表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AZ研究会は行く  作者: 椿 雅香
34/57

ソフトテニスボールのゲーム


 「いつもすごいけど、今日のセイは特にすごい。動きが違う。」


「分かったか?困ったな。師範に叱られる」

 悪戯っぽく眼をきらめかせて笑う。


「どうして?」

「ドーピングした。」


 加藤が目を剥いた。


「ドーピングって、体に悪いんだろ。セイ、止めたほうが良い」

「相変わらず、真面目だな。飲む薬じゃないから、問題ない」

 早川が涼しい顔で言う。


 そういう問題じゃない、と喉まで出かかったが、口にする前に、早川が言った。


「タカも使ってみるか?

 防具に山本の『浮遊薬』スプレーしたんだ。軽くて良いぞ。


 今日は、これからヨシと遊ぶから、動きやすくて良いかもしれないって、ひらめいたんだ」



「『浮遊薬』、できたのか?」

「やっと一時間効果を保てるようになったんだ。

 これは、試作品。

 ただな、いくら軽くても、この質感はそのままなんだ。ちょっと変な感じだ」



 唖然とする加藤に、早川はスプレーを取り出し、嬉しそうに眼を輝かせて自分にスプレーし、ついでに加藤にもスプレーする。



「師範には内緒だぞ。また、叱られる。

 

 お前はこれから帰るから、こうしておくと道中軽くて良いだろ?」



 早川がくすくす笑った。



 こうしていると、普通の女の子だ。しかも、超絶にきれいな女の子なのだ。

 加藤の心情は、複雑だった。



 

 道場の入り口に声がした。

 長瀬が来たのだ。


 ノート型パソコンを小脇に抱えて、片手を挙げる。


 早川は、新しいソフト作ったって?試してみよう。それと、この前、攻略できなかった最後のやつ、と嬉しそうだ。



「人使いの荒いヤツだぜ」

 長瀬も口では文句を言っても楽しそうだ。


 加藤に気がついて、「よお、県大会優勝おめでとう。二年連続だってな。大したもんだ」と、全然たいしたものだと思ってない口調で言い、ついでのように訊いた。


「お前ぇもやるか?」


「タカは、帰るんだ」

 早川が代わりに答える。


 そうか、と言いながら、長瀬はパソコンをセットしてそこにあったコードにつないだ。


 道場には、何に使うか分からないコードが何本かあって、その中の一本をパソコンにつなぎ、押入れから出してきた機械を道場の四隅において、それにも繋いで行く。



「何するんだ?」

 興味が湧いた。


 二人が顔を寄せて、もっと離した方が良いだの、もう少し、スピードをあげたら面白いだの、言い合っているのを見ても、何をするか見当もつかない。




「百聞は一見にしかずだ」

 早川が言う。


 長瀬が、「よし、できた」と、言って、四隅の機械の上についている籠にソフトテニスのボールを入れていく。その間に、早川が、道場の入り口、窓、その他の開口部を閉めていく。


「じゃあ、始めるぜ。加藤、こっちへ来たほうが良い。そこは危ない」


 加藤は言われるまま、長瀬の側に座る。


 長瀬はパソコンに手早く入力し、エンターキーを押して籠をかぶせる。


「かぶせないと万一の時、パソコンが潰れるからな」と、長瀬が笑った。





 次の瞬間、四方から、ソフトテニスのボールが飛び出した。

 

 道場の中央で、早川が四方から飛び出すソフトテニスのボールを竹刀で弾き飛ばす。


 きちんと計算されているのだろう。

 角度も、飛び出す回数も不規則だ。


 中央で、早川が必死にソフトテニスのボールをはじく。

 それでも、時々、はじけ損ねて当たる。

 「痛!」と、言いながら、必死に食い下がる。


 きっちり、三分で終わった。


「お前ぇ、七つも当たったぞ。

 手裏剣なら、とっくに死んでるぜ」


「思ったより速かったんだ。

 それに、すごくイレギュラーに出てきた」

「当たり前だ。俺が、必死で考えたんだ。お前に規則性を見破られるほど簡単じゃねえ」


「もう一回やらせて」と、早川が微笑む。


 こういうおねだりするときの彼女は、本当に可愛く見える。



 加藤の喉が干上がった。


 二人は、道場に散らばったソフトテニスのボールを拾いながら、これを自動的に集める機械だったら、なお良いのに、道場全体を機械化しない限り無理ってもんだ、と、楽しそうに言い合う。


 早川は、更に三回挑戦した。最後には、ボールが一つしか当たらなかった。


 呆然としている加藤に長瀬が誘った。、


「折角だから、お前ぇもやってみるか?レベル1、つまり初心者向けプログラムでやってみると良い」



 加藤に否やはなかった。


 やってみて驚いた。ソフトテニスのボールは予想以上に速く見える。


 頭で考えていてはついていけない。


 反射の問題なのだ。

 初心者向けと言うのに、六個も当たってしまった。

 

 ソフトテニスのボールも、当たると痛い。早川が側で心配そうに見ていた。


「大丈夫か?結構、痛いだろ?」

「もう一回させてくれ!」


 思わず叫んでいた。


「お前ぇもセイと同類だな」

 長瀬が笑った。

 



 三人で一時間ほどソフトテニスのボールと格闘していると、突然、防具を重く感じた。


「シンデレラみたいだな。時間切れだ」

 早川が言うと、長瀬が笑った。


「なんだ。お前ぇ、山本の『浮遊薬』使ってたのか?

 道理で動きが軽いはずだ。


 それじゃあ、その重いのでやってみな」


「それも、面白いかもしれない」

 早川がニコリ笑って竹刀を取った。




長瀬は、早川のやりたいことのために全面的に協力する竹馬の友なのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