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AZ研究会は行く  作者: 椿 雅香
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特定眼鏡視覚可能剤をめぐる噂

 長瀬が文化祭の出し物の計画書を書き直している頃、北斗高校では、ものすごい勢いで一つの噂が広まっていた。


 それは、理科実験室の主とも言われる変人山本が、こともあろうに、ミス北斗高校の久保女史と駅前のビックリカラオケでデュエットしたというものだった。


 

 これを聞いた鳴海が、山本の元に怒鳴り込みに行き、馬鹿な噂を広めるなと、大喧嘩しそうになった。

 その結果、その噂は信憑性が高いものとして、ますます広まってしまった。



 どうして、山本ごときが久保女史と、と、誰もが理由を知りたがった。


 そして、恐ろしいことに、山本が久保女史とデュエットできたのは、彼があの特定眼鏡視覚可能剤に関わっていたかららしい、と言う噂が駆け抜けた。



 7月20日の終業式では、校長がバスケ部の県大会優勝を言祝ぐ言葉を述べたのに、バスケ部関係者さえ、紀夫センセ以外誰一人として校長の話を聞かず、山本の噂を囁きあっていた。




 早川達は頭を抱えた。


 一難去ってまた一難だ。



「お前、もう少しやりようがなかったのか?

 

 あれじゃあ。その通りですと、公言しているようなものだ」



 項垂れる鳴海に、文句を言っても始まらない。



「次からは、吉本は誘わねぇで良い。

 あんなに口の軽いヤツだとは思わなかったぜ」

 

 長瀬も苦い顔をしている。



 どうやら、吉本は、嬉しさの余り誰彼となく吹聴して回ったらしい。


 森田は、仕方がない、それが平均的な男のやることだ、と溜息をついた。



「しかし、久保の人気は大したものだぜ。

 やっぱり、握手会で正解だ」

 長瀬が言った。


「再提出してきたのか?」と、鳴海。


「おうよ。安田先生もご満悦だったぜ。握手会に先生が来たら、1,000円カンパしてもらおう」


「それは、ヨシに任せる」

 

 早川は頭が痛い。




 更に頭が痛いことが続いた。AZに対して、発明の契約の依頼が殺到したのだ。



 山本のあの程度の発明でデュエットできるのなら、もっとスゴイ発明をしたら、久保女史とデートできるかも知れないと言う憶測が広まったのだ。



 AZ部室に、発明の概要を書いたレポート用紙の山ができた。


 長瀬が、一つ一つチェックして、①マシな計画、②ややマシな計画、③どうしようもない計画、④止めた方が良い計画の四種類に分けるが、①のマシな計画だけで二十はある。発明の資金援助する計画だったが、二十人にも資金的な援助は不可能だ。


 発明に資金援助する予定の早川は頭を抱え、そんな早川に常識人の鳴海が言った。


「仕方がない。不本意だが、発明が完成してからの付き合いとさせてもらえば良い。


 そもそも、そんなに金儲けできるような発明が転がってるはずがない」


 


 真理だった。

 早川でも反論できなかった。

 


 

 鳴海は、初めて早川に勝った。


 彼の人生において、記念すべき瞬間だった。

 久保に褒めて欲しいところだ。



 だが、次の瞬間、勝利の喜びがふっとんだ。



「じゃあ、これは、そういうことでお終い。

 ところで、特定眼鏡視覚可能剤とAZと山本の関係が噂になっているのは痛い。


 これを何とかしよう。


 今年の特定眼鏡視覚可能剤の販売は、以前の分でお終いと言うことにして、今年度中は作らないことにする」



 話が次へと移って行く。

 鳴海の勝利は遙けきかなただ。



「リョウコ、薬品の余りはなかったかな?」

「ええ、完売で在庫はありません」


「光太郎、代金引換の書類の焼却処分を頼む。

 あと、関係の書類は、裏のクラブ日誌を除き全て焼却すること」

「了解!」


 森田がピースサインを出す。



「これで、証拠はなくなる。

 じゃあ、あとは、みんなでしらばっくれよう。以上だ」



 

 何という立ち直りの早さ。



 早川の眼が光る。

 長瀬が目を細める。

 森田が唇を噛む。

 久保の瞳がキラリと輝く。


 鳴海は脱力した。



 これからが正念場だ。

 



日時   7月20日(水)1時~3時30分

出席者  早川、鳴海、長瀬、森田、久保

議題   AZに対して発明を共同で行いたいとの依頼書が山となって来てしま

    い、AZの資金力では対応できない。よって、協議の結果、発明の完成

    後付き合うことにする。

記入者  久保


7月20日(水) 午後1時~3時半


 発明協力依頼書が山ほど来た。結局、AZは、発明が完成した後、販売、特許取得、その他の支援をすることにした。

 特定眼鏡視覚可能剤にAZと山本が関わっているらしいという噂が広まっている。証拠を抹殺し、今年度中は、特定眼鏡視覚可能剤の製造及び販売はしないことにする。

 例会の後で、早川は山本を部室に呼んで、「お前のおかげで、AZは危機に曝されている。申し訳なく思っているなら、一日も早く『浮遊薬』の完成をさせて販売するんだ。それによって、周りも、カラオケ招待は、『浮遊薬』のためだったとの印象を受け、特定眼鏡視覚可能剤のことを忘れるはずだ」と、すごんだ。

 その後、山本は、必死で『浮遊薬』の開発に取り組んでいるらしい。

               (裏のクラブ日誌より)

 


とりあえず、特定眼鏡視覚可能剤と吉本の一件は片づけた。

後は野となれ山となれだ。




ヤバい薬を売ると変な(正しい)噂が流れて苦労するのです。

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