表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AZ研究会は行く  作者: 椿 雅香
9/57

逃がしはしない

少し短いのですが、キリが良いのでアップします。

 早川が更に言った。


「AZが発足するに当たっての、歴研顧問の菅原先生からの三つの条件については、さっき言った通りなんだ。


 だけど、これまでの話で想像できるように、目一杯不当な活動をしてみたいんだ。

 すると、裏帳簿ならぬ、裏日誌が必要になるんだ。


 菅原先生に提出するクラブ日誌は、リョウコが書く。先生も、美人のほうが嬉しいだろうし。


 しかし、本物のクラブ日誌は、いわば『裏のクラブ日誌』と言えると思うんだが、光太郎、お前が書いてくれ。

 獲得したAZの総額や通帳が要ると思うんだが、その残金総額や裏の根回しの方法やなんかを書いて欲しい。


 本当は、こういうものを残さない方が安全なんだろうが、いろいろ検討して次回に生かすという意味でも、記録を残したいんだ。


 ただし、これは、絶対に学校当局に見られないよう万全を期す必要がある。

 万一の時も、森田なら、小説を書いているとかなんとか、言い逃れもしやすいし、筆も立つ。ベストの人選だと思う」


 

 

 森田は、「セイの役に立つなら、嬉しいよ。万全を尽くすよ」と頷いた。






 この高校に男子が何人いるかは知らない。


 しかし、声を掛けられなかった全ての男子が地団駄踏みそうな展開だった。


 学校の誇る二人の美女(一人はともかく、もう一人を美女というのは抵抗があるが、美女であることは間違いない)と組むのだ。


 

 森田は、声を上げずに快哉を揚げ、それでも平静を装って確認した。


「僕は、記録係。イッキは、生徒会との調整担当。ヨシは、やっぱり発明係かい?」

「俺か?俺は、将来の発明のために消費者ニーズを掴むという意味では、AZが参考になると思ったのは事実だ。

 金になる発明ってのは、消費者ニーズを無視できないからな。


 だがな、そんなことより、セイに頼まれたんだ。

 竹馬の友としては、いたしかたないと言うものだろうよ」


 長瀬は口の端で笑いながら早川を振り返って言った。


「しかし、お前ぇが始めると、無茶苦茶だな。

 簡単な話を難しくしてしまうのは、いつものことだけど、無茶をするためのクラブを作るってんだから。大したもんだぜ。想像以上だ」


 褒めているのだろう。

 褒めているのだろうが、素直に褒めているとは思えない。

 だが、言質はとってあるのだ。今さら逃がしはしない。

 嫌でも、付き合ってもらおう。

 

 

 

「お前な。付き合うって約束だぞ。今更逃げるなよ」


「逃げねぇよ。約束は約束だ」



「つまりだ。

 無茶苦茶に稼ぐだけ稼いで、普通じゃない使い方で無茶苦茶に使い切ってしまおうってことか?」と、鳴海が悲鳴を上げた。



「その通りだ。さすがに頭良いな。ワタシより説明が上手い」





 男達は頭を抱えた。


 久保は瞳を輝かせて早川を見つめた。


 久保の唇が小さく動いた。

「神様」と、呟いたようだった。




     

日時 4月27日(水)3時30分~5時

場所 歴史研究会部室

出席者 早川、鳴海、長瀬、森田、久保

議事内容 ①クラブの名称 AZ研究会

     ②活動内容   最近の我が国における泡銭崇拝、泡銭願望を憂えて、

            泡銭の研究を行うのとする。具体的には、性質、獲得方

            法、消費方法の研究を行う。

     ③活動方針   違法な行為及び公序良俗に反する行為は、行わない。

     ④活動期間   当面一年をもって活動を終わる。

   

 次回は、5月11日。それまでに、各自AZの獲得方法と消費方法について研究してくる。

記録者  久保






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