イベントに向けて
長瀬と山本は、四日で12ロット作った。まさに、寝食忘れての仕事だった。
日曜日、早川がコンビニ弁当を差し入れて、「うちの製造担当は、勤勉だ」と、笑った。
長瀬は、「お前ぇの考えは、確かに効率的だが、労働者の立場ってものが分かってない。仕事がきつすぎるぜ」と、文句を言いながら弁当を食べる。
「ところで、小杉の会長とのデートはどうだった?」
長瀬が訊いた。
「加藤か?あいつ、上手くなってたぞ。一年であれだけ上達したら大したもんだ。やっぱり力が違う」
「やっぱり、道場へ行ったのか」
「他にどこに行く?」
「いんや、聞くだけ野暮と言うものだろうよ」
久保は、月曜に長瀬達に会ったが、鬼気迫る顔つきで第二ラウンドに入っていた。
鳴海は、バスケ部の練習に精を出した。
森田は、せっせと賭の申込みを募った。
生徒会が、そろそろ文化祭の出し物を計画するよう各クラブに要請を出した。
これは、早川と久保がやっている。
なにせ、鳴海は、バスケ部とAZの掛け持ちで忙しすぎるのだ。
AZ一同忙しく日を送り、6月15日の例会には特定眼鏡視覚可能剤を発送した。
無事に、梱包を終わり、宅配便の手配をして部室に戻る。
鳴海以外全員集合だ。
山本までいる。
彼は、製品の完成後、発送作業まで手伝ったのだ。
森田が、コーヒーをみんなに配る。
五人は、「ものすごく疲れたぜ」と言う長瀬の言に、「同感!」と、応じる。
山本も、ここまで来たら一蓮托生だ、先生にばれないことを祈るよ、と、心細げに言う。
早川が、大丈夫、ここまで来たら、だれも先生にチクることはできないはずだ、そんなことしたら、自分で自分の首をしめることになるから、と、やけに自信を持っている。
「セイ、あと30セット余分があるけど、どうするの?」
久保が訊いた。
「校内で追加注文があれば、適当に対応しよう。
期末には、保健体育や技術家庭科のテストもあって、需要が見込まれるだろう。
売り方は、中間のときと同じく口コミにする。それでも残ったら、次回に回せば良い」
早川は、くったくない。
じゃあ、例会を始めようかと、話題を変える。
「みんなも知ってるように、イッキは、紀夫センセにレンタルした。
多分、県大会が終わるまでになると思う。
いや、もしかして、優勝と言うことになると全国大会が終わるまでになるかも知れない。
その大会のことで光太郎に賭を頼んである。どの程度の申込みがあったか報告してもらおう」
森田から、賭の報告があった。
賭けは、『北斗高校バスケットボール部が十数年ぶりに県大会に優勝するかどうか』と言うもので一口100円だ。今のところ、一対三だ。
「思ったより愛校精神があるんだな。もっと、倍率が高いと思ってた。
少し煽ってみるか。
でも、この賭けって、バスケ部が優勝してくれないと、配当が少なくて、賭の意味がないとクレームが付きそうだ。
できれば、優勝してほしいな。
発破をかける意味で、リョウコ、君、紀夫センセに頼まれた差し入れ役を頼む」
要は、バスケ部一同のモチベーションが大事なんだ、と早川は、一人で頷いている。
最後に、文化祭の出し物の決定を迫られた。
長瀬が、「こんなに早くから決めなくても良さそうなものなのに、会長代理(鳴海会長がレンタルされているので、久保が早川を会長代理にしてしまった)は、せっかちだねぇ」と、笑うが、早川にしてみれば、鳴海を勝手にレンタルしたのだ。そのせいで、生徒会の一大イベントである文化祭が失敗すると言うのは、是非とも避けたいのだ。
「だったら、レンタルしなけりゃいいのに」と、森田が言い、きっと、鳴海もそう思っているだろう、と、長瀬は思った。
「締め切りは何時だ?」
長瀬が面倒くさそうに確認した。
「一学期中。正確には、7月20日が終業式なんだが、文化祭関係の提出物の締め切りは、終業式の後で相談して22日まで待つことにした」
「だったら、鳴海の県大会の結果も出てる。それを待って決めたら良い。あいつのいないところで、勝手に決めたら、うるせえぞ」
「確かに」と、森田が同調する。
久保も「そうね」と頷く。
「お前の話は筋が通ってる。そうしよう」
早川が溜息をついた。
誰のせいだと思ってる?お前が溜息なんかつくな!という気分だ。
日時 6月15日(水)3時半~5時
場所 歴研部室
出席者 早川、長瀬、森田、久保
議題 文化祭の出し物について検討するが、鳴海くんをバスケ部にレンタルして
しまったので、結論が出なかった。県大会終了後に鳴海くんの出席を待っ
て、決定することにした。
記入者 久保
AZ研究会では、誰かを勝手にレンタルしたり、代理にしたりしてしまいます。これを、『お互い様』言います。




