隣の人と休み時間
さ、散々な目にあった……。なんだろう、この疲労感。い、家に帰りてぇーっ!!
勉強を教えるからと真白さんに説得され、1時間目から4時間目まで(休憩含まず)質問され続けた…。
質問内容は…勃起はどんな感じなのかとかで、もちろん却下したが……その後は、オナニーは何なのかというオナ関連の質問をされた。
正直言って…
「つ、疲れた」
「どーったん真?」
話し掛けてきたのは、いつもの俺が絡んでるクラスメイトだった。
「旭…?もしかして今は昼休み?」
「そうだけど……。ひ、昼休みがいつの間に来たって感じるほど…その、何か…あ、あったの?」
おどおどと可愛い感じで聞いてくる男の娘は、恋。
「何かある……か。お前の場合は、AVでも見れば何でも治るんじゃないの?」
冷静にとんでもないことを口に出したのは、クール系男子の零。
「ったく、俺をお前と一緒にすんなよ…」
「「「…え?」」」
「ん?はっ?!」
何で今俺「自覚無かったの?」的な態度とられてんの?!なんか隣の真白さんも微かに肩が震えてるような……。
「ん…でも、本当に何があったの?まこちゃん毎日…元気だったのに」
「恋は優しいな。大好きだっ!」
「えへへ~♪」
「うわキモっ!俺は、そういう趣味無いから、腐ってる奴等は全員敵だと見なすけど良い?」
「…零ちゃん、あんまりだよ」
「俺らも、んな趣味は無いんだがな…」
「おい真、話戻せよ……脱線しとるがな…ふっ」
旭が腹を押さえ笑いを堪えながら、俺に言った。
えっと…俺が元気無い理由だったよな。
「……なぁ皆、何も知らない優等生JKがいたらどうする?何も知らないってのは性的関係のことな」
「犯す?」
「旭ってバカなの?その前にやることがあるじゃん」
「ん~あっ!……確かに零ちゃんの言うとおりだね♪」
零の言った意味が分かった恋は、手を一回叩いて不適(?)な笑みを浮かべた。……と思ったら旭も「あ~!あったな」と言ってニヤニヤと気持ち悪い顔になった。
……ってことはだ。
「え?ひょっとして…分かんないの俺だけ?」
「はぁ~、ホントに分かんないんだ」
「うっ……」
「いつもなら一番早く察してる、まこちゃんが…へへっ」
くそっ!恋よりは上でいたかったのに…。
と、三人は顔を見合って息を吸い…
「「「まずは、調教が先でしょ」」」
「……ぁ。っじゃなくて!!なんでそうなる?!」
つい、納得しちゃったじゃんかっ!!
なんせ相手は真白さんだから、んなこと考える思考は無かった…。
「んー、逆に何で思い付かなかったのか疑問だぞ?」
「気づくの遅い旭には言われたくないかもだけど、それは同感だね」
「僕も僕も~♪」
「んじゃ、仮に相手が冷徹女でも?」
まぁ、今じゃ俺にとっては冷徹女では無いが。
「萌えるじゃん」
「そこでいろんなことを教えられて~、恥ずかしいことに気づいたその娘の顔とか考えただけで……ぞくぞくするよ♪」
「「「……。」」」
恋って、実は…この中で一番Sじゃないかと思う。
「まぁ…一理あるな」
「まこちゃん、やっぱり僕と気が合う!」
若干、旭と零が引いているのは気のせいだろうか?
「でも元気ない理由ってそれ?」
「………んなわけないだろ?」
相談したい気持ちを抑え、笑いながら悟られないように答えた。
「「だよな(ね)~」」
「……」
なんだろう。納得してくれたことには、嬉しいのだが……やるせないな。
「あ!あっちゃん、僕喉乾いちゃった♪」
恋が旭の袖を掴みながら自販機の場所に行こうと促した。くそっ、可愛すぎるだろ!
「今日は恋がおごる約束だけど?」
お前ら、飲み物ごときに奢る順番とか決めてんじゃねぇよ…。
「うぅ……。わかってるよ~だ!あっちゃんのいじわる…。零ちゃん、まこちゃん僕たち飲み物飲みに行くから、またね♪」
「「おう」」
旭と恋が見えなくなると、零が小声で話しかけてきた。
「…なぁ」
「ん?」
「真が言ってる冷徹女って小雪のこと?」
「なっ!」
俺が動揺を見せると零が「真…よく聞けよ?」と真面目な顔で言ってきた。
「いいか?…小雪はやめとけ」
「?……どういう意味だ?」
「まんまの意味だよ。それに…今、婚約の話が進められてるって噂があるし」
今の時代でも婚約の話とかあるんだな。でも俺には関係ない話だし……。
「要は…、利用されてる可能性もあるってことだよ」
「…ただの噂だろ」
「ばっ!お前なぁ…。ったく、噂でも一応頭にいれとけよな」
頭をガシガシとかきながら、ため息混じりに言った。
心配してくれてるんだな。わかりづらいけど、零はこう見えて優しい。
「…ま、真白さんは利用とか、そんなことする人じゃないから大丈夫だよ。きっと」
「…真、なんで必死に小雪をかばってんの…?」
必死に…?昨日今日の仲なのに、なんで俺…こんなこと言ってんだ?
じ、自分でもわかんねぇ。
「あっ…えっと。それは…」
「まぁ、とにかく気をつけろよ。名前呼びとか……、相手のペースに呑まれないようにな」
そう言ってコツンと拳を俺の額にぶつけ、自分の席に戻った。
―このとき、俺は知らなかった。経験もなく子供な俺は、二度とは戻れない関係になるということを。
零の言葉の重みを知るのは、まだ少し先のこと。
~♪
チャイムが鳴り響く。俺にとっては、真白さんとの時間が始まる音。
「ねぇ、真くん」
「こ、今度はなんですか…」
「…私の、家に来て?」
「はいはい。……え?」
今の言葉に、クエスチョンマークだらけになる俺氏。
「なによ。硬直するほど私の家に来たくはない理由でもあるのかしら」
「…いえ、そういう意味ではなくてですね?あの…」
「なら良いでしょう?私は有言実行という言葉をモットーに過ごしているの。言った言葉には、ちゃんと責任を持っているわ」
「……勉強を教えてくれるのか?」
「当たり前じゃない」
嘘だと…冗談だと思っていた。本当だったんだ。
「…こ、来れない理由でもあるの?」
「あ、いや…」
「?」
「喜んで行くよ。楽しみだ」
満面の笑みで答えると、彼女の表情は先程とは違う緊張した顔だった。
「っ…。そ、そう。借りはつくりたくない主義なのよ私は!だ、だからっ」
「はいはい」
なんか、慌て話してる彼女が可愛らしく感じる。
「じゃあ、放課後…下駄箱で待っているわ」
「了解です」
ほんの少しだけ彼女は、笑った気がする。今まで誰にも見せなかっただろう表情を俺は、見逃したのだろうか。
隣の人と休み時間、俺は産まれて初めて女子の家に行く約束をしました。