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AZ研究会は行く  作者: 椿 雅香
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AZの使い方

 まず、手近なところから小金を稼ぐのが、AZの方針だ。

 賭けの元締めはともかく、自分たちが賭けをしてリスクを犯すことは規約に反するのだ。

 

 しかし、こんなちまちました儲け方でAZと言えるのだろうか。


 自問自答する森田の横で、資金も何もないんだ、仕方ないだろ、と長瀬が答える。


 でも、もっと、泡のように儲からないと、AZとは言えないんじゃないだろうか。


 悶々とする森田だった。

 


 珍しく参加している鳴海が、机に突っ伏して、

「勝手にレンタルしやがって。

 俺は、助っ人要員なんだぞ!あれじゃ、普通の部員と変わらないだろうが!

 ものすごく疲れた。こんなのAZじゃない!」と、抗議する。


「同じく、俺も、ものすごい過密な労働だった。あれはAZじゃなく普通の労働というものだ。

 山本もバテバテだ」

 長瀬もくどいた。


「我々の慰労のために何かイベントを要求する」

 鳴海が吠えた。

 


 早川が笑って言った。


「じゃあ、今日は、AZの使い方について検討をしよう」


「散財するのか?良いな。思い切り遊ぼう!」

 鳴海が喜んだ。


「何して?」

 久保が訊く。

「飲み食いに決まってる!」

 鳴海が断言する。

「高校生の飲み食いって、マクドかミスド、あるいはケンタッキーか、お好み焼き、たこ焼き、ラーメン、餃子、あと豚まんぐらいしかないよ」

 森田が現実的な発言をする。


「そんな、夢のない。どうせなら、フレンチよ」

 久保がブーイングを飛ばす。

「俺は腹さえふくれりゃ何でもいいね」と、長瀬。


「AZなんだぞ。生活臭のない使い方を考えてくれ」

 早川が口出しする。


「生活臭があったら、駄目なのか?別に何でも良いじゃないか。要は、気分だ。ぱーっといこうぜ」 長瀬が言った。


「ヨシ、俺もお前に賛成だ。

 レンタルされて一月半。この間の苦労を察してくれ。

 久保さんがいなけりゃ、ストレスに殺されていた」

「そういうことだ。何でも良いんだ。要は、慰労になれば良い」

 長瀬が言った。


「じゃあ、定番のカラオケはどう?北斗高生御用達のビックリカラオケは平日で30分80円で歌い放題だから、この試験休みに行きましょうよ。五時間いたとしても、一人、800円。お料理が一品400円だから、一人三品ずつ取って1,200円。合計五人で6,000円だわ」

 久保が堅実な提案をする。


「悪くない。久保、デュエットしてくれるか?」

 一番大事なことを長瀬が確認した。


「そうだ。それが大問題だ。久保さん頼めるかな」

 鳴海も大乗気だ。


「良いですけど……」

 久保が答えると、早川のダメだしがあった。



「そんな平凡な使い方じゃなくて、もっと、斬新な、清く正しく美しい使い方を検討してほしいんだ」


「何だそれ?宝塚じゃあるまいし」

 長瀬が言うと、早川が本気で睨む。


「じゃあ、ボーリングはどうだい?北斗ボールなら一ゲーム500円だ。一人三ゲームして1,500円。飲み食いに一人1,000円使って2,500円。五人だから1万2,500円だ」

 

 森田の提案にも早川が首を縦に振らない。


「お前ぇ、何がしたいんだ?」

 怪訝な顔で長瀬が訊いた。



 早川は、この人にしては、珍しく謝った。


「すまない。別に対案なんかないんだ。

 ただ、何か、もっと変わった方法で使い切ってしまいたいんだ。

 確かに、ヨシやイッキの慰労を考えることは必要だと思う。

 山本にも協力してもらったし。

 しかし、こういう単純な使い方を想定してんじゃないんだ」


 

 鳴海が助け船を出した。


「分かった。セイの言うとおり、AZの本来の目的から言うと、もっと斬新な方法が望ましいのかもしれない。

 

 だったら、当面、AZの口座においておくのも悪くないだろう。


 セイは、もともとAZと協力して発明をする者に資金提供することも考えていたんだろ。

 そのための資金として口座に置いておく必要があるからな。


 しかし、それはそれとして、その前にだな。

 このところのレンタルや特定眼鏡視覚可能剤の販売に関する労働やストレスに対する慰労の意味を込めて、しかるべき対応を考えてもらっても良いんじゃないかと思うんだが……どうだろう?」




