文化祭のあれこれ
早川と久保は、手が真っ赤に腫れて、可哀想なほどだ。
男の鳴海より、女の早川や久保の方が華奢でか弱かったのだ。
長瀬達が、会場の後片付けを終わって部室に戻ると、セーラー服を脱いだ早川が濡れタオルで手を冷やしていた。
久保は、泉川の西川会長を撒いて来たのだろう。心配そうに早川を見ている。
何故か、小杉高の加藤が部室に上がりこんでいた。
「もったいない。セーラー服、脱いじまったのか?」
長瀬が声をかける。
「当たり前だ。あんなもの何時までも着てられるか」早川が笑って「光太郎、ヨシ、後片付け、すまなかったな」と、真面目に謝った。
「問題ない。お前ぇが清田に頼んどいてくれただろ。だから、野球部がみんなで手伝ってくれた。体育祭の礼だとよ。
律儀なヤツ等だぜ」
長瀬が笑う。
「セイ、清田くんと握手するとき何か話してたけど、そんなこと頼んでたの?大したものだわ」
久保が感心する。
「リョウコは、あの状況で、他人のことよく見てるな。それこそ、たいしたものだ」と、早川。
「清田が、セイの手を見て心配してたよ。セイや久保さんには、後片付けなんか無理だって。
後で、アロエ持って来てくれるって。良いヤツだな」と、森田。
「どこが?そんなに心配してくれるなら、あんなに力いっぱい握るな」
早川は渋い顔だ。長瀬が笑いながら、のどかに聞いた。
「手の方は少しは落ち着いたか?湿布剤もらって来ようか?」
「腫れさえ引けば良いんだが……」と、早川は手を眺める。
赤く腫れあがって痛々しい。
思わず久保も目をそむける。
加藤は、早川をとんでもない目に合わせたと、長瀬を怒った。
長瀬は、セイが分かってやってるんだと、言い返す。
一発触発だ。
久保が取りなして言った。
「加藤くん、気持ちは分かるけど、私達は子供じゃないの。
自分達で納得して、意味があると考えたからやったの。
予想以上に大変だったけど、それは、長瀬くんのせいじゃなくて、私たちAZ全体の責任なの」
優しい顔に似合わず、手厳しい。
「長瀬くん達が来たから、私、生徒会を覗いてくるわ。セイだけ残すのは、気になったの」
久保が立ち上がった。
「ワタシは、そんなに甲斐性なしか?」
「あなたが丈夫なのは知ってるけど、今日は、一番大変だったでしょ。
セーラー服なんか着ちゃったしね」
久保が優しく早川の髪を撫でた。
早川が目を閉じる。
「女同士でそんなことしないでよ。百合は、担当外なんだ」
森田が文句を言った。
久保が出て行くと、早川が溜息をついた。
「会場に籠もって握手している間に文化祭が終わってしまった。
『秋の日の ヴィオロンのため息の ひたぶるに うら悲し』だ。
こんなんで良いんだろうか?」
「良いんだろうよ。お前ぇの望んだことだ」
長瀬が、ニヤリと笑った。
日時 10月7日、8日
場所 一年六組教室
内容 文化祭で、展示を行う。
予算のないAZのためにたくさんのカンパが寄せられた。ありがたいことだ。
記入者 久保
10月7、8日 一年六組教室にて
文化祭で、握手会を行う。
大成功だったが、早川や久保を目当ての男子の力が強すぎたようだ。
二人とも手を腫らしてしまった。
8日に早川がセーラー服を着たので、男子の行列がすごかった。
本邦初公開、当日限りということで、競って早川の手を握ったので、午前中で早川の手が真っ赤になった。
そのうち、久保の手も腫れた。
客の中に、安田先生、紀夫センセ、川畑先生、松浦先生がいて、それぞれ、2,000~5,000円カンパしてくれた。
柴田健太郎氏が久保に握手をしに来ていたので、その場で『浮遊薬』と『惚れ薬』と『光よ!』の特許申請を依頼した。
生徒会関係では、泉川高の西川会長、小杉高の加藤会長、三水高の植村会長と桜川高の坂本会長が来ていた。西川と坂本は、薬をそれぞれ100個ずつ注文して帰った。泉川高は、利ザヤを稼ごうとしているようだし、桜川高は二度と発明品の販売のチャンスを逃したくないようだ。 (裏のクラブ日誌より)
儲かると思ったのでしょうが、自分達の限界を計算してなかったようです。




