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AZ研究会は行く  作者: 椿 雅香
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森田の告白

 森田が意を決して言った。



「その金、僕に貸してくれないか?」




 全員、顔を見合わせた。AZは、青少年の健全な(?)暇つぶしだ。

 

 こんな悲壮感は似合わない。



「何に使いたいんだ?」

 鳴海が訊いた。

「使い道がAZの趣旨に合致するなら、良いんじゃない?」と、久保。

「お前ぇ、この頃、ちょっと変だぞ。何かあったのか?」

 長瀬も訊く。

 


 森田が、大きく息を吸って話を始めると、一同、唖然とした。



 進学費用に充てたいというのだ。



「ちょい待ち。

 

 AZって言うのは、生活のために使わねえはずだ。


 セイの考えでは、生活費にAZをあてにすると、生活能力がなくなる。

 俺もそのとおりだと思う。


 何で、光太郎の進学費用に充てなきゃならねえんだ?」

 長瀬が、首を捻る。


「お前がそんなことを言うのは、何か理由があるはずだ。

 

 光太郎、何でお前の進学費用にAZを充てたいんだ?」

 早川が鋭い目つきで問いつめた。



 森田は、早川の目つきにすくんだ。


 余計なことを言うんじゃなかった。

 今すぐここから逃げ出したいほどだ。


 観念して洗いざらいぶちまけた。


 

 

 森田のお祖母ちゃんは、魚屋さんだ。

 北斗の町で、昔から魚屋をしている。

 森田のお母さんが生まれる前から魚屋をしていて、現在も魚屋さんだ。


 この魚屋が、おかしくなったのだ。

 つまり、全く儲からなくなった、らしい。


 お祖母ちゃんは、年金をもらっている。

 だから、店の収入がなくても生活できる。それなのに、この頃、お祖母ちゃんからお金の無心があるのだ。


 最初は、誰も気がつかなかった。


 でも、度重なると、訝しく思うようになる。


 お祖母ちゃんは、「ちょっと、貸して」と言って、森田家に借りに来るのだ。


 サラリーマンの家に、そうそう現金があるわけもない。

 この頃は、森田の進学費用として積み立てていた貯金まで下ろして渡しているのだ。


「このまま行けば、僕は大学にいけなくなってしまう。ウチには、妹もいるんだ」

 森田が切なそうに言う。


「それは、何時ごろからなんだ?」と、早川が訊いた。


「よく分からないんだ。ただ、二月に一回ぐらいお金の無心があって、お祖母ちゃんは、『貸して』って言うらしいんだけど、返したことがないみたいだ。


 うちのお母さんも、お母さんの妹――僕にとっては叔母さんだけど――も怒ってるんだけど、お金は渡している。


 お祖母ちゃんには、楽な仕事だよ。


 電話一本でお金が出てくるんだ。

 銀行のキャッシュサービスみたいだ。


 でも、おかげで、僕の進学費用の積み立てはボロボロだ。


 できれば、AZの預金全額を僕に貸しほしいくらいだ。四年は無理でも、一、二年の学費ぐらいにはなる」




 一同、苦いものを飲み込んだような顔になった。


「光太郎よぉ。AZは、遊びの話だ。そんな深刻な話じゃねぇぞ」

 長瀬が言った。

「でも、森田くん、気の毒だわ」

 久保も情けなそうだ。

「いくら気の毒でも、高校生にできることとできないことがある」

 鳴海が憮然と言った。

 

 彼は、ここで一番の常識人だ。



「確かに生活費を貸すことは、資金的に可能だ。

 でも、申し訳ないが、AZは、本来そういう切羽詰った時のための金じゃないんだ。


 でもな、話がよく分かるように、もっと詳しくお家の人に話を聞いてきてくれ。

 

 何時ごろからおかしくなったとか。

 どのぐらいの赤字が出ているかとか。

 家族はお店をどう思っているのかとか、そんなところだ。


 その後で、AZで何ができるか、一度、考えてみても良いと思う。

 今の話だけじゃ、事情がよく分からない」と、早川が言って、森田は重い宿題をもらった。





日時  10月12日 3時30分~5時

場所  AZ部室

議題  文化祭の収益金について 文化祭のカンパが9万7,000円と、予想以上

   に多かった。

    長瀬と吉本の発明品の『惚れ薬』『光よ!』『浮遊薬』の利益(約8万

   円)のうちAZの取り分7万2,000円とあわせて、16万9,000円

   になった。

    これをもとに、AZの使用方法の検討を行う。

    平凡なものじゃなく、斬新な使用方法を考えようと言うことになった。

記入者 久保



森田くんの事情は切実です。

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