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キヨマサさま、おはよーございます!

このお話から完全新規部分となります。

「キヨマサさま、おはよーございます!」


 元気のいい翠寿の声にぱちりと目が覚めた。

 しかし声の聞こえてきた方向に違和感がある。ゆっくりと頭を巡らせると翠寿の姿が目に入った。


「おはよう。なんでそっちから入ってくるの?」


 翠寿が顔を出したのは奥の襖ではなく、部屋の入口からだった。


「えっと、紅おねーちゃんのおふとんでねてました!」


 昨夜は紅寿を起こしに行ってもらったんだった。眠気に勝てず、そのままお姉ちゃんの布団で寝ちゃったのか。

 寝ていたところ起こしてしまったのだから仕方がない。


「今日はどうされますか」

「城下町まで行こうと思ってるんだ。翠寿にも一緒に行ってもらっていいかな」

「もちろんです! じゃあ、葵の君さまの準備をしてきますね」


 枕元にあった着替えを手に取ると扉をノックする音がした。


「どうぞ」


 すーと音もなく扉が開く。

 そこには正座をしたまま頭を下げている澪がいる。


「今日はちょっと付き合ってもらいたい場所が……どうしたの?」


 問いかけても澪は頭を下げたままだ。まるで土下座をしているように見える。

 っていうか、これは間違いなく土下座だ。


「あのっ。そ、その……昨夜は申し訳ありませんでした!」

「なんのこと?」

「えっと、また酔っぱらっちゃったみたいで……」


 おずおずと頭を上げる。

 顔どころか耳まで真っ赤になっていた。


「昨夜のこと覚えてる?」

「……あんまり」


 だろうなあ。へべれけだったし。

 とはいえ、見ていてこちらも楽しくなる酔い方をしているなあとは思っていたんだけど。


「……もしかして、酔っぱらっちゃってた?」

「はい」

「……………………あちゃー」


 ゴンと音を立てて澪のおでこが床につく。


「昨夜こと、覚えてないんだ」

「……三人で居酒屋に入って、お酒を注文して、お任せで料理を注文したよね」

「うん。そこまではあってる」

「それで、もう一本、お酒を頼んじゃった……り?」

「なんで疑問形なんだよ」

「実はそのあたりから記憶が曖昧なの……」


 それって半分ぐらい記憶なくしてるってことじゃないですかー。


「酔っぱらってキヨマサ君に絡んじゃったり、ヘンなこと言ってなかった?」

「機嫌は良さそうだったし、絡まれたとは思わなかったよ。むしろ楽しいお酒だった。それに変なことは言ってなかったんじゃないかな。澪の住んでたところは美味しいお酒を造っているから今度飲みにおいでって誘われたぐらいで」

「そ、そうなんだ……よかったぁ」


 ようやく笑顔が戻っていた。


「もしかしてさ、澪ってお酒での失敗が多い人?」

「――ドキッ」

「いや、わざわざ口で言わなくてもいいから」


 僕のツッコミも余計だなとは思うけど。


「お酒は好きなんだけどね、量があんまり飲めなくて……でも大好きだからついつい飲みすぎちゃって、いつも失敗しちゃうの。実はね、今もちょっと頭が痛かったり……」


 こめかみのあたりを押さえている。


「それは間違いなく二日酔いだね、お酒を飲むときは飲んだお酒と同じぐらいの量の水を飲むといいよ。あと、飲む前に少しお腹に入れておくのもいいかな。悪酔いしなくなるから」

「へぇ、そうなんだ。じゃあ、今度はそうしてみる」


 いつの間にか座り込んだ澪の背後に紅寿が立っていた。

 正座したままのご主人を、なんとも表現の難しい表情で見下ろしている。


「澪っていつもあんな風に酔っぱらうの?」

「そそそんなことないから! 酔いつぶれたりするのは二回に一回ぐらいしかないから!」


 それ、半分の確率でアウトってことだよね?


「それに地元だったらみんな私のこと知ってるし、だから特別に部屋の隅で寝かしたままにしておいたりしてくれてたからっ」


 それって放置されていたってことじゃないの?


「こっちに来てからはあんまり飲まないようにしてるの。だって外で飲むと高くついちゃうし。初めてのときはここでもこんなにおいしいお酒が飲めるんだって思ってちょっと感動して、ついつい飲みすぎちゃって……」

「酔いつぶれる、と」

「……はい」


 澪は首を垂れて反省のポーズ。


「いつもはコウジュたちが部屋まで運んでくれたの。だから同じ失敗はあれから……十回、くらい……?」


 澪の背後に立つ紅寿が首を横に振る。


「に、二十回?」


 再び首を横に振った。


「さん、じゅっ……」


 小さくため息をついたのが聞こえる気がした。


「……ごめんね。だ、だから、なるべく外で飲まないようにしてたんだけど、昨日はキヨマサ君にあのお店を紹介したくて、お酒も食べ物も美味しいって喜んでもらえて嬉しくてそれで……」

「また飲みすぎてしまった、と」

「…………はい」


 再び澪は地面に右手を置いて反省のポーズをした。


「準備できましたー!」


 落ち込む澪の雰囲気を吹き飛ばすような元気な声で翠寿が奥の襖を開ける。


「主様、今日はお出かけの予定があるのだとか」


 葵も着替えを終えていて、すぐにでも出発できる状態だ。


「キヨマサ君、どこかに行くの?」

「茅葺さんからお使いを頼まれててね。その下準備をするために城下町へ行くつもりなんだ。二日酔いがひどくないのなら澪にも付き合ってもらいたいんだけど」

「うん、もちろんだよ」


活動報告にキャラクターデザインや書籍版冒頭をRPGツクールで再現するゲーム企画の開発状況をアップしていますので、よろしければそちらも合わせてご覧ください。

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