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「影」

作者: やのへい

キーワードは、「影」です。人影、物の影、面影、臓器の影と全章に影があります。生体腎移植がもたらす、奇跡の物語です。

   「影」


 第一章 健二郎の病気

 

とあるオフィス街、旅行代理店で働く男がいた。彼の名は、田中健二郎。26歳独身。彼は、勤労勤勉、真面目な好青年である。いつもと変わらず、デスクで仕事をしていた。そこへ、上司である課長の内海が声を掛けてきた。

内海課長「田中君、もう上がっていいよ。そろそろ、病院へ行く時間じゃないか?」

健二郎「ええ、この書類終わらせたら、上がります。」

内海課長「仕事も大事だが、体はもっと大事だぞ。」

急ぎ、書類をまとめる健二郎。彼には、持病があった。腎臓病である。幼い頃に発症し、その後良くなっていたが、社会人となり、2~3年経った時に、腎臓の機能が低下していった。その為、週に3日、人工透析を受けるために通院していた。

健二郎「よし、これで終わり。課長、ほんとに申し訳ありません。」

内海課長「いやいや、君は、持病を抱えながらでも、きっちり仕事をこなしているよ。部長にも早く主任にと、提言しているところだよ。」

健二郎「いえ、私には、荷が重すぎますよ。こんな体ですし。」

内海課長「いや、時間がない君は、逆に仕事の効率を考え行動している。仕事に対する熱意も、他の同期の社員よりあると思うぞ。まあ、体はじっくり治すしかないだろう。」

健二郎「ご心配おかけして、申し訳ありません。」

内海課長「早く、病院に行きなさい。」

健二郎「はい、では失礼します。」

オフィスをあとにし、透析のため、病院へと向かう健二郎であった。


 総合病院に到着した健二郎、透析を終え、主治医の菊竹の診察を受けていた。

菊竹先生「うーーーん。腎臓に影があるね。だいぶ弱っているかな。」

健二郎「腎臓機能が低下しているって事ですか?」

菊竹先生「このまま透析を続けて、あとは、移植手術だな。」

健二郎「そうですか。仕事は、今まで通りで構いませんか?」

菊竹先生「ああ、仕事は構わんよ。無理せん程度にな。君の場合、仕事していた方が楽しいんじゃないかな。」

健二郎「そうですね。」

菊竹先生「まあ、君も年頃だし、そろそろ結婚とかないのか?彼女は?」

健二郎「これも診察ですか?」

菊竹先生「まあ、診察の一部ではあるが、私の興味が大部分だな。」

健二郎「彼女は居ませんよ。」

菊竹先生「そうか、じゃあ、私の娘はどうだ?」

健二郎「ええっ、先生の娘さんですか。」

菊竹先生「ああ、24歳ピチピチだぞ。保育園で働いている。」

健二郎「こんな病気のままじゃ、無理ですよ。」

菊竹先生「まあ、病気の分を差し引いても、君みたいな誠実な若者は今時珍しいよ。」

健二郎「次の患者さんが、待っていますよ、先生。」

菊竹先生「おお、そうだな。先ずは、病気を治していこう。」

健二郎「ありがとうございました。失礼します。」

診察室を後にする健二郎であった。


 

第二章 真夜中の事故


 真夜中の山沿いの道、一台のミニバンが、走っていた。車内には、池谷一家の三人が乗っていた。父の強、母の順子、娘の梓であった。強35歳、順子32歳、梓5歳の仲のいい家族である。

強「ちょっと遅くなったな。」

順子「ごめんなさいね、お父さんが引き留めるから。なんなら泊まっていけって勢いだったもんね。」

強「いや、お義父さんも、梓と別れるのが辛かったんじゃないかな。初孫だしね。」

梓「お爺ちゃん、大好き。たくさんおもちゃ買ってくれるもん。」

賑やかな車内、しかし、次の瞬間、黒い影が強の車を襲う。対向車線の車が、中央線を越え、あわや、衝突寸前となる。

強「う、うおおおーーー。」

順子「危ない!」

梓「きゃーーーー。」

咄嗟にハンドルを左に切る強。右カーブで左にハンドルを切ったため、ガードレールに激突、勢い余って、高さ10mの崖下に転落する。対向車は、そのまま逃走。強の後ろを走っていた軽自動車の女性が、110番、119番通報をした。


