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ここが私たちの使う教室だよ

20191013改稿。

「ここが私たちの使う教室だよ」


 いったん部屋に戻って葵たちと合流してから最初に案内をしてもらった板敷きの部屋には誰もいなかった。

 寺子屋風に畳敷きで個々人に文机があって、正座しながら先生の教えを受けるようなイメージがあったけど違っている。

 個人部屋以外はどこも板敷きで土足のまま上がれるようになっていた。


 教室は二十畳ぐらいだろうか。

 コの字型に横長の机とそれぞれに椅子が配置されている。机がない場所に師範が立つのだろう。

 候補生の数が少ないからこんなものか。


「澪の席はどこ?」

「基本的には好きな場所に座ればいいんだけど、暗黙の了解で決まっている感じかな。私はここに座るようにしてるの」


 そう言いながら教壇の正面に並べられた机の左側の席に座る。


「あたし、ミオさまのとなりがいいです!」


 さっと椅子に座ったのは翠寿だ。

 澪の隣に座ってご機嫌だった。尻尾も力強く左右に揺れている。


「スイジュが座っているところにいるのがオオヒラ様で、その隣がロクジゾウ様。ここから見て左側の机にウメゾノ様。一つ席を空けてカメイ様とニシナカ様がいて、右側の机はミョウケン様、ワカマツ様、トミナガ様、スゴウ様が座ってるかな」


つまりはこんな感じか。


    教壇

梅園      明見

        若松

亀井      富永

西中      菅生

 澪 大平 六地蔵


 彼らが澪の同級生――この操心館の一期生だ。


「みんな澪と同い年ぐらいなの?」

「ウメゾノ様はかなり年上で、ミョウケン様とロクジゾウ様もちょっと上かな。あとは私と同じぐらいだね。国王様はみんなキヨマサ君と年齢が近いって言ってたけど、ウメゾノ様は二倍ぐらい年上になると思うよ」


 今の僕の外見年齢は十三、十四歳ぐらいだから、梅園さんは二十七歳前後ってところか。現実世界の僕とたいして変わらないな。


「これは想像だけど、梅園さんと明見さんが機巧武者になれる人じゃない?」

「え、すごい! なんでわかったの!? あ、きっと年齢順ね?」

「残念でした。ここでは機巧武者になれる人のが偉いんだろう。師範の位置が上座だとしたら梅園さんと明見さんがその次の位置になるんじゃないかって思ったんだよ」

「なるほど……キヨマサ君はすごいなあ」


 お城で食事をしたときに、この世界にも上座と下座、左上位っていう文化があるんじゃないかと思ってたんだよね。

 身分制度が厳しい世界ならこういうのがあっても不思議じゃないし。


「じゃあ、次の場所に行きましょうか」


 弓道場、厩舎などを順番に見学させてもらった。施設はどれも立派で、国として力を入れているのがわかる。


 道場には一人で黙々と木刀を振っている人がいた。

 澪によると候補生の一人で大平(おおひら)不動(ふどう)というらしい。教室で澪の隣の席にいる人だな。


 諸肌を脱いでいるので鍛え上げられた上半身が嫌にも目に入る。

 身長は一六〇センチぐらいでそれほど高くないのに、まるでボクサーのような引き締まった体をしていた。体脂肪が少なく、筋肉のキレ具合が半端ない。

 特徴的なのは筋肉に覆われた肉体だけではなかった。

 短く刈られた髪はいい。太くて意志の強さを感じさせる眉もいい。ぎょろりとした大きな目も、真一文字に結ばれた大きめの口も置いておこう。


 なんと彼の額の中央には一本の角が生えているのだ。

 鬼か? 鬼なのか?

 どこぞの駄肉の魔王みたいなコスプレじゃないよな?


 速度を優先するのではなく、動きを確認するかのように木刀を振っている。

 それにもかかわらず、ここまでビュッビュッと風を切る音が聞こえてくるのだ。

 その木刀も土産物屋なんかで見る細身のものではない。握りの部分も太いが、なにより刀身にあたる部分がビール瓶ぐらいはある。

 重量はかなりのものだろう。それを軽々と扱っているだけで彼の筋力が推し量れるというものだ。


 僕たちが道場にいるのを知っているだろうに、彼はしばらく素振りを続けた。


「ふー……」


 ようやく終わったのか、大きく息を吐く。全身からは白い湯気が立ち上っていた。


「お疲れ様です、オオヒラ様。精が出ますね」

「ああ、すまない」


 手ぬぐいを差し出した澪に、思っていたよりも高い声で応える。

 澪と年齢が近いって言ってたけど、いくつか年下なのかもしれない。今の僕の外見年齢とそう変わらないように見えた。体つきは明らかに彼の方がすごいけど。


 足元に木刀を置いたとき、ごんという鈍い音がする。

 実に重そうだ。

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