隣の人と授業中。
これは、何も知らない首席お嬢様が隣の男の子にいろいろ教えてもらうといった話です。と言っても男の子と女の子が猥談とかいろいろしちゃう話です!
俺のいるクラスは、授業中でも賑やかだ。誰が何を喋っても気づかれない、そんな空気がある。だから、彼女は俺に話し掛けたのだろう。
「…ねぇ」
彼女は、ちょんちょんと可愛い効果音がつきそうな感じで、俺の袖を引っ張り声をかけた。
俺は、彼女の次の言葉を待った。今になると後悔するような言葉を待った。
「ねぇ…、勃起ってなに?」
それが、彼女が俺に初めて話し掛けた言葉だった。
はい?!?!!??
い、いいい今のは聞き間違えってやつだよな?授業中に、そんな言葉を発するやつがいるわけねえもんな!
「……んと、もっかい言ってもらえる?」
「“ぼっき”って、どういう意味かしら?」
へぇ~、高校生でも知らないやついるんだなぁ…じゃなくてっ!!
なんでそれを今聞く?!ググれよ!
思春期真っ盛りの男子高校生に聞くことじゃないぞ?!新手の嫌がらせかよ!!
「えっと…ググったら?」
「え?今は授業中よ?スマホの使用は許されないわ」
だ・か・ら、そういう意味じゃないだろっ!!
んなことは、誰でもわかるし!なんで逆に俺が「なにこの人…、バカなの?」って顔されなきゃいけねえんだよっ!!
「あのな…、後でって意味であってだな…」
「だから、あなたに聞いてるんじゃないの。私は、その言葉を知りたいだけなの。今教えなければ、テストの点数に響くわ」
「いや…、だから…」
いや、知らねぇよ!盛大にツッコミたいが我慢しろ俺。てか、点数に響いても俺は困んないんだけど、なんで脅迫っぽく言うのだろうか。ツッコむべきなのだろうか…否か。
「教えれば良いだけの話じゃないの?あなたは、意味を答えられないことを休み時間に話していたの?」
それかー!原因それかーっ!!だよね、女子は普段そんなことを親しい仲以外には言わないよな?!わかんないけどっ!
なに?休み時間に、猥談とか話すなって遠回しの注意ですか?
よりにもよって、冷徹女に知られたのは不覚だったが仕方がない、あいつらの名誉の為にも謝らなければいけない。小雪さんも女子なワケだし、不快になったかもしれないしな。というかそうなんだろうけど…。
「ご、ごめんなさい…。もう、休み時間には…話さないから」
「なぜそうなるの?」
なぜ?なぜって言ったのか…?
……ん?待てよ、とすると…本当に―?
「本当に知らないのか?」
「知らないから聞いているんじゃないの。何を言ってるの?」
わぁい。無知なお嬢様だなんて、良い設定じゃないですかヤダー…。
じゃなくてっ!!
はぁ…。もう、俺は知らない!!聞いたやつが悪いんだ!
「わかった!教えてやる。そのかわり、今から言うのは一般常識のことだからな?あくまで俺個人の考えではないことを踏まえた上で聞けよ?」
「…え、ええ。当たり前のことを言わずに、さっさと答えなさい」
くっそ…この女、上から目線にも程があるだろ!
「ゴホンっ。勃起というのはだな…。生理現象とかでだな」
「なるほど…女子でいう生理みたいな感じなのね」
バカなのか?いや、知らないから言えるのか。純粋って良いよな。
「…………うん、そんな一定期間にくるみたいなものではないんだ。つまり、興奮したりとか、いつの間に的な感じで…その、なんというか…」
「……?なによ、はっきり言いなさい」
頷きながら聞かれると…困るんだよな。ってか、なんで授業中にこんなのを話さなきゃいけねえんだ俺はっ!!
「だぁーもう!だ…男性器が硬くなって大きくなんのっ!分かったなら授業に集中しなさいっ」
い、言い切った。誰か…俺を褒めてくれ。そして、最後のオカンみたいなセリフには触れないでください…。
「…お、大きくなって…硬くなるの?!」
気になるトコそこかよっ?!
