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うぅ~ん

20191011改稿。

 うぅ~ん。

 ……とても息苦しい。

 おまけに寝返りをしようとするけど体が動かない。

 これが噂に聞く金縛りか?

 おそるおそる目を開けてみる。


「知らない天井だ……」


 お決まりのセリフをつぶいてみた。

 ぼんやりとしていた意識がゆっくりと覚醒していく。


「ああ、そうか。やっぱり夢じゃないんだ。ちゃんと目が覚めてるし。ん、んん? なんか体が重いな」


 掛け布団を見ると、目の前にモフモフの耳があった。


「こ、これは……神よ、朝からこんなことがあってもいