昨日いただいた武具はどうするの?
20191012改稿。
「昨日いただいた武具はどうするの?」
「どうしたらいいんだろう。小太刀は腰に差せばいいのかな」
一応、昨夜は寝るときに枕元に置いておいたんだけど。
二本差しじゃないけど左腰に差すべきかな。
ただこれ、ちょっと重いんだよ。金属の塊なんだから当たり前だけど。
とりあず初めて会ったときの澪を真似て腰の後ろに差してみた。
「うん、いいんじゃない。似合ってる」
「小太刀はこれでいいとして、弓はどうすればいいんだろう」
「さすがにそれを持ち歩くわけにもいかないし、部屋においておけばいいと思うよ」
「そうだな。そうしておこうか」
時代劇だと刀は床の間に飾ったりしていたけど、弓はどうだっただろう。
武器の保管庫みたいなところに置いてあったんだったかなあ。
「葵の君の着替えが終わったら食堂で朝ご飯を食べて、それから操心館を案内するね」
「授業に出なくていいの?」
「うん。こういう状況だから次の対策を急いで練らないといけないもんね。今、国王様の指示で国境周辺を固めているけど、どうなるかわからないし。だから当分は授業どころじゃないと思うよ」
国防はなにより優先すべきだもんなあ。
現状は後手に回りすぎている。こういうのは先手先手で動かないと、いざというときでは遅すぎるわけで。
一度侵入を許している以上、国境の警備強化は最優先事項だ。
「それにソウゲン様の青藤の君はかなりひどい状態だったから、まずはあれをなんとかしないといけないしね。関谷は機巧武者が少ないから……」
それと並行して防衛力の強化。具体的には不足している機巧武者を増やすこと。
それがこの操心館なわけで、国としてもこういう事態を見越して手を打とうとはしていたんだろう。
ちょっと遅かったけど、何もしていないよりはましか。
「澪の機巧姫も修理中なんだよね」
「うん。水縹はかなり古い子なのもあって修理に時間がかかりそうなんだって。修理待ちの機巧姫ばかりが増えちゃってカヤブキ様も大変だよねぇ」
会話が途切れるのを待っていたかのように、すっと襖が開く。
「お待たせして申し訳ありませんでした」
「着替え、おわりましたー」
「主様、いかがでしょうか」
いい。これはとてもいいな。
澪とは違って腹掛けを着けていないから胸の谷間がしっかり見えている。
当然、そこには葵の名前の由来にもなっている葵色に輝く勾玉が存在していた。
「あの、主様?」
「あ、ごめん。すごく似合ってるよ。とっても綺麗だ」
「ふふ、ありがとうございます。主様にそう言っていただけると、吾も嬉しくなります」
澪は難しい顔をしながら葵に近寄ると、ぐるりと周囲を一周した。
改めて正面に立ち、少し下がる。
それから、うんと言いたげにうなずいた。
「大丈夫みたいね。ちゃんとしてる」
「がんばりました!」
葵の後ろに控えていた翠寿が自慢するかのように少し胸をそらしていた。本当に翠寿はいちいちかわいいなあ。
「澪と違って中に服を着ていないのは理由があるの?」
「機巧姫は勾玉が見えていた方が何かと都合がいいからだって聞いてるけど。どちらかというとあれが理由かなって思うわよね」
澪の視線は葵の胸の谷間に向けられた。
そこには名前の由来となった勾玉が埋め込まれている。
「きっとこの制服をあつらえたのはイダ様なんでしょうね。なんだか視線がね、ちょっと気になる方だから……ここぞとばかりにこうしたんだろうなって」
「あー、なんかわかるかも……」
あの人、人形大好きっぷりを隠そうともしなかったからなあ。
操心館という場所を用意して、そこに集まる機巧姫に自分がデザインした制服を合法的に着せる。そういうことをやっていたとしても不思議ではない。
うん、ヘンタイ紳士の称号を差し上げるべきだな。
「じゃあ、まずは食堂で朝食にしましょうか」
澪の言葉に、翠寿が「ひっ」と小さな悲鳴を上げた。
「どうした、翠寿。具合でも悪いの?」
「あの……あたしもいかないとダメですか?」
「駄目じゃないけど、僕と一緒にご飯食べるのは嫌?」
「ううん、それはイヤじゃないです。ただ……ごめんなさい」
そりゃ無理にとは言わないけどさ。
付き人――小者といった方が適当かな。そういう立場だからって食事ぐらいは遠慮しなくてもいいのに。
「葵はどうする?」
「吾は食事をとる必要がありませんのでここでお待ちしております」
「わかった。じゃあ、澪と二人で行ってくるよ」
「はい。お待ちしております」
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