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くぅぅ~

活動報告にキャラクターデザインや書籍版冒頭をRPGツクールで再現するゲーム企画の開発状況をアップしていますので、よろしければそちらも合わせてご覧ください。

「くぅぅ~」

「ふぅ~。いい湯だな……」

「ええ……」


 三人並んで湯船につかっていた。


「お城にもお風呂ってあるんですか」

「あるにはあるが湯船には入れないのだ」


 お城のお風呂は蒸気を利用するサウナのような形式なのだそうだ。


「シライト様、兄貴。風呂からあがったら二階へ行こう」


 それは単に二階からお風呂場を覗きたいだけなのではなかろうか。

 そいう道に白糸様を引き込むのはどうかなあと思わないでもない。ないけど、白糸様がどういう反応をするか見てみたい気持ちもあった。


「そのような場所があるのか。それなら私も行ってみたい」


 ご本人も前向きなようだしね。

 この件については誰も悪くない。


 湯船から出て洗い場で体を洗ってから二階へあがることにする。


「お菓子を三つもらえますか」


 受け取ったお菓子はたっぷりの小豆餡をまぶしたぼたもちだった。これは美味しそうだ。


「どうぞ。お茶とお菓子です」

「これはありがたい」

「うん、美味いな。兄貴、ごちそうさま! じゃあ、窓際に行こうぜ!」


 一口でぼたもちを平らげた不動に続いて窓際へと向かう。


「ほう、入ってくる風が気持ちいいな」

「そうですね」


 不動は胸元を開けてパタパタさせている。

 僕は窓から体を乗り出して、外を確認をしてからひらりと手を振った。


「シライト様、見てくださいよ。ここからお城が見えますよ」

「おお、本当だ。あそこからでは皆の顔はわからんが、ここからならよくわかる」


 仕事が終わって家路に着く人や買い物をする人たちが通りを歩いている。


「そしてここには実にさまざまな者がいるのだな」


 部屋を見渡しながら感心するように白糸様が呟く。

 銭湯の二階には町人だけではなく下級の武士もいる。

 町人と武士が同じ場所で談笑をしているのは、お城で生活をしている白糸様にとっては不思議な光景なのかもしれない。


「身分の違いもなく、こうして一所に集まり話をしたり遊びに興じたりできるのは素晴らしいことだと思う」


 白糸様の瞳が心なしか輝いているように見えた。


「せっかくですから白糸様も話をしてきたらどうです」


 困ったような顔をして白糸様が笑う。


「それができればいいのだが私にはそのような度胸はないようだ。ここにいる者たちが私の顔を知っているとは思わないが、私の方が気にしてしまう」


 何事も一度ですべてする必要はない。一つずつやっていけばいいのだ。

 不動はキョロキョロと部屋を見渡している。


「どうしたの?」

「いや、昨日の兄ちゃんがいないなと思って。かなり鍛えていたから、どこかで手合わせができたらなと」


 もしかしてケンカでもするつもりなのか。鬼のケンカとか洒落では済まなそうだけど。

 せめて回復役として澪に立ち合いをしてもらう必要があるだろう。


「今日はいないみたいだな。仕方がない。じゃあ、あそこへ行きますか」

「どこへだ?」


 困惑する白糸様。

 不動は口元を緩ませてある場所を指差す。


「あそこですよ。シライト様にいいものを見せてあげます」

「ほう、それは楽しみだ」


 二人は例の窓枠を確保する。仕方がないので僕も付き合うことにした。

 これはなんというか保護者的な行動であって下心があるわけではない。ないったらない。


「いきますよ。すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


 不動は胸を膨らませて息を吸い込んでから、勢いよく吐き出した。


「おおおおおお! こ、これは……」


 湯気が吹き払われて下の様子が見えるようになる。


「どうですか!」

「すごいぞ、フドウ。下が丸見えではないか」

「俺が本気になればこんなものですよ!」

「見よ。あそこの娘、なかなかいいものを持っているぞっ」

「ど、どれですか!?」


 なんだろう、この二人。すごく仲がいい。

 さっきからの会話は初めてエロ動画を見た中学生みたいでとても微笑ましい。

 やっていることはただの覗きなんだけども。

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