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AZ研究会は行く  作者: 椿 雅香
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AZの使い方

 北斗高校を震撼させた(?)文化祭が終わり、平穏な毎日が戻った。

 

 AZでは、久保と森田が文化祭の収益を計算し、長瀬と山本――近頃では、山本は、準部員の扱いになっている――が、泉川と桜川の注文した薬品を発送した。



 久しぶりの例会だ。


「どのくらい儲かったんだ?あれだけの思いをして、大したことなかったら、怒るぞ」

 早川が唸った。


「大丈夫、まだ、正確に数えてないけど、握手会だけでざっと60万ちょっとある。

 

 北斗高生が、久保と早川で二回、鳴海と早川で二回と数えて、一人四回ほど握手した計算になる。

 二日あったから、一日二人ずつって計算だ。


 ただし、先生方は2,000円から5,000円出してくれたし、北斗署の皆さんや柴田健太郎さんは、大人だから500円から1,000円出してくれたから、実際は、北斗高生全員が四回と言うことはなかったと思う。


 それから、泉川と桜川の注文を含めて、『惚れ薬』が500個、『光よ!』が300個、『浮遊薬』が1,000売れているんだ。


 それぞれ、売り値が、1,000円、500円、1,000円なんだけど。原価を引いて、『惚れ薬』の儲けが500円。『光よ!』の儲けが300円。『浮遊薬』の儲けが600円だ。


 利益の合計は、94万円。

 

 その八割がAZの取り分だから、75万2,000円がAZの取り分になる。


 あわせて、約135万円だ」




 一同、どよめいた。


「すごいわ!」

 久保が感動する。


「そんなに発明で儲かるなら、握手会なんてしなくてもよかったのに」

 鳴海が文句を言う。


「あれのどこがAZなんだ?ワタシにとっては、普通の労働だった」

 早川が嘆いた。


「俺の特定眼鏡視覚可能剤もそうだったね。


 しかし、考えても見ろ。

 コンビニでバイトしたとして、700円GETするのに、一時間かかる。

 握手会なら、三・五人と握手するだけで700円GETできるんだ。時間にして、五分かからない。これがAZでなくて何だ?」と、長瀬が言った。



「おっしゃるとおりです」一同納得した。



「しかし、こんなに儲かってしまったのを、このまま正直にクラブ日誌に書いても良いものだろうか」

 早川が呟いた。


「それだ。

 ほかのクラブの茶店や物品販売の通常の売り上げは、原価を含んで3万ほどだ。

 儲かっても、せいぜい5万までだ。


 異常に目立つ。


 下手すると、生徒指導から、異常な利益を得たとして、どこかへ寄付することを強要されかねない」と、鳴海。


「そんなの嫌だわ。

 でも、確かに、生徒会への報告でも、一年二組の喫茶店が売り上げ5万で、それが最高だったわ。

 

 そのあたりで、でっち上げておいたほうがいいかもしれないわね」

 久保も同調する。


「でも、真面目に働いたのに、額が多すぎるって、気を遣うなんて、変だよ」

 森田がぼやく。

「仕方がねぇ。俺達が上手にやりすぎたんだろうよ。イッキの考えに賛成だ」

 長瀬も開き直る。




「じゃあ、リョウコ、適当に頼む。


 次に、使い方だが、結構たまったから、由緒正しいAZの使い方を検討したい。何か良い考えはないか?」

 早川が提案した。


 鳴海がおもむろに言った。


 「一組の中山知ってるだろ。あいつ、シミュレーションで株やってるんだ。

 1,000万を2,000万にできるって、豪語してる。

 100万ほど預けて試してみないか。

 リスクはあるけど、どうせAZだ。俺たちが株をするのは、手続きや仕組みの勉強からしなくちゃならないから大変だけど、あいつに頼む分は良いかもしれない」

 

 一同は、大いに乗り気になった。


 中山は、変人で通っていて株に夢中だ。

 100万渡して、増えれば良し、元本割れしてもどうせ泡銭だ。


 それが良い、細かいことは鳴海に任せる、と、一同その気になったところで、横槍が入った。


 言わずと知れた、この人だ。


 歩く非常識は、ひどく真面目な顔をしてダメ出ししたのだ。


「ダメだ。

 最初に言っただろう。株は、金持ちのする仕事だって。


 億単位の金があるならともかく、我々高校生が、手持ちの小遣いでやるには、危険すぎる」


「お前、賭けだってリスクが高いのに、胴元までやったじゃないか。それなのに、どうして株はダメなんだ?」



 鳴海が、火を噴いた。

 あの賭けのせいで、散々な目に遭ったのだ。きっちり抗議する局面だ。



「前も言っただろ?

 どこかの暴力団なんかが大々的に賭けをやったら刑法上の賭博罪になる。

 でも、我々高校生が可愛く、一口100円の賭けをするぐらいは、刑法が想定する犯罪に当たらないんだ。

 

 だけど、株は素人がするには危険すぎる。

 

 我々AZ研究会は、泡銭(AZ)を儲けるけど、借金までして金儲けするつもりはないんだ。

 

 今までやって来たのだって、借金ゼロの健全なAZ獲得活動だけだ」




 余りにも都合の良すぎる理屈に一同、脱力した。




「じゃあ、何に使うの?


 さっさと使ってしまわないと、学校当局からどっかへ寄付しろって言われるかもしれないのよ」




 そうだった。


 安田先生がこの儲けを知ったら、絶対、生徒会とか野球部とか演劇部とかに寄付しろって言うだろう。

 それだけは、全員分かった。


 分かったけど、じゃあ、どうやってAZらしく使うかというと、全く知恵が浮かばない。



「やっぱ、ディズニーランドだ」

「さっき、セイがそれはダメだって言ったでしょ?」

「じゃあ、旅行、ちょっと足を延ばして北海道ってどう?それか、思い切って海外旅行」

「それって、AZの使い方じゃないと思うぜ」

「毎日、プチ・フランスのケーキを食べるって、どうかしら?」

「そそられるけど、AZらしくないから没」

「浮遊薬の研究費用として俺と山本にくれ!」

「言われなくても、それぐらいやる!

 170万もあるんだ。お前達の研究費用なんか、ささやかなもんだ!」


「じゃあ、どうすれば良いの?

 こんな大金、どうやって使うかなんて思い付かないわ!」


「だよな。そもそも高校生の小遣いってレベルじゃないぞ」




 一同、紛糾するが、何故か森田の元気がない。


「どうした、森田。元気がないな」と、長瀬が訊くと、言いにくそうで歯切れが悪い。


「森田どうしたんだ?」と、早川も訊く。




 森田が意を決して言った。

 



「その金、僕に貸してくれないか?」




予想以上に儲かったので、有意義に使いたいと、一同は紛糾します。

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