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AZ研究会は行く  作者: 椿 雅香
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バスケ部の県大会

 特定眼鏡視覚可能剤を生徒会連絡調整会議で大々的に販売した後なので、十校全部の生徒の中で馬鹿が出ないことを祈りつつ、期末テストを迎える。


 しかし、余所より、まずは北斗高校だ。お膝元の北斗高内でばれたら最悪だ。

 何とか、無事にテストが終わる頃には、AZ一同、二~三キロは痩せていた。


「このストレスが堪らねぇぜ」と、言ったのは、長瀬だったが、「馬鹿なことを言うな。ばれたら、そんな冗談も言えないところだぞ」と、鳴海が苦い顔で言った。

 彼は、このところのバスケ部の練習で二~三キロ痩せたところを、露見のストレスに曝され、確実に五キロは痩せている。



「俺が、鬱になったら、セイ、お前のせいだ!」

 鳴海が怒鳴った。

「そう言う科白が出る以上、お前は大丈夫だ」早川が軽く笑って、「それにな。バスケの県大会のストレスは感じないだろ?」と、眼をきらめかせる。



 言われてみれば、特定眼鏡視覚可能剤のせいで、他のことは目に入らない。


「それで良いんだ。大きなストレスがあると、他のストレスは気にならない。逆に何のストレスもない人には、些細なことが気になって、上手く対応できないんだ」

 早川が、平然と言い放つ。



 人を勝手にレンタルしておいて良い気なもんだ、と思うが、そのとおりだと思えるのも事実だ。


 つくづく嫌な奴だ。容姿が良いので、なお憎らしい。

 掌の上で踊らされているような気分になる。


 悔しいことに、横で久保が、早川のことを心底尊敬している目で見ている。


 そう言えば、久保は、毎日、紀夫センセに頼まれて、差し入れを持ってきてくれる。これには、バスケ部全員、鼻の下を長くして幸せに浸っているが、あれだって早川の差し金なのだ。

 嬉しいのだが、面白くない。



 鳴海の心は千々に乱れた。

 


 AZ一同は、痩せる思いをしたが、特定眼鏡視覚可能剤は露見しなかった。


 教師の中には、普段ぱっとしない生徒が突然高得点を取ったので、不審に思った者もいたようだが、何の証拠もない。


 学校というところは、証拠がないと不正もないと判断される。

 

 結局、平穏のうちに期末テストが終わった。

 AZは、静かな溜息とともに成功を祝った。   




 バスケの県大会は、期末直後の土曜日にあった。


 久保を始めとするAZ一同は、『優勝する』に賭けた生徒達ともに応援に駆けつけて熱心に声を上げたので、紀夫センセは生徒達の熱烈な応援に感激した。


 そうして、紀夫センセの努力と鳴海の苦労とサポーターの声援の甲斐あって、本当に優勝してしまった。



 大番狂わせだった。


 準決勝で優勝候補とぶつかったが、サポーターの必死の応援――賭けがかかっているのだ。皆、命がけだ――特に久保の黄色い声のおかげで勝ってしまったのだ。


 応援団一同、大喜びで紀夫センセの首にしがみついた。

 

 紀夫センセは久保にしがみつかれたとき、幸せを感じたようだったが、同時に居並ぶ男子一同の殺気も感じたようだった。


 先生は、そんなにバスケ部のことを気に掛けてくれていたのかと感激していたが、何のことはない、賭が400口――森田が、バスケ部員達も賭けに誘って、優勝するとお小遣いがもらえるという雰囲気にしたのだ。――しかも、最終、『優勝する』対『優勝しない』が、1対10にまでになっていたのだ。

 北斗高の生徒達の愛校心は、その程度だったのだ。


 AZとバスケ部は一体となって、優勝を目指した。


 こういう一体感は、鳴海の好きなことだった。


 しかも、両者の橋渡しをしているのは、鳴海自身だ。



 特定眼鏡視覚可能剤のおかげで県大会のストレスを感じるゆとりさえなく、優勝目指して邁進した。



 久保涼子の輝く瞳。


 それは、鳴海を賞賛するというより、賭でAZをGETしたいと言う不純な動機によるものだとしても、少なくとも、久保は鳴海を尊敬してくれている。


 そういう気持ちが恋愛感情に変わることも多々あるのだ。


 鳴海としては、この機会を利用しない手はない。



 

 北斗高校のバスケ部一同は、不純な動機を真摯に受け止め、必死に戦って、ついに優勝してしまったのだ。


 新聞の取材があったりして、ちょっぴり有名人になったようで悪い気分じゃない。

 次は全国大会だ。


 

 森田が、「AZ、GETだぜ!」と、叫んだ。




日時  7月6日(水)午後1時~2時(期末最終日のため)

場所  歴研部室

議題  バスケットボール県大会の応援について 

    7月9日(土)のバスケットボール県大会には、AZ全員参加して応援す

   る。

記入者 久保





7月6日(水) 部室にて

 バスケ部の応援について打合わせをする。当日、北斗駅、午前6時半集合。会場のK市の県立体育館に9時到着を目指す。弁当持参のこと。


7月9日(土) 県立体育館にて

 バスケ部が優勝した。

 賭の申込者で優勝するに賭けた者に男子については久保、女子については早川が電話して、6時45分発の電車に乗って応援ツアーの参加を呼びかけたところ、30人ほどの応援ツアーを組めた。

 この賭けにより、

    AZの取り分        2万円

    優勝するに賭けた者の配当   1,000円 

 

 こんなことなら、AZで優勝するに賭けたほうが儲かった。

 『優勝する』に10口賭けた中山は、1,000円払って、1万円GETしたことになる。特定眼鏡視覚可能剤も、噂に寄れば、泉川高校生徒会は、利益を上乗せして1,000円で売ったらしい。余所の方が、AZの才能があるように思える。                           (裏のクラブ日誌より)




AZは、賭けの胴元にはなっても、賭けそのものには、手をだしません。

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