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拗ねるなよな、もう

20191101改稿。

 拗ねるなよな、もう。

 もっとも、こういうのは失敗をしながら覚えていくものだからクドクドは言わないさ。かくいう僕も酒の席での失敗談には事欠かないんだし。


「んくんく……ぷはぁ。あー、お水もおいしー」

「お酒を飲むときは一緒に水分を取るといいんだよ」

「へぇー、そうなんだ。キヨマサ君はなんでも知ってるんだねぇ。火打ち石の使い方は知らないのにぃ。んへへへ」


 悪かったな。

 タバコを吸わないからマッチだってまともに扱う自信がないぞ。だって墓参りで線香をつけるときぐらいにしか使ったことがないからな。


「私のほうがキヨマサ君よりも年上なのにねぇ。もっと頑張らないとなぁ。自分では頑張ってるつもりなんだけど、世の中ままならないよねぇ……はぁぁ」

「別に頑張らないでもいいと思うけど。できることをしっかりやればね」

「そのできることっていうのがキヨマサ君の方が私よりもずっとすごいから落ち込んでるんじゃない」

「落ち込んでるの?」

「うん、たぶんね。私には機巧姫がいないからなのかなぁ。それなら水縹が直ってくれて、私を連れ合いとして認めてくれたらキヨマサ君と同じ条件になれるってこと? そういうものなのかなぁ。嫌な人相手に文句のひとつも言えないっていうのに……情けないよ」

「でもさ、僕は動けなかったところを澪に助けてもらったからね。澪は僕にできないことができるんだよ。あとこの町にも連れてきてくれたし、お城では国王様に一緒に会ってくれたし、操心館を案内もしてくれた。すごく助かってる」

「ふーん……そうなんだぁ。キヨマサ君も助かってるんだ……よかった。えへへ」

「ほら、お水も飲んで」

「ん。ンくンく……ふぅ。あー、今日はなんだか暑いよねー」


 とか言いながら胸のとこを持って上着をパタパタしない。周囲の目もあるんだから。


「ところでぇ、キヨマサ君ってさぁ……あのこと、本気なのぉ~?」


 いきなりしな垂れかかってきたきたかと思うと、トロンとした上目遣いで見つめられる。触れている肌が熱い。


「あのことってなんの話?」

「えー、そういう態度とるんだぁ。ふーんだ」

「別に誤魔化すつもりはないんだけど、どの話をしてるの?」

「ふーんふーんふーん。そうなんだー。まぁ、別にいいんですけどぉ。そういうつもりはないんだろうなってわかってたしね。残念とか思ってないし。本当に。本当よぉ? でもさぁ、あんなことされたらさぁ、女の子としてぇ、ちょっとドキっとしたっていうか、本気にしちゃいたいなーって思ったりして。うふふー、いいけどねぇ。うん、夢ぐらい見たっていいよねぇ……」


 何が言いたいのかさっぱりわからない。

 どうせ酔っ払いの言うことだ。本人だって何を言っているかわかっていないのだろう。

 酔っぱらってグデグデしている澪の相手をしているのはそれなりに楽しいけど、あまり長居をして店の迷惑になってもいけない。


「ほら、そろそろ帰るよ。支払いはすませておいたから」

「えぇ~。ここは私が払うよぉ。おねーさんなんだし、任せておきなさいって。たしかここにお財布が……あれ? あれれ? 入ってない?」

「財布はもういいって。支払い終わってるんだから。ほら、店を出るよ。自分の足で立つ。無理なら肩を貸すから」

「いいけどぉ、次のお店は決まってるのぉ~」

「次の店はない。操心館に帰るんだよ」

「えぇー、まだ飲んでもいいでしょぉ。飲んでいこうよぉ~」


 駄目だ、この酔っ払い。

 立たせたら生まれたての小鹿かってぐらいグラグラしているし。


「しょうがない。ほら、腕を僕の首に回して。持ち上げるからな。よっと」

「わぁ、な、なにするのぉ。びっくりするじゃない。ふあー、浮いてるみたい。ふわふわしてるぅ~」


 軽々と澪を抱き上げる。ちっとも重いと思わなかった。我ながらこんなに腕力があったのかと驚くほどだ。

 不動との力比べでも思ったけど、今の僕はかなりの身体能力を持っている。

 周囲の視線はあえて無視する。顔が赤いのは酔っているせいだ。


「じゃあねぇ~。またくるからねぇ」


 こんなに酔っぱらって周囲に迷惑をかけておいて、また来るつもりなのかよ。

活動報告にキャラクターデザインをアップしていますので、よろしければそちらも合わせてご覧ください。

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