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茅葺さんは腕のいい職人なんだろうね

20191022改稿。

「茅葺さんは腕のいい職人なんだろうね」

「うん。でなきゃ若いのにあんな大事な仕事を任されないだろうしね。私の水縹も早く直してくれるといいんだけど、今は青藤や深藍の君の修理が優先だから」


 深藍の君は機巧武者になることはできたけど、万全の状態ではなかった。関谷を守るためにも早く直ってきてもらわないと困る。


「よかったら澪の機巧姫にも会わせてよ」

「動けるようになったらね。水縹だって過去の戦では活躍したことが知られているんだもん。きっといい子だと思うんだよね。葵の君も仲良くしてあげてくださいね」

「はい、勿論です」


 基本的に有名な機巧姫は過去に生み出された名品ばかりだ。

 だが主人に巡り合えず人知れず朽ち果てたり、戦火に焼かれたりして失われたものも多い。


「古いのもあっていろいろ痛んでて修理に時間がかかってるみたいだし、直ったとしても私と連れ合いになれるかはまだ確定してないんだけどね……」


 一方で今の技術で機巧姫を再現、あるいは新作として造りだすことも行われている。そうして造られた人形を新人形(あらひとかた)という。新式――新しい作風の機巧姫や人形雛のことだ。


 ちなみに人形雛っていうのは機巧姫のような自我はないけど、簡単な命令を実行できる人形のことだ。廉価版の機巧姫とでも言えばいいだろうか。

 当然だけど、彼女たちは機巧武者にはなれない。


 とはいえそれなりに値段がするものなので、家事とかをさせる召使いロボットというよりは観賞用の人形に近い扱いをされているそうだ。

 他には人形雛を持てるほど裕福なんですよというステータスか。いつの時代でも見栄を張りたい人はいるものだ。


「人、多いなあ。それに活気もあるし」


 城下町は思っていたよりもずっと活気があった。舗装されていない土の道路をかなりの数の人が行き来している。

 とはいえテレビで見る時代劇の江戸の町ほどではない。あの時代の江戸は世界でも稀に見る大都市で人口は百万人を超えていたそうだし、比較対象としては適切ではない。


「市があるからね。聞いた話だけど、常設の市ってあまりないそうじゃない。キヨマサ君のいた城陽あたりはまた事情が違うんだろうけど」


 関谷より人口が多く、大君のおわす清都国に近い分、城陽は関谷よりも発展しているのは間違いないだろう。


「でも関谷だってかなりのものだと思うよ、うん」


 道行く人たちの格好は和服がほとんどだけど、たまに洋服っぽい人も見かける。そういう人は総じて身綺麗だ。役人だったりするんだろうか。

 衣装の雰囲気としては明治初期頃っぽいように思う。ほとんどが和装だけど、ごくごくたまに洋装の人もいる感じ。

 スーツとか詰襟のような上着を着た人がいるおかげで、僕たちの制服姿もそこまで目立たなくてすんでいた。


 建物は木造のほか、瓦葺屋根や土蔵造りのものもある。

 大きな通りと小さな通りで区分けされており、大通りに面した立派な商家にはひっきりなしに人が出入りしている。


「なんでこんな広い通りがあるのかな」


 もう少しごちゃっとした街並みを想像していただけに少し意外だ。

 道が広いということはそれだけ土地を使ってしまう。平地が狭い関谷なら少しでも無駄な面積は減らすべきではないのだろうか。


「火事があったときにこういう広小路で延焼が防げるからだよ」


 なるほど。そういえば江戸の町も何度か大火があって、そのせいで各所に火除地や広小路を用意するようになったんだっけ。


「どう? 関谷の城下町だって結構すごいでしょ」

「うん。いろんなお店もあるし、目移りしちゃうよ」


 服、小道具、食事、装飾品……いろんなものが売られている。

 せっかくだから店先を覗いてみようかな。


「ちょっと冷やかしてきていい?」

「いいけど、その前に必要なものを買いに行った方がよくないかな」

「それもそうか。じゃあ、まずは葵の買い物からしよう」

「よろしいのですか」

「構わないよ」


 そんな立ち話をしている間、僕たちは町の人々から注目を集めていた。

 その視線はほぼすべて葵へと向けられている。


「なんだか落ち着かないな」

「機巧姫が出歩くことなんて滅多にないからね。それに葵の君はとっても美人だし」


 うん、その意見には納得だ。

 作り物というのを差し引いても葵は美人だと思う。


「じゃあ、葵が希望するお店の場所を知っていたら案内してよ」

「いいわよ、任せておいて」


 とんと胸を一つ叩いた澪は頼もしげに見えた。

活動報告にキャラクターデザインラフをアップしていますので、よろしければそちらも合わせてご覧ください。

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