「し、知らなかったのか…?」
「ええ。教育上は全く教えられなかったわね。それに、喋る人など私にはいないから………と、友達が欲し…」
「ん?」
「い、いえ。なんでもないわ」
俺の話には顔を赤くならずに、ここでは赤くなるのか。
…というか、お嬢様だな。言葉といい、なんというか全てがって当たり前か。
「…で?なぜゆえ俺なんだ?」
旭や恋、零に聞いても良かったはずだ。なにも俺じゃなくたってな。
「休み時間中に、意味のわからない単語を発していたから…これを機に教えてもらい……ゆ、ゆくゆくは喋り相手…にしたいとかではなくっ!ただんに平凡で口が固いと思ったからです」
ええ…。ひどくね?いくらお嬢様だからって、さすがに傷つくよっ!かっこに涙とかTT書き込むレベルだよ!?俺のHPがどんどん減ってくよ!
「あ、でも昼休みだと皆が面白がって私達の話を聞くと思うから、話し掛けやすい今にしたのよ」
その判断は正しい。いろんな意味で。
ま、彼女は必要最低限誰とも話さないから、彼女が誰かと話している姿は珍しいわけで…。
「…あ、そこ間違っているわよ」
イキナリ言われたので戸惑ったが、どうやらノートに書いてある俺の解答が間違っているらしい。
「え?嘘っ!自信あったのに……」
「あなたって…、勉強苦手なの?」
「ぐはっ!わ、悪いか?だかな…そもそもの話、得意なやつは少ないはずだ!」
呆れた顔で言わないでよっ!おかげで論破される言葉を出してしまった…。
「人間だもの得意、不得意は付き物よ。そこにとやかく言うつもりは無いのだけれど……。その、もし良かったら、ね?良ければの話なんだけど…。」
「な、なんだ?」
急に耳まで赤くして俯き始めたぞ?思春期男子が期待しかねない仕草だが…、断じて俺は期待なんか、期待なんかっ!!
「ぇと…もし宜しければ、私が教えましょうか?べ、別に上から目線なつもりでもなくて…その。貴方を教えたいから…といことでもなくっ!普通に先程のお返しで…!」
「…………はい?」
おいおい、どんな展開だよコレ。初めて話した隣の人に、こんな期待してたようなリア充展開キタコレっ!
じゃなくてっ!えっと…罰ゲーム的な存在が隠れてたりとかしないかな?ほら、小雪さん美人だし。
「そ、それで…私があなたに勉強を教える代わりに、あなたは私に今のような分からぬ単語の意味を教えなさい!」
…え?なんで、「私良いこと思いついた」みたいにドヤってんだ?!期待してた方向か反れ始めてきたましたよ?
「も、文句は無いでしょ?」
ちょっ、まっ!か、彼女は首席と評判だから、勉強を教えてもらえるのは良いことだ。がしかし…そのかわりにエロい単語とかを教えろ…だと?!無理無理ムリムリ!!
俺がフリ過ぎる!可哀想過ぎるだろ!!
「い、いやそれは、ちょっと……」
「では、決まり。お互いに得しか無い条件とは良いものよね」
待って!?なんでもう決まってる感じなの?!
俺の方が得少なくねっ?!精神的にキツいんですけど?!俺がっ!なに解決した感じに収めようとしてませんか?!
「い、いやいやいやいや!俺に選択権は無いわけ?!」
「まったく…仕方無いわね」
「なんで俺がワガママ言ってるみたいな言い方すんの?!」
「わ、分かったわ。その代わり授業中だから少し静かにして下さい」
誰のせいだよ!というか、授業中に思春期真っ盛りな男子にあんな事を聞かないで下さい!!って言いたいよぉぉお!
「選択権をあげるわ。」
彼女はそう言うと、小さなメモ帳を取り出し、綺麗に一枚破り…何かを書き始めた。
ま、どうせ断るから何でも良いんだけどな。
「はい」
「……ん?」
書き終わった彼女は、その紙を俺に手渡しした。
…何て書いてあるのかな。
「1、はい。2、YES。3、喜んで…」
「特別に、3つ選択できるようにしたわ」
「いや、これ同じ意味しか無いんですけどっ!??」
とまぁ、こんな感じでツッコミをいれた俺は当然、先生に怒られた。
もちろん、彼女との交換条件を呑むことにもなった。
……俺は、一体どうなるのだろうか。
ここで、気になるのは俺の体力と精神だよなぁ…。 ところでさ、隣の人が本当に何も知らなさすぎるよな?どうやって、今まで生きてきたんだろう…。男子だけか?避けては通れないのって…。