぐるぐると考えていたら……


「セリン様、どうかなさいましたか?体調が悪いのですか?」


 わたしの側にいつのまにやらのそのそと皿を掴んだまま寄ってきたファットが心配そうに声をかけてきます。

 どうにも、顔に全部でていたみたいですね。


「ファット……いえ、なんでもありません。少し、考えごとをしていただけです」


「それはそれは。では、どうぞこちらを。空腹ではいい考えも浮かびませんしね」


 わたしの体調が悪くないと知るとその丸い顔に笑みを浮かべて香ばしい香りを漂わせる

皿をわたしに差し出してきます。

 その香りは実に蠱惑的といいますか、ぷーんっと鼻の奥とお腹を刺激する、問答無用の説得力があるそれに抗えるはずもなく……


「そうね……いただくとしようかしら……」


「ええ、どうぞどうぞ。揚げたての熱いうちにマヨをたっぷ」


「でもその前に、ファット、ひとつ聞いても?」


 だけど流される前に気になることを先に片付けるとします……こんな思いを抱えたままじゃ純粋に味を楽しめそうにないですしね。


「なんでしょうか、セリン様」


「ファットはその……この先、というか将来についてなにか展望はあるかしら?たとえば、手柄をたてて所領を拡大する、だとか歴史に名を残すということを」


 恩寵者とは約束された英雄。そうであることを踏まえてしたわたしの質問にファットは……


「まったく考えてません」


「へ?」


 まるで悩むそぶりを見せず、これ以上ないほどきっぱりと言い切ります。それはあまりにもわたしの予想外のこと。ですが、ファットはさも当然といわんばかりに言葉を続けます。


「確かに私は恩寵者ですけど、同時にオイリー男爵家嫡男ですから。今は当家の領民を豊かに、そしてその豊かさを周囲にも……それしか考えてません」


「で、でもあなたの恩寵者としての力は本物。男爵で終わるはずがないそれで……」


「そういうあれこれは絵に描いた肉といいますか、思い描いたところでお腹が膨れるわけでもなければいいことがあるでもありませんから」


「……そ、そう」


 あまりにもらしいというか 身も蓋もない言葉に色々と考えていた自分が馬鹿らしくなります。

 そうですね、まだファットは15で男爵家の嫡男。今はそれ以上でもそれ以下でもない。

英雄だなんだを考える時期はまだまだ先の話……


「それよりもセリン様。お早く。将来の話はいつでもできますがこのカットレットを揚げたてで食べられるのは今しかありませんから」


「……ほんと、そのとおりね」


 今できることを今して、将来のことは将来考えればいい……うん、できてもない料理について考えるより眼の前料理を食べることのほうが大事。さて、匂いはいいけど味のほうは……


「ちょ、な、なにこれ!?か、香りが……あ、脂の旨味と香りが鼻まで……」


「揚げたてのカットレットは基本にして頂点にせまる旨さですからね」


「く……お、恐ろしいわね……これは王都でも売れるわ」


「セリン様、お待ちを。まだまだ、こんなものではありませんよ。鶏肉をあげたチキンカットレットやそれにマヨと玉ねぎをつかって作ったソースをかけたものなどレパートリーはいくらでも」


「くっ、なんてことなの!わたしを太らせるつもりね!でもそんな言葉に簡単にのせられるほどわたしは甘くないわよ!!」


「ん?なに?おーじょさまは食べないの?ならあたしが全部食べちゃおうかなー。うんうん、これもけんきゅーのうち、油と脂がもたらす美味しさというエネルギーを分析することはファットの力を理解するのに必要なこと」


「た、食べないとはいってません!!ですがその、簡単に太るつもりはないといってるのです!!ファットも、それからセルヴァも脂肪主義者とでもいいますか脂肪のいい面ばかりを押し付けてきますし!余分な脂肪は普通ないにこしたことは……」


「それ、その胸にぶら下げている2つの大玉フルーツをなくしてからいわないと説得力無いと思うんだけど」


「ア゛ッ?」


 イマコイツナンテイッタ?


「いやー、あたしも小さくはないけどそこまではないからうらやましいなー。あたしが桃としたらそっちはメロンっていうかー、ちょっとどうやったらそうなるか気になるというか」


 いつもジロジロ無駄に男どもにみられるこれがウラヤマシイ?お母様や姉さまたちに節制が足りてない、もっと痩せる努力しろといわれる原因となってるこれが?ふふ……


「ちょっとあなた、一度教育しましょうか?王族であるわたしに不敬がすぎます。こんなもののどこが」


「私も魅力的だと思うのですが?セリン様は姿勢がよろしいので立ち姿が実に絵になりますし」


「ちょ、ふぁ、ファット!?」


 ま、真顔で何をいいだすのこいつ!?くっ、今までの男ならどこか下卑た目線だったからわかりやすかったのにファットは無駄に邪念がないからたちが悪い!!


「あ、あなたそれ単純に脂肪があることはいいことだって思っているだけでしょ!?脂肪は豊かさ、あればあるだけいいって言いたいんでしょ」


「そんな事ありませんよ?おとぎ話にでてくる不必要に富を溜め込んだ商人は醜いじゃないですか。そりゃ貧しいよりはいいですが、美しいのは健全な豊かさをもったものかと」


「う、美しいって……あ、あなた本当に何をいって……」


「ただ思ったことをいっているだけなのですが……実際セリン様は普段の姿勢もちゃんとされてますし、考えなども実にしっかりと王族たらんとされているのがわかりますし」


 お、おかしい……い、今まで容姿について褒められたことは数えるのも馬鹿らしいほどです。で、ですがその……な、なんといいますか……


「お~お~、おーじょさまの耳真っ赤~、ちょーっとちょろすぎな~い?」


「やややや、やかましいわよ!!こ、これはか、カットレットのせいよ!!」


この時わたしはファットの言葉と、そしてはじめて食べるカットレットの強烈な旨味にわたしは先についてのあれこれなどすべて忘れてしまいました。なんせ、まだまだ先の話であり考えてもしょうがないこと。そう、その時がきたら考えればいい。








 その考えが甘かったと、恩寵者というものを軽く考えていたと思い知らされるのはこれからまもなくのことでした。



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