崖下の車内、強と順子は意識不明の状態、梓はかろうじて意識があった。

梓「・・・パパ・・・、ママ・・・。」


一時間後、崖の上に警察と救急車が到着。三人はヘリで救急搬送された。



 第三章 枕元に立つ孫


 順子の実家、祖父の時雄の寝室、寝ている時雄の枕元に、孫の梓が立つ。その影に気づき起き上がる時雄。

時雄「梓、梓なのか?」

梓「お爺ちゃん、ごめんね。・・・もう会えなくなっちゃったんだ。」

時雄「な、何を言っているんだ、梓。また、来ればいいじゃないか。忘れ物か?パパとママはどうしたんだ?」

にっこり微笑む梓。

梓「・・・お別れなの。」

時雄「ど、どういうことだ。」

梓「・・・でも、大丈夫だよ、また会えるからね・・・、バイバイ。」

そう言い終えると、梓はスッと消えていなくなった。

時雄「梓、あずさーーー!」

横で寝ていた、時雄の妻初枝も目を覚まし、時雄に声を掛ける。

初枝「あ、あなた、どうしたんですか?」

時雄「ゆ、夢か・・・。」

次の瞬間、家の電話が鳴った。



 第四章 緊急手術


 いつものように、オフィス街の旅行代理店で働いている、健二郎。そこへ一本の電話が入る。受付の前田が電話を取る。

前田「田中さん、二番に病院から電話です。菊竹さんという方からです。」

健二郎「はい、分かりました。」

健二郎が電話を取る。

健二郎「もしもし、田中ですが。」

菊竹先生「ああ、田中君か、大変急で申し訳ないんだが、明日から、一ヶ月入院出来るか?」

健二郎「あ、明日からですか?一ヶ月って、この間の検査で、何かあったんですか?」

菊竹先生「いや、そうじゃないんだ。適合者が見つかってね。」

健二郎「ドナーですか?」

健二郎のドナーという言葉にいち早く反応した、上司の内海課長。

内海課長「田中君、会社のことは大丈夫だ、手術か?」

健二郎「えっ、はい、でも、明日から入院しないといけないらしいです。」

内海課長「行ってこい。千載一遇のチャンスじゃないか。会社のことは気にするな。残ったみんなで頑張れば何とかなる。なあ、みんな。」

営業所全員「いってらっしゃい。」

涙ぐみ、電話を続ける健二郎。

健二郎「先生、明日から入院出来ます。」

菊竹先生「分かった、待っているぞ。」

健二郎は電話を切り、明日の入院のため、会社を早退した。夕日に照らされた健二郎の影は、いつもより濃くなっているようだった。



 第五章 出会い


 入院し、腎臓手術、リハビリとこなした健二郎、無事退院し、今日が退院後の初診察であった。

菊竹先生「うん。順調、順調、拒絶反応も全くなし。もう、透析しなくて大丈夫だな。来週が、最終検査だ。体調が悪くなったら、すぐ病院に来るように。」

健二郎「はい、先生、ありがとうございます。」

菊竹先生「でだ、話は変わるが、例の件は考えたか?」

健二郎「例の件?」

菊竹先生「娘のことだよ。もう、健常者だ、断る理由はないぞ。」

健二郎「先生、それは・・・。」

菊竹先生「ああ、娘に確認したら、彼氏は居なかったぞ、それに、私に似ず、娘は美人だぞ。」

健二郎「いや、そういうことじゃなくて・・・。」

菊竹先生「診察も君で終わりだ。ここじゃなんだな、ロビーに降りるか。」

しぶしぶ、申し出に答える健二郎であった。


 ロビーに移動した二人。そこに、女性の影があった。その女性が菊竹先生に話しかける。

女性「菊竹先生、ありがとうございました。」

菊竹先生「おお、一子さん、君も今日が検査だったね。順調かな。」

女性「はい、順調です。」

健二郎「先生、この方は?」

菊竹先生「ああ、君と同じく腎臓移植手術した、佐藤一子さんだ。そういえば、二人が手術した日は同じ日じゃなかったかな。」

菊竹先生の携帯が鳴る。

菊竹先生「はい、菊竹です。はい、はい、分かりました。」

電話を切る菊竹先生。

菊竹先生「すまない。急患のようだ。健二郎君、例の件考えておいてね。」

そう言い残し、足早に去って行く菊竹先生であった。

健二郎「ふう、助かった。あ、佐藤さんも腎臓病だったんですか?」

一子「ええ、幼い頃からの持病でした。」

健二郎「あ、自己紹介していませんでしたね。田中健二郎です。」

一子「佐藤一子です。先日の移植手術で、やっと、透析しなくてよくなりました。」

健二郎「私もです。」

一子「これで、夢だった、海外旅行に行けます。」

健二郎「旅行ですか?あ、僕、旅行代理店に勤めているので、いつでもご相談に乗りますよ。」

一子「そうなんですか。」

健二郎「ええ、名刺を渡しておきますね。」

一子「その時は、お願いします。では、失礼しますね。」

健二郎から名刺をもらう一子、振り返り歩き出そうとする。咄嗟に呼び止める健二郎。

健二郎「あ、あの。」

一子が振り向く。

一子「何か?」

健二郎「あ、いえ、さようなら。」

何か心の中で戸惑いを感じた、健二郎であった。



 第六章 再会


 腎臓移植手術を終え仕事復帰した健二郎、いつものようにオフィス街の旅行代理店で業務に当たっていた。銀行へお金を振り込む為、銀行へと向かう。銀行と言っても、横断歩道を隔てた、隣の建物である。店を出て、横断歩道を渡り、銀行へと入る健二郎。番号表を取り出し、順番を待つ。健二郎の番号が呼ばれた。

窓口の女性「いらっしゃいませ。ご入金ですか?」

窓口の女性を見て、驚く健二郎。

健二郎「さ、佐藤さん?」

一子「田中さん・・・。」

健二郎「佐藤さん、銀行員だったんですね。びっくりしたな。」

一子「あ、お客様、振り込みですか?」

健二郎「あ、はい、お願いします。」

お互い業務中ということを気遣う二人であった。

一子「では、これに記入して、こちらへお出しください。」

健二郎「分かりました。」

振込用紙に記入する健二郎。それとは、別に、記入台の影で手帳を破り、何かを書き、窓口に再提出する。

健二郎「これをお願いします。」

一子「かしこまりました。お呼びいたしますので、あちらで少しお待ちください。」

振込用紙とともに、メモを受け取る一子。健二郎が書いたメモには、最終検査の後に、少しお話ししませんかと書かれていた。

一子が健二郎を呼ぶ。

一子「田中様、お待たせいたしました。こちらが、振り込みの控えになります。あと、こちらをお返しいたします。」

そう言って、控えとメモを渡す一子。メモには、了解しましたと書かれていた。



 第七章 初デート


 病院での最終検査を終え、近くの喫茶店で話し込む、健二郎と一子。二人の境遇が同じだったこともあり、話に花が咲く。喫茶店を出て、商店街の方へ歩いて行く二人。その角に人影があった。

???「そこのお二人さん、ちょっといい?」

健二郎「え、私たちですか?」

二人に声を掛けたのは、占い師だった。

占い師「そう、お金は要らないから、ちょっと占わせてくれない?」

一子「無料でいいんですか?」

占い師「そう、タダよ、タダ。私の興味だから。」

ちょっと困惑しながらも、占い師の前に座る、健二郎と一子。

占い師「・・・あなたたち、凄い運命ね。」

健二郎「運命ですか?」

占い師「ちょっと待って。二人の名前、当てるから。」

一子「分かるんですか?」

占い師「うーーーん。強さんと順子さん!」

健二郎・一子「・・・違います・・・。」

占い師「ほんとに?じゃあ、お父さんとか、お母さんとか、親戚にそんな名前の人居ない?」

健二郎「居ません。」

一子「私も。」

占い師「・・・そうね。私の勘違いみたいね。ごめんなさいね。」

健二郎「佐藤さん、行きましょうか。この後、買い物でしょう。付き合いますよ。」

一子「占い師さん、ありがとうございました。」

商店街をあとにし、ショッピングモールへと向かう、健二郎と一子であった。その後ろで一人、占い師が呟く。

占い師「頑張ってね。キューピットさん。」



 第八章 梓


 ショッピングモールへ到着した健二郎と順子。二人でショッピングを楽しんでいた。そこへ、五歳くらいの女の子が一人やってきた。

健二郎「迷子かな。お嬢ちゃんお名前は?」

そう訪ねると、いきなり健二郎へ抱きつく女の子。

女の子「パパーーー。」

ビックリする健二郎、更にビックリする一子。

一子「田中さん、お子さん居たんですか?」

健二郎「違います、僕は独身です。」

今度は、一子の方に向かい抱きつく女の子。

女の子「ママーーー。」

ビックリする一子、更にビックリする健二郎。

健二郎「佐藤さんこそ、結婚しているんじゃ?」

一子「私も独身です。」

健二郎「シングルマザー?」

一子「子供も居ません!」

女の子「わーい。パパとママだーーー。」

はしゃぐ女の子を見て、健二郎が再び声を掛ける。

健二郎「お名前は?」

女の子「あずさ、梓だよーーー。」

一子「迷子みたいですね。」

健二郎「そう、梓ちゃんっていうのか。じゃあ、お兄さんとお姉さんが、お父さんかお母さんが見つかるまで、遊んであげるね。」

梓「やったーーー。」

遊技場で一頻り遊ぶ三人。そこに、子供の名前を呼ぶ男性を見つける。

男性「おーーーい、帰るぞーーー。」

その男の声に反応する女の子。

梓「はーーーい。」

女の子は、走って行った。

健二郎「お父さんかな。」

一子「良かったですね。」

走って行く女の子、ただ、その影は、とても薄かった。



 第九章 愛の横断歩道


 交際を始めて一年、健二郎と一子は婚約者となっていた。今日も、オフィス街の旅行代理店で業務に励む健二郎。受付の前田に話しかけられる。

前田「主任、振り込みをお願いしていいですか?」

健二郎「ええ、構いませんよ。」

健二郎は、主任に昇進していた。

健二郎「では、行ってきまーす。」

ウキウキして、隣の銀行へと向かう健二郎。その足取りを見て、うらやましがる前田であった。

前田「いいなー、主任、もうすぐ結婚ですもんね。」

その言葉にいち早く反応した、内海課長。

内海課長「まさか、婚約者がお隣さんとはな。愛の横断歩道だな。」


 翌日、結婚の報告に、病院を訪れた健二郎と一子。菊竹先生に挨拶をしていた。

菊竹先生「そうか、いよいよ、結婚か。おめでとう。」

健二郎「腎臓移植手術のお陰です。本当にありがとうございました。」

菊竹先生「まあ、健二郎君が義理の息子にならなかったのは残念だが、一子さんと仲良くやってくれ。」

一子「義理の息子?」

健二郎「先生、もうその話は・・・。」

菊竹先生「すまん、すまん。本当に、おめでとう。」

挨拶を終え、病院を後にする健二郎と一子。そこへ、健二郎の元担当看護師の福田律子がやってくる。

福田「お二人とも、おめでとう。」

健二郎「あ、福田さん、ありがとうございます。もう定年退職されたんですね。」

福田「そうなの。退職したから、ちょっと、お願いがあるんだけど、いいかしら?」

健二郎「何でしょうか?」

