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AZ研究会は行く  作者: 椿 雅香
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騎馬戦の後

 あちこちで、戦いが始まると、中央の早川が飛び出した。


「清田、援護しろ!」


 早川が走ると、野球部部長の清田が追う。



 当初の陣形は鶴翼の陣だった。だが、紅組だって二騎で一騎を落とす練習をしてきたのだ。最初の衝撃を乗り越えると踏みとどまった。


 戦況が混乱すると、早川が清田を従えて紅組の陣にくさびを打ち込むように突き破った。

 しかも、二騎は駆けながら片っ端から帽子を引ったくっていく。

 

 まるで大人と子供だ。他の連中とレベルが違うのだ。


 たちまち、劣勢に追い込まれた鳴海は、「とにかく、手近なヤツから倒せ!」と叫ぶ。




 少なくとも、早川を倒す。

 あいつを倒せば、白組の勢いが止まる。


 しかも、ラッキーなことに突出しているのだ。

 倒してくださいと言ってるようなものだ。



 早川は、清田を従え、縦横無尽に駆け回る。

 しかも強い。

 この二人が白組で一番強いのだ。




「セイ!セイ!」

「早川さーん!」

 女子が叫ぶ。




 瞬く間に、帽子を五つ六つとって、雄叫びを上げて襲いかかる。


 

 あれは、本当に女か?


 誰もが目を疑った。



 鳴海は、早川に駆け寄って、一騎打ちに持ち込んだ。


「鳴海さーん!」

 黄色い声。


「清田、手を出すな」

 早川が制し、鳴海と睨み合う。




 身長は、鳴海の方が圧倒的に高い。

 多分、運動神経も鳴海の方が上だろう。



 鳴海が馬上で立ち上がる。早川も立ち上がる。


 鳴海が両手を大きく上げて、上から襲いかかる。


 端から見てると、熊が子馬に襲いかかる図だ。




 女子の悲鳴が上がる。


 鳴海の手が早川に届く直前、早川が鳴海の両腕を払った。

 勢い余って前のめりになる。


「きゃー。鳴海さん、止めてー!」

 甲高い叫び。



 次の瞬間、信じられないことが起こった。


 早川が、鳴海の右肩に手を掛けジャンプしたのだ。

 スローモーションのような動きだった。


 リーチは鳴海の方が長い。

 しかし、不意を付かれた鳴海が、正気に返るまでの僅か一、二秒の間に鳴海の帽子は早川の手に落ちていた。


 悲鳴と歓喜が上がる。


「いや―!鳴海さ~ん!」

 紅組女子が叫び。

「早川さーん。かっこ良い!」

 白組の女子が歓喜する。


 鳴海を失った紅組は無惨だった。




 銃声が鳴って、白の圧勝だった。


 早川が帽子を高く放り投げる。

 髪を振り乱したウイニングラン。

 髪が風にたなびく。



「ライオン!」

「北斗高のライオンよ!」

 女子達が口々に言う。


 

 確かに、雄々しく美しい。

 久保じゃないが、北斗高の宝だ。

 俺に関係なければな。

 




 場内の興奮覚めやらぬうち、鳴海が紀夫センセに文句を言おうと本部席に足を運ぶと、先客がいた。

 

 安田先生だ。



 安田先生は、ブツブツと紀夫センセに文句を言っている。



 紀夫さん。何も、あのじゃじゃ馬に騎馬戦なんか認めなくも良かったのに。

 あの上品な小牧さんの娘があれじゃあ、夢も希望もないじゃないか。

 だいたい、生徒が馬鹿するのを教師が止めずに、誰が止める。

 あの子にセーラー服を着せることができたら、僕は一万円でも払うよ。云々。




 鳴海は、息を吐いて、生徒会席に戻った。



 やっぱり、あいつは問題児だ。

 

 プログラムの最後は仮装大会だ。

 これは、紀夫センセがきちんと正式のプログラムに書いてくれた。


 

 いろんな仮装があって、それなりに受けたが、最後に二年三組の番になり、森田がセーラームーンになって出てきた。


 騎馬戦に代理を立てて準備をしただけあって、去年の白雪姫より美しく、例の「月に代わって」の台詞も決まって大受けした。


 本来なら、ここで終わるところだが、このセーラームーンは、もう一度変身して、『北斗高のライオン』になった。


 先ほど、本物のライオンが活躍したばかりだ。


 森田のライオンは、長い髪の鬘を被り、学生服を着て、竹刀を持っていた。


「北斗高の平和を乱すヤツは、許さないぞ!」と、大見栄を切ると、馬鹿受けだった。



 げらげら笑う者。くすくす笑う者。あんまり受けて笑いが止まらないので心配になったほどだ。



 確かに、提案したのは早川だ。

 しかし、ここまで受けなくても良いのだ。


 森田は、早川に殺されるかも知れないと、本気で心配した。



 五分以上笑いが続き、収拾がつかないので、鳴海がマイクを片手に、「みんな、体育祭の成功を祝って踊りまくろう」と、叫ぶと、頼んであった生徒会役員、クラス委員がわらわらと出てきて、音楽に合わせて踊り出す。


 スチャラカチャンチャン スチャラカチャン 月が出た出た 月が出た あ ヨイヨイ。


 一般の生徒達もぞろぞろグラウンドに出て踊り出す。


 紀夫センセには、時間が許す限り踊り続けることを了解してもらっている。


 全校生徒720人が、上手も下手も歌って踊る。

 仮装大会の出場者は、扮装のまま踊っている。

 森田のライオンも踊っている。

 二年五組のシンデレラ(二年三組の『北斗高のライオン』の次に好評だった。ただ、森田と比べると今一で、ニューハーフのようだった)は、ドレスの裾を振り回して踊っている。


 場内一気に盛り上がる。



 ふと、気が付いた。


 早川はどこだろう。あの目立つ本物のライオンがいない。


早川は、文化祭を見据えて体育祭で目立っているのです。

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