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AZ研究会は行く  作者: 椿 雅香
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魚勘前通行量増大作戦

「よく商店街でやる『○○祭』ってどうかしら」

 久保が提案すると、鳴海が反論した。


「良いけど、あれは、一過性で何のメリットもないと思う」

「しかも、魚勘があるのは、商店街とは言えないぜ。

 この前見てきたけど、隣の肉屋、ちょっとおいての八百屋が変形したスーパー、呉服屋、菓子屋、歯医者、瀬戸物屋と歯が抜けたみたいだったぜ。

 昔はもっと店があったように思ったけどなあ」

 長瀬が言った。


「うん。お袋が子供の頃は、魚町自体が魚屋の問屋が集まった町だったらしい。

 それに、乾物屋、雑貨屋その他の店もいろいろあったらしいよ。

 みんな代替わりのときに潰れたか撤退したんだって」


「でも、商店街と言えなきゃ、リョウコの言う『○○祭』なんかできないと思うぞ」

 早川が溜息をついた。

「『○○祭』が無理でも、何か花火を打ち上げないといけないわ」

 久保が固執する。


「要は、人通りを多くすれば良いんだろ?

 だったら、なんとなく魚勘前の道を歩きたくなるような薬を撒けば良いんだ。

 できれば、魚勘の魚を買いたくなるようなら、もっと良い。


 猫がマタタビに惹かれるみたいに、なんとなくあそこを通りたくなるようにするんだ。

 

 これは俺の担当だな。

 俺は俺の仕事をする。セイ、後は、任すぜ」


 長瀬が立ち上がった。ニヤリと笑って、片手を振る。

 部室の入り口で立ち止まると、

「イッキ、『惚れ薬』の追加注文は早い目にまとめてくれ。重なるとやってられないからな。

 さっさと作って、さっさと売って、活動資金を増やそうぜ」と、片目をつぶって、去って行く。


「追加注文なんかあるのか?」

 早川が唖然として訊いた。

「生徒会宛に来てるんだ。

 どこかで聞いたんだろう。生徒会連絡調整会議のいくつかの高校からと、もちろん校内からも来てる」

 鳴海が答えた。


「悪趣味だ。告るなら、堂々と玉砕しろ!」

 早川が吠えた。


 この人は、正々堂々と告白するのを良しとする。

 でも、誰だって、玉砕したくない。惚れ薬なんてものがあるなら、使わない手はない。


 そんな一般人の心を久保が弁護した。

「でも、ジョーク商品としては、面白いと思わない?」


「真面目なヤツには、副作用が出るんだぞ」

 早川は面白くない。


 だったら、そんなもん、売るな!

 喉まで出かかった台詞を飲み込んで鳴海がとりなしした。


「何せ、あれを売ることで活動資金を増やせるんだ。ありがたいことだと思わないか?」



 



 さて、長瀬の薬の他に何ができるか、一同、知恵を絞るが思いつかない。


「何か花火を揚げれば良いのよ」

「しかし、花火って、上がったときは良いけど、一過性だぞ」

「一過性でも、次から次に上げたら、辺りが明るくなると思わないか?」

「確かにそうだけど、辺りが明るくなるには、ものすごい数の花火か、爆弾級の花火が必要になるよ」

「でも、何もしないよりましよ」

「そうだな。何もしないより、花火を揚げ続けて、森田のお祖母ちゃんに考える時間を与えたほうが良いかもしれない」

「でも、花火って具体的に何なんだ?」

「それは、……分かんない!」

「要は人通りだ。人通りを多くするんだ」

「どうやって?」




 散々悩んだあげく、久保が苦し紛れに提案した。心なしか、目が輝いて嬉しそうに見える。

「手っ取り早く北斗高校のみんなに歩いてもらいましょうよ」


なぬ?」

 一同、目を丸くする。


「生徒会で、各クラブの部長を招集して、クラブ帰りに通学路として、魚勘営業中に、あの道を歩いてもらえば良いの。そうすれば、通行量が増えると思わない?」


「でも、高校生の通行量が増えても、高校生は魚なんか買わないよ」

 森田が遮った。彼は、鳴海の次に常識人だ。

「それでも、人が通ればそれが呼び水になって、一般の主婦の通行も増えるかも知れないでしょ?」と、久保。

「それだ。ついでに、帰宅部には、セイ、お前、頼んで見ろ。

 あの文化祭の人気なら、きっと聞いてくれるぞ」

 鳴海が同調した。久保に賛成して、気を惹こうという下心満載の態度だ。


 

 そんな、久保と鳴海の提案に早川が便乗したのは計算外だった。

 

 さすが、歩く非常識だ。



「どうせなら三人で頼んだほうが良いだろう。

 リョウコもイッキもそれぞれにファンがいる。やってみるか?」


 

 早川の眼がキラリと輝く。

 鳴海が眼を細くする。

 後悔先に立たず。今さら後悔しても始まらない。麩毒を食らわば皿までだ。

 久保が早川をうっとり見つめる。


 森田が頭を抱えた。





日時  10月26日(水)午後3時30分~5時

場所  AZ部室

議題  零細小売鮮魚店を立て直すため、まず、通行量を増やすことを目指す。北

   斗高校のクラブ及び帰宅部に声をかけて、魚勘前の道を帰宅の際、通学路に

   してもらう。

記入者 久保



10月26日(水)午後3時半~5時

 

 魚勘の建て直しのため、通行量の増大作戦を展開する。

 まず、長瀬が『猫にマタタビ理論の薬』を開発する。

 次に、生徒会で各クラブの部長を招集して、帰宅の際の通学路として、魚勘前の道を歩いてもらう。

 日当として、クラブの部員数にかかわらず、一日2,000円支払う。これは、生徒会会長権限で部長を招集して連絡する。

 帰宅部については、一回で200円支払う。帰宅部のメンバーについては、帰宅部員集会を開いて、早川、鳴海、久保の三人で頼む。

 

 長瀬の研究費とクラブと帰宅部員への謝金でAZがなくなり次第、魚勘に閉鎖勧告する。

 なお、『惚れ薬』追加注文は、大至急製造し、長瀬は『猫にマタタビ理論の薬』に専念する。

 山本の『浮遊薬』についても、早めに対応する。



10月27日(木)

 昼休み、鳴海生徒会長が全クラブの部長会議が招集し、魚勘前通行量増大作戦の説明をする。

 各クラブの部長から「5時に閉める店の前を通るためには、準備や後片付けの時間を考えると、一時間も練習できない」と、抗議があった。

 しかし、①一日2,000円は、各クラブにとって泡銭だったのと、②早川がまともに頭を下げたのと、③久保が涙を浮かべて頼んだのと、④鳴海が豪快に頼んだので、どうせ冬は練習時間が短いのだから、年内いっぱい付き合うか、ということになった。

 帰宅部については、放課後、帰宅部員集会を開いて、これも早川が本気で頭を下げた。一回200円という小遣い稼ぎにもなるとのことので、かなりのメンバーが了解してくれた。今日から、通行量増大作戦開始だ。              

                    (裏のクラブ日誌より)




無茶苦茶な作戦を実行することになります。

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