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AZ研究会は行く  作者: 椿 雅香
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果し合い(?)

 一日探したが、早川は見つからなかった。鳴海は、夜、早川に電話を掛ける。


「そうか、やっぱり連絡が付かなかったか。イッキ、悪かったな。何とかするよ。じゃあ」と、電話を切られてしまう。



 しかし、あのタイミングで『惚れ薬』の実験をするとは、どうよ。


 ほとんど八つ当たりモードで長瀬に電話をする。



「『惚れ薬』効いたぞ。野々口先生は三時間、あの調子だった。

 でな、三時間経ったら、自分が何してたか、全く覚えていなかったぜ。


 大成功だ。


 効力が二~三日続けばもっと良いんだが、それは、おいおいの課題だ。


 何?果たし状だって?セイに?

 それはそれは。


 セイは何て言ってた?


 そうか。

 セイがそう言うなら心配ない。


 子分が五十人?

 気にするな。 ご愁傷様だ。


 お前も心配性だな。大丈夫だ」





 鳴海は、頭を抱えてた。


 早川が強いらしいというのは、間違いない。


 しかし、どのぐらい強いのだろう。坂本は、柔道の県大会優勝者だと言うことだ。

 

 何キロ級か知らないが、早川より大きいのは確かだろう。


 しかも、一人とは限らない。誰か連れてくる可能性だってあるのだ。


 か弱いかどうかは別として、女一人で果たし合いに行くというのを見て見ぬ振りをすることはできない。

 腕っ節に自信のある鳴海としては、ここは、助太刀にいかねばならない。



 しかし、子分が五十人もいるとなると、一人では心許ない。

 

 ふと、思いついて、スマホを取った。

 

 

 翌日、鳴海は、9時半に北斗駅にいた。

 果たし合いが10時だから、そろそろだ。


 電車から降りた加藤が片手を上げた。



「朝早くから、すまない。俺一人じゃ、不安だった」

「長瀬はどうした?」

「大丈夫だって言ってる。確かに、セイは強いんだろうが、何せ子分が五十人だ。

「全員連れて来ることはないだろうが、いくらなんでもセイ一人じゃ、無理だろう」

「長瀬じゃ役に立たない」

 加藤が言い切った。


 

 連れだって歩き出す。

 

 場所は、西山公園だ。

 

 二人が西山公園に着くと、先客がいた長瀬と森田だ。



 長瀬が手を挙げて訊いた。


「イッキ、お前ぇも、見物に来たのか。加藤も」


 二人は、顔を見合わせた。


「見物だって?」

「そうだろう。セイが、大丈夫って言ったんなら、大丈夫なんだ。

 滅多にないことだから、見物させてもらおうぜ」

 長瀬は涼しい顔だ。


「お前、彼女がやられるかも知れないのに、そんな呑気なことでいいのか?

 桜川の坂本って、有名なんだぞ」

 加藤が食いついた。


「そうかい。俺は知らねぇ。でも、セイも有名だぜ」

 長瀬が眼を細めて笑う。


 鳴海と加藤が、長瀬を睨んだ。


 ざわざわと人が歩く音がして、坂本が来た。

 三十人ほど連れている。


 鳴海は、加藤に電話して良かった、と、つくづく思った。

 もし、電話してなかったら、坂本と早川が戦う間に、この三十人を一人で相手しなければならなかったのだ。



「坂本だ。お前が、『北斗署のレオ』か?」

「いや、北斗高の生徒会長の鳴海だ。」

「なるほど、北斗高の会長が男前だって聞いたが本当だな。成績優秀、運動神経抜群で、バスケの全国大会にまで出場したらしいな。モテモテだろう」


 男前は、坂本の天敵だ。


「いや、ウチには、レオがいるので、言うほどモテないんだ」

 鳴海がぼやくと、長瀬が笑いをかみ殺した。


「じゃあ、そっちがレオか?」


「いんや。友人の長瀬だ。こっちが、同じく森田。見物に来たらしい」

 

 坂本が、もう一人の人物に声を掛けようとして、気が付いた。


「小杉のタカじゃないか。何で、お前がここにいる?」


「レオに手出しさせたくなくてね」

 加藤の眼の光が強くなる。


「お前、レオと知り合いか?」

「そうだと言ったら?」

 冷たい殺気がほとばしる。



 そこへ軽やかな足音がして、早川が走ってきた。


「坂本くん。お久しぶり」


「会長代理の……早川?だったな」


「そうだ。実は、『北斗署のレオ』はワタシなんだ。

 申し訳ないが、ウチの師範から他流試合を止められている。諦めて帰ってくれないか?」


「お前が、『北斗署のレオ』だって?

 嘘吐くな。

 あいつは、県警本部と北斗署で剣道のみならず、柔道の師範代を務める凄腕だぞ。

 お前みたいな女のはずがないだろう?」


「やっぱり信じてくれないか」


 加藤が、「坂本、本当に、彼女がレオなんだ」と言うが、聞く耳を持たない。


「仕方がない。じゃあ、次善の策として、坂本くん、北斗署に行こう。

 金曜日は北斗署で武道の練習をするんだ。そこで練習させてもらおう。


 そうすれば、お前が、自主的に練習に参加しただけで他流試合にならない。

 だから、師範に叱られない。


 場所も広いし、クーラーも効いている。

 お客が多いと北斗署のみんなが喜ぶ。


 な、良い考えだろう?車を用意してきた」




 早川は、猫がネズミを見つけたときのような顔で笑った。


 坂本が、あんぐりと顎を落とす。


 どこが良い考えなんだ?


 早川が坂本の腕を取る。

 向こうから、警官が歩いて来て早川に敬礼して言った。


「おはようございます、師範代。

 公用車一台とのことでしたが、生憎と出払っていまして、パトカーでも良いですな」

 笑いをかみ殺している。


「おはようございます、山県さん。

 この人がお客。

 車に連れてって。ワタシは、子分さん達に道を教えてから行くから」


 坂本は、警官に連行される凶悪犯のようにして連れて行かれた。


「それじゃあ、俺達ゃパトカーに乗っけてもらえないだろうから、歩いて行くか。


 光太郎、行こうぜ」


 長瀬が歩き出すと、早川が長瀬に向かって言った。


「ヨシ、悪いけど、子分さん達も連れてってくれない?」

 

 子分達を振り返って、「歩いて15分かからないと思う。ヨシが道を知っているから、連れて来てもらって」と、言った。


 ここで、鳴海達に気が付いて言った。


「何でタカがいるんだ?

 イッキが呼んだのか?

 ま、良い。

 イッキもタカも、折角だから、一緒に来ないか?

 ヨシと一緒に来て」


 じゃあ、ヨシ、頼むな、と、手を振って走り去る。




 何がなんだか分からない。


 だから、セイが大丈夫だと言ったら大丈夫なんだ、と、長瀬が笑いながら歩き出す。


 一同、慌てて長瀬の後を追った。

 



他流試合の禁止なのに、稽古ということで有耶無耶にしてしまうところは、早川の面目躍如です。

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