隣の人と自己紹介。
翌日の朝休み。
俺は、たまたま早く学校に着いた……同時に隣のお嬢様も着いたらしい。
「あら、今日は早く着いたのね?」
いつも早い小雪さんは、俺を見るなり少し驚いた感じで言った。正直、ここまで早く来たのは初めてだし、自分でも驚いている。
「あ、ああ。小雪さんはいつも早いんだっけ。この時間に来てるのか?」
「ご名答。褒めてさしあげます」
正直に言おう。ここで褒められても嬉しくないんだが……、この場合の返答を誰か教えてください。
「クラスには誰もいない事ですし、あと20分くらい話しても大丈夫でしょう。そうですね……自己紹介でもしましょうか」
2人きりでないと話してはダメだという暗黙のルールがあることを彼女は俺に遠回しに告げた。まぁ、遠回しに言わなくてもそうする。てか、しないと俺が死んでしまいます!
自己紹介か。クラスではやったが、何度やっても慣れないんだよなコレ。緊張するって言うか…。ま、ここは男から名乗らないと女性に失礼だし、俺が先…ですよね。さっきから小雪さんがずっと無言でこっち見てるし。
「……。山野真です。」
「真実を教えてくれる、あなたにピッタリの名前ね」
「あ、あはは…」
「真ね…。まこと、真」
一瞬、嫌味かと思ったが真面目に俺の名前を覚えてる姿は可愛く感じた。
「私は、小雪真白」
名前の通りに、真っ白…いや、なにも知らないってところはピッタリだな。って言ったらキレますよね…ハイ。
「んじゃ、小雪さん」
「小雪じゃなくて真白」
「…名前で呼べと?」
「当たり前じゃない。私もあなたも、その名前をつけてもらって呼ばないだなんて勿体無いわ」
別に勿体無いとは思わないが…言いたいことは理解できるし、否定する理由もないので従うけど…。
「……ま、真白、さん」
「…まぁ良いわ。“さん”付けも悪くは無いものだもの…うん」
「…?」
俺に呼び捨てにされたかったのか?まさかな。
それに彼女の耳が赤く染まってる気がするのは気のせいだろうか…。
「ところで真。まだ時間はあるわ。昨日の質問の続きをしましょう」
「はい?まだ質問がある…のか?」
「ええ、そうよ。当たり前じゃない、知らないのだもの。その…あなたは、なぜそのような事を知っているのかしら?」
「……逆に、何故この歳になって知らないのか聞きたいんだが」
「し、知る必要が無かったからじゃないっ……そ、それじゃ理由にならない?」
…ぐむ。正論なんだが、疑問がすごくでてくるっ!
というか、知る必要…って。
避けては通れぬ道だと思うが…、お嬢様や女だったら話が別なのだろうか?
でも、女だったら尚更…知らないといけないんじゃないのか?
「……、子どもを産むためとかで知らなきゃいけないだろ?」
「そう…なの?」
いや、「そうなの?」って言われても…。
「産み方の過程って知らない…のか?」
「バカにしないでちょうだい。私は首席よ」
だよな!さすがにわかってるよな!あはは!!
…でも、首席は関係無いし、心をえぐる言葉だな。
「産むのには…皆、遺伝子組み換えとか科学者に頼んで女性の体内に…」
やっぱ分かってなかったぁぁあ!!
「…できても一般人には難しいかな?!」
「なぜ?可能だわ」
可能じゃないし、首を傾げるんじゃないっ!!
このお嬢様…金は沸くものだと思ってないか?
「いや、金銭的に不可能ですよ?!周りを考えろよ!」
「…なるほど、そうね。不覚だったわ」
ダメだ、このお嬢様は…。世界は何で回っているのか聞いてみたいな…きっと予想を上回る回答がくるはずだ。
「……そうね」
「?」
なにが分かったんだ?い、嫌な予感がする……。
「私、将来の為に勉強するわ!」
「ん?」
「一緒に学び合いましょう!」
何を言ってんだ、このお嬢様は……。
「オッシャッテイルイミガワカラナイノデスガ…」
「私は、将来の家庭的な面の為に、貴方が知っている知識を学ぶ。貴方は、苦手な勉強を将来の社会的な面の為に、私が解りやすく教えて学ぶ。」
「つまりは…、お互いに教え合う授業的なのをする。お互いに必要な知識を学び合うということか?」
「そうよ。理解が早くて助かるわ。」
彼女は、「ふふんっ」と鼻を鳴らし自慢気に微笑んだ。
「ちなみに、俺の選択肢は?」
「はいか、YESか喜んでよ」
に、逃げ場を探そうか。
「……ば、場所がないだろ?」
「授業中はバレないわ」
「それだけじゃ時間が足りない!」
「そうね…、私の家の部屋を提供するわ」
とんでもない回答がキタァァァア!!
「はぁ?!女が親しくもない男を、自分の家に呼ぶなよ!!」
「なぜ?私が家に呼ぶ時点で親しい仲でしょう?」
おい、さらっと言うことじゃないだろ。
おかげで言葉が出ないんですけどっ!!
俺は断言する!このままだと、このお嬢様はいつか絶対に喰われる…!
知ったこっちゃ無いが、どのみち俺には断る理由が無いから…こう言うしかない。というか疲れるのでこうします。
「…分かった」
こうして俺達は、学び合う(?)ことになった。
「よろしく真」
「こちらこそy……?」
俺が「こちらこそ、よろしく」と言おうとしたら、お嬢様こと真白さんは、そっぽを向いていた。
話の途中じゃ…と思ったがクラスメートや廊下に人が来始めた為、会話が強制終了したと分かった。
「真白さんって、理不尽だよな……うっ」
さ、ささ寒気が…と思ったら睨まれていた。鬼のような目で真白さんに…。
彼女は、謎に包まれている。逆らうことは許されないお嬢様だ。
俺は一体これから、どうなるのだろうか。
――***――
♪キーンコーンカーンコーン
授業が始まるチャイムが鳴った。クラスも賑やかで誰が喋っても、ある程度の声量なら許される。
「真……教えて」
「ググってください!俺は数学が一番苦手なんです!この数学の授業だけはダメです!!」
「あら、勉強なら私が教えてあげると言ったじゃない。テストの点数が上がる保証を特別にしてあげるわ。それに、授業にも遅れないように教えてあげるから。これで貴方は、授業を受けなくても大丈夫。ま、どうしても受けたいならBGMのように聞いときなさい」
「……。」
いや、どんな聞き方それ?!
でも、テストの点数が上がるという保証付きの、おいしい話……!
「…交換条件を忘れたとは言わせないわよ」
「うぐっ、理不尽だ。何が知りたいんですか……?」
生憎、約束など破れない俺は彼女の言うことを聞かなければならない。
「そうね…」
1つの質問から始まった、この逃げ場のない会話。
はぁ…、隣の人が理不尽な件について
今回も読んでいただき、ありがとうございます!!
さぁ、真白さんワールドがこれから始まっていき…真くんがドタバタな毎日を送ることになっていきますね(笑)
ここらへんをこうしたほうが良いのではなどがありましたら、言って頂けると光栄です。