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かいどく

連続であげてます

6話目です



あの花を貰って以来、わたしは瓶に手紙はいれていない。でも、数日おきに手紙が増えていく。手紙だけでなくカードの日も、腕輪のようなものが入っていた日もあった。


瓶から溢れた手紙と花の香りに切なくなって、捨ててしまおうかとも考えたけれど、一度感じてしまった人の思いが入ったぬくもりを手放すことなどもう出来なかった。



床に落ちた手紙をしまおうと手に取ると、いつものあの文字が並んでいる。

どこか急いだような字にも見えるけれど、ひょっとして連絡が途絶えた私を心配してくれていたりするのだろうか。


ぽたり


目から涙が溢れて手紙に落ちてしまい、慌てて雫を手でサッと払う。


すると、


ふわ、と花の香りが強くなり、ぼんやりと手紙が光りを放ち出した。



なにこれ。え、特殊な紙なの?



光り終えた手紙を再度見て、呆然としていた私は目を見張った。



「うそ、うそ………っ」


『ユリ


しばらく手紙がないけれど元気にしている?会ったこともないのにおかしいかもしれないけれど、とても心配です。良ければ、また手紙をくれると嬉しい。待っています。


フェイ』


「読める…なんでっ!?」


今、わたし何をしたの?

涙を払って……


「もしかして」


大切にしまっていたこれまでの手紙をガサゴソと取り出し、手で表面を撫でる。

すると、先ほどと同じように光を帯び、文字が解読できるようになった。

なんなの?自動翻訳ってこと?魔法みたい…!


混乱する中で震えながら手紙を読み進める。


まず、初めての手紙。

『初めまして。手紙をありがとう。人からもらった瓶に突然手紙が入って驚いたけれど、あなたの言葉にとても共感しました。識別の魔法で解読はできるけれど見たことのない字だから、どうやら国か、もしくは世界自体が違ったりするのかも。でもこの不思議に感謝したいなんておかしいかな?』


2通目。

『ステキな意匠の腕輪が入っていてまた驚きました。ひょっとして間違っていれてしまった?綺麗な石も付いているけれど、これに似た石ならこちらにも魔力を込めた石を大切な人に贈るという習わしがあるよ。そういうつもりでくれたなら嬉しいけれど。』


そのあとも、向こうはわたしの手紙を解読して、それに一言一言返してくれていた。



『そちらはアキという季節があるんだね。こちらでは、年の半分ずつで季節が分かれています。寒いようだから風邪に気をつけて』



『あなたの作った料理を食べてみたいなぁ』



『どんな髪型なのか想像したら、気になって仕事が手につかない』



『お気に入りのエイガ、面白そうだね。あなたにおすすめの舞台を見せてあげたいな。きっと気にいる』






「……っう、っ………」


嗚咽が止まらない。



空っぽな瓶に手紙が届くたび、空っぽな自分が満たされた気になっていた。


わたしに向けられたわたしだけの言葉



でもそれは、所詮まやかしで。

意味もわからないのにその存在に依存するなんて馬鹿げてる。さすがにそこまで人生捨てたら天国の両親も浮かばれない。




そう思った。




のに。


信じられないくらい、本当ばかりが詰まっていた。



声を上げて泣きじゃくった。


頬を伝う涙は、とても熱く、とどまることを知らなかった。



ようやく解読に成功

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