福田「本当は言っちゃいけないんだけど、あなたたち二人のドナーは、夫婦だったの。その奥さんの方のお父さんが、今、この病院に入院されているの。」

一子「そうなんですか。でも何故それを、私たちに?」

福田「二人が亡くなってから、気を落とされたみたいでね。内緒で会って欲しいの。」

健二郎「僕は、構いません。こうして、結婚出来たのも、あの手術のお陰ですから。」

一子「私も構いません。」

福田「そう、いいのね。じゃあ、今から行きましょう。」

病院へ逆戻りし、病室へと向かう三人。病室に到着し、福田が声を掛ける。

福田「時雄さん、初枝さん、順子さんと強さんが来たわよ。さあ、元気出してください。」

ベッドに寝ていた時雄が起き上がる。妻の初枝がその手助けをする。

時雄「順子と強さん?」

初枝「どういうことですか?」

福田が二人に、生体腎移植の件を説明する。

時雄「そうですか・・・。あなた方の体の中で、二人は生き続けているんですね。」

初枝「よかった・・・うう・・・。」

涙ぐむ時雄と初枝に話しかける健二郎。

健二郎「こちらこそ、感謝しています。本当にありがとうございました。」

一子「今、順子と強と仰いましたよね。」

時雄「ええ、順子が私の娘で、その夫が強です。」

健二郎「あ、あの占い師さん・・・。」

一子「見えていたのね。」

健二郎が、カーテンの影になっていた写真立てに気づく。時雄と女の子の写真であった。

健二郎「この女の子は?」

時雄「孫です。二人の娘です。」

一子「えっ、この子、梓ちゃんじゃ・・・。」

二人が初デートしたショッピングモール。そこで迷子だったあの女の子の顔でした。

初枝「そうです。梓です。何故、孫の名前を知っていらっしゃるんですか?」

健二郎「僕と彼女は結婚するんです。恐らく、順子さんと強さんが引き合わせてくれたんだと思います。これも運命だと思います。」

時雄と初枝は、泣き崩れていた。



 第十章 本当の再会


 健二郎と一子は結婚し、健二郎は転勤となった。六年後、再び元の部署に転勤となって戻ってきていた。子供の誕生と成長の報告のため、時雄と初枝の家を訪ねていた。玄関で初枝が出迎える。

健二郎「こんにちは。」

一子「こんにちは、お久しぶりです。」

初枝「あら、わざわざ、家へ来て頂いたんですね。ありがとうございます。」

健二郎「はい、強さんと順子さんをお参りしたくて来てしまいました。」

一子「電話番号が分からず、六年前にお会いした際にお聞きした住所を辿ってきました。」

初枝「そうですか。ありがとうございます。」

初枝が小さな女の子に気づく。

初枝「あら、お嬢ちゃん、お名前は?」

女の子「梓だよーーー。」

初枝「えっ、あ、梓?」

健二郎「すみません。名前も頂いてしまいました。」

初枝「そうですか、さあ、上がってください。」


仏壇でお参りを終えたあと、座敷に案内された健二郎と一子と梓、ただ、そこには、病床に貧している時雄の姿があった。

初枝「もう、長くはないそうです。最後は家に居たいと本人の願いです。」

寝ている時雄に声を掛ける健二郎。

健二郎「お爺さん、梓が来ましたよ。」

その言葉に反応し、ゆっくり目を開ける時雄。

健二郎「さあ、梓、お爺ちゃんに何か言ってあげなさい。」

梓「お爺ちゃん、梓だよーーー。」

時雄は涙を流していた。

健二郎「すみません、トイレをお借りしても?」

初枝「ええ、どうぞ。今、お茶を入れてきますからね。」

一子「私も手伝います。」

座敷には、時雄と梓の二人きりとなった。梓が話しかける。

梓「ね。また会えたでしょ。」

うなずく時雄。梓の面影が降りてくる。

梓「大丈夫。もうすぐ、また、梓に会えるから寂しくないよ。」

その言葉を聞き、ゆっくりと目を閉じる時雄。その顔には笑みがこぼれていた。



                 完


ヒューマンドラマを書いてみました。相変わらず、文章力ありません、すみません。コメディーなら、「男!岩田剛太郎の秘密」を連載していますので、そちらも楽しんでください。

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