 おねだりモードの鳴海は、イケメンだけあって破壊力抜群だ。



「イッキの言うとおり、みんなには世話になった。山本にも苦労を掛けた。この際、慰労会をした方が、良いん…だろうな?」



 早川の声がだんだん小さくなって、最後に上目遣いに一同を見上げる。

 

 こういう時のこの人は、実に可愛らしく見えるから始末に負えない。


「そうしてくれるとありがたい。山本も徹夜までして協力してくれたんだ。無理強いみたいで悪いんだけどな」


 長瀬も申し訳なさそうに言った。


「長瀬くん達は大変だったんですよ。彼らの慰労を考えてあげるべきです」


 久保は、長瀬や山本の味方だ。


「俺の苦労と久保さんの努力も忘れちゃいけない」

 鳴海も、あくまでも交じりたい。


「僕だって、賭けを任されて、大変だったんだぞ」


 森田も、のけ者になる気はない。




 早川が、両手を揚げて降参した。


「じゃ、光太郎。駅前のビックリカラオケの予約を頼む。ワタシは、金曜と土曜以外ならいつでも良い。他のメンバーの都合に合わせて決めてくれ。山本はAZで招待する。

 ヨシ、あいつに連絡を頼む」

 


 これにて、一件落着。


 結局、17日の日曜日にAZの慰労会を行うこととなり、正式に山本が招待されることになった。



 このとき、鳴海から質問があった。


「ときに、前から、セイに聞きたいと思っていたんだが、バスケ部の県大会の時に賭けをやっただろ。あれって、刑法に触れないのか?確か、賭博罪ってのがあっただろ?」


「よく知ってるな。でも、あれは問題ないんだ。

 

 要は程度問題なんだ。

 

 可罰的違法性って言ってな、花盗人は、罪にならない。

 つまり、違法の程度が小さいので刑法の予定している犯罪に当たらないんだ。

 花屋で花を根こそぎ盗んだら、これは立派な窃盗罪だ。

 でも、他人の家の庭に咲く花を一輪頂く行為は、刑法の予定する犯罪に当たらない。育てた人にとっては、立派などろぼうなんだけど、そこは考えないでくれ。

 花盗人は罪にはならない。

 

 だから、高校生が可愛く一口100円賭を主催したって、程度が小さいから罪にならないんだ。

 

 第一、犯罪ってのは、逮捕されて、裁判に掛けられて、判決が下りて、初めて犯罪となるという面があるんだ。裁判が確定するまで、無罪の推定を受けるし。

 だから、この場合も、学校当局の知らないところで、ささやかな賭けをしても、発覚しなければ、そして、立証されなければ、犯罪にはならない。


 しかも、それ以前に可罰的違法性もない。

 

 だから、何の問題もないんだ。以上、証明終わり」



「ヨシ、もしかして、セイって、ものすごくいい加減な奴なのか?」


 鳴海が呆然として訊いた。


「そうだ。昔から無茶苦茶なんだ。だから、こっちも気を付けていないと振り回されるだけで馬鹿を見る」

 長瀬が薄く笑う。


「ひどいな」

 早川の抗議を聞き流して、森田が、

「ヨシは、上手に付き合っているじゃないか」と、言った。


「で、文化祭は、どうするの?そろそろ締め切りなんだけど」久保が、恐る恐る切り出す。


 この話題に触れると、早川の機嫌が悪くなるのだ。


「他に、良い考えがないんだろ?

 だったら、セイ、久保、イッキ三人の握手会で決まりだ。俺が計画書書いて出しとく」


 長瀬がさっさと、計画書の用紙を取り上げる。


「長瀬くん、提出する前に見せてくれない?」


 久保の精一杯の抵抗に、長瀬が皮肉っぽく笑って請け負った。


「久保に頼まれて断る男はいないぜ。良いぜ。どうせ、提出先は、お前だろ?」



 

 早川と鳴海は暗い表情で見詰め合った。 





日時   7月13三日(水)午後3時30分~5時

場所   歴研部室

出席者  早川、鳴海、長瀬、森田、久保

議事  ① AZの健全な使い方について検討する。

      カラオケやボーリングと言った定番の他に、もっと斬新な方法がない

     かを検討するが、特段考えが浮かばないので、今後、検討を重ねること

     とする。   

    ② 文化祭の出し物について

      早川、鳴海、久保の三人の握手会をする。

記入者 久保




早川の要請で、AZ達は、変わった使い方を模索します。

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