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AZ研究会は行く  作者: 椿 雅香
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魚勘の不振

少し短いですが、キリなのでアップします。

 「お祖母ちゃんの店は、『魚勘』と言うんだ。

 元々、お祖母ちゃんのお母さん、つまり僕の曾祖母ちゃんがやってたものらしい。

 お祖母ちゃんは、学校を卒業してから、ずっとお店をやっている。

 『家付き娘』――この場合は『店付き』娘だったから、曾祖母ちゃんと二人で店をやってたんだ。

 お祖母ちゃんは、お祖父ちゃんと結婚してもお店を続けた。北斗の町は共働きが多いから。

 曾祖母ちゃんが店をできなくなってからは、ずっとお祖母ちゃん一人でやってる。

 子供が独立して、仕送りしてくれるようになって、年金が入るようになっても店をやってる。

 この間に曾祖母ちゃんが死んだり、お祖父ちゃんが死んだりと、いろいろあったんだけど、ずっと店をやってる。

 今では、年金があるから店の儲けを当てにしないで生活できるようになったんだけど、それでも、店をやってる。

 店は完全にお祖母ちゃんの趣味になってるんだ。

 

 何時ごろから赤字になったか誰にも分からない。

 多分、お祖母ちゃんにも分からない。

 お祖母ちゃんは、帳簿を仕入れ額と掛売り分しかつけないんだ。

 だから、毎日の仕入れ合計に対して売り上げ総額がいくらになっているかなんて分からない。


 以前、何で帳簿をつけないのか、ってお袋が訊いたら、帳簿につけるほど売れないって言ったらしい。

 で、お金が不足するようになって、娘二人に借りるようになったんだ。


 この借り方も振るっていて、返す気なんてないんだ。

 

 ことの発端は、去年の夏らしい。

 八月の頭に電話があって、『車の保険のお金が少し足りないので、7万ほど貸して』って話だった。

 で、お袋が7万渡したんだ。

 そしたら、月末に叔母さんから電話があって、『魚勘から、お金の無心があった。私は、七月始めにボーナス分のお小遣い10万渡しているのに何に要るんだろう?』って訊いたんだ。

 お袋が、『冗談じゃない。ウチも魚勘に八月頭に7万渡している。偶数月だから年金も入っているのに、何に要るんだろう?』って、大騒ぎになったんだ。

 叔母さんはサラ金か闇金に捕まったんじゃないかって心配したようだけど、そういう形跡もないんだ。

 

 結局、問い質したら、毎月7~10万の赤字が出てるって白状したんだ。


 これは大変だって、十一月に叔母さんとお袋とお祖母ちゃんの三者会談があって、これからは、毎月の赤字を何とかするため、叔母さんとウチつまりお袋で、毎月5万ずつ出して赤字の補填をしようってことになったんだ。

 ところが、その話が決まってすぐ後の一月にお祖母ちゃんからお袋に金の無心があったんだ。

 理由が振るってるんだ。

 今まで、お祖母ちゃんは、叔母さんのボーナス月に10万のお小遣いをもらっていたんだ。それが、十一月の話し合いの後の十二月にもらえなかった。それで、お金が足りなくなったって話だ。


 お袋も叔母さんも、目の前が真っ暗になったって言ってた。


 叔母さんがボーナス月にお金をくれてたのは、お小遣いのつもりだったのに、それを当てにして生活してたんだ。


 典型的なAZだ。

 

 考えてみると、お金の借り方もAZだ。

 

 電話一本で自動的にお金が入るんだ。

 

 セイが株を守る話をしてたけど、AZの弊害によって自立できなくなってしまったんだ。


 それに、その時の要求額がすごい。

 30万だ。

 十一月に月5万と約束したばかりなのに。

 お袋は、瞬間、ありえないって思ったらしい。

 

 その時は何とか折り合いが付いたんだけど、3月にまた無心があって、今度は、テント――よくお店にある店舗用のテント――が壊れたから修理するので、7万貸してくれと来た。

 テントは店を止めたら、いらないものだ。

 お袋も叔母さんも店を止めてって、頼んでるのに。それが壊れたからって、ウチと叔母さんの了解も取らずに発注してしまったんだ。

 

 お袋は、『銀行の借金だって、帳簿に基づいて、これだけの額が不足しているので貸してくれって言うのに、どんぶり勘定で、足りなくなればお金をくれって言うのは、いい加減すぎる。テントだって、こっちの了解もなく勝手に発注するのはあり得ない』って、切れちゃったんだ。


 第一、要求額がだんだん多くなってるし、テントの修理代なんか、最初の計算に入っていないといけないもんなんだ。

 場当たり的に、これが要る、あれが要るって、要るものを片っ端から子供の金で買ってるんだ。

 

 それで、あきれ返ったお袋が、三月に『店を止めない限り、今後一切の援助をしない』って、宣言したんだ。


 この間、自分のことは自分で何とかしてくれ!って言ったら、お祖母ちゃんは、当面、お祖父ちゃんの残した土地を売って赤字に補填するって言ったんだって。

 でも、土地ってそんな簡単に売れるものじゃないだろ。

 田舎だから二足三文だし。

 売るのも大変で、売れたとしても早晩それも食いつぶして、またぞろお袋達を当てにするんだ。


 しかも、時すでに遅しだ。

 お袋は、僕の進学用の貯金に手をつけてしまっているし、今さら、どうすることもできない。

 奨学金でも借りないと僕は大学へ行けないんだ。


 だから、あのお金を貸してほしかったんだ」


 森田が溜息をついた。




森田くんの話は暗いです。AZは明るくないといけません。早川達は、森田くんのためにジタバタすることにします。

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