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操心館に併設されている食堂へとやってきた

20191012改稿。

 操心館に併設されている食堂へとやってきた。

 集団で活動をしているのだから敷地内で食事をとれるようにするのは社員食堂の考え方と同じだ。時間やコスト削減という側面もあるのだろう。

 だが、それも関係者が利用していればの話だ。


「……誰もいないんだな」


 長机と椅子が並んでいるだけで、僕たち以外に利用者はいなかった。

 物悲しい。閑古鳥が鳴いている。


 席についてしばらくすると、お膳に乗った朝食がやってきた。

 配膳をしてくれたのはおばちゃんだ。残念ながらメイド服ではないし割烹着でもない。


 お茶碗には赤みがかったお米がもられ、味噌汁と焼き魚。小皿には漬物が数切れのせられている。

 お米が赤いのは赤飯ではなく雑穀米だからだろう。

 お米以外にも色とりどりなものが入っている。白米よりもミネラルとかも摂取できて健康にいいんだっけ。


「じゃあ、いただきます」


 手を合わせて、ありがたくいただく。


「……ガリ」


 おおう。

 このご飯、芯が残ってないですかね。すごく、硬いです。


「ずず……ぐふっ」


 めっちゃ薄いんですけど。色のついたただのお湯だ。きっと出汁を取ってない。


「ボリボリ……」


 魚の切り身を焼いてあるんだけど、裏側が真っ黒になってるじゃないですか。


 お城で食べた食事とは雲泥の差だった。

 もちろん、あそこは国王様が生活している場所で、この国でも一番の食材、一番の腕を持つ料理人がいても不思議じゃない。だからこそのあのクオリティと言われれば納得できる。

 だが、しかし。

 いくらなんでもここの食事と差がありすぎませんか。


 食事に贅沢は言わない方だけど、これはちょっと辛い。

 誰も食堂にいないはずだ。

 この朝食では一日が憂鬱になること間違いない。


「あ、それで翠寿は一緒の食事を嫌がったのか……」


 わかってしまった。

 たしかに、これなら食べない方がましだ。


 しかし、目の前に座る澪は気にせずに食べている。

 一月程度なら牛丼が続いても平気な僕でも、これは無理だ。

 今思えば牛丼って恵まれていたんだな。懐かしい。

 この世界でも食材さえ用意できれば再現は可能だと思うんだけど。


「ごちそうさまでした」

「ごちそう……さま、でした……」

「どうしたの、顔をしかめちゃって」

「……澪は平気なの?」


 なにが?と言いたげな顔をして僕を見ている。

 澪は食事に頓着しないのかなあ。さすがにこれはちょっとどうかと思うんだけど。


「いや、なんでもないよ。それで、この後の予定なんだけど」

「まずは一通りここの施設を案内するね。みんなへの紹介は折を見てかな」


 連れだって歩いていると前方から広幡館長がやってきた。二人揃って挨拶をする。


「昨夜はよく眠れましたか」

「お陰様で。よい部屋をいただいて感謝いたします」

「不都合がありましたらいつでも仰ってください。フブキ様には客将として操心館についてのご意見をいただけばと思います。肩書としては臨時師範とでもしておきましょうか」


 僕の知っているここの師範というと青藤の君の連れ合いである広幡宗玄さんだけだ。その宗玄さんは回復しきっていないそうだけど、同僚となるのなら挨拶の一つくらいはしておきたいところではある。


「戦うこと以外にもお役に立てることがあればいいのですが」

「なんの。あれだけ素晴らしい機巧姫を連れておいでなのです。期待しております。関谷は小国故にもともと機巧武者は多くありません。しかもここ数年は戦らしい戦がなかったこともあり、内政に比重を置いた政策をとっておりました」


 外に憂いがなければ国内を富ませて次に備える。それは正しい方針だと思う。


「しかし先日のように他国からの侵略があったとき、少数の機巧武者で守ることは難しい。関谷では多いときでも五旗程度の機巧武者しか揃えられなかったのです。国王様はそれを懸念されて操心館の準備を進めていたのですが、少しばかり後れを取ってしまったようです。ですが新たな操士が育てば穴を埋めることは可能だと考えています」


 機巧武者は一旗二旗と数える。これは自分の目印となる旗指物をつけることからきているものだ。

 あと、この世界での機巧操士と機巧姫の関係性は『連れ合い』と称する。


「現在、この国に戦える機巧武者はどれぐらいいるんですか」

深藍(ふかあい)孔雀青(くじゃくあお)。それから常盤(ときわ)青朽葉(あおくちば)の四旗ですな」


 あとは先日の戦いで破壊されて修理中の青藤(あおふじ)がいると。

 つまり五旗。関谷にとって最大の数がいたわけだ。


「私も戦えたらいいんだけど……ごめんね」

「澪が謝る必要なんてないよ」


 機巧姫が修理中なら仕方がない。あるものでなんとかすればいい。

 しかし、僕を加えても稼働できるのは現在のところ五旗か。


「少しばかり心許ないですね」


 今回、東から攻めてきたのが五旗。北の三桜村に三旗。

 東の戦いでは互いに一旗ずつ落ちて、北は僕が三旗とも倒している。

 撃破した数で上回っていても、元の機巧武者の数が違うとなると話は別だ。相手にとってはまだまだ余裕ということも考えられる。


 仮に今回の襲撃が様子見であったならば、次はより多くの機巧武者を動員するのは間違いない。

 何しろこちらの手の内は見えているのだから。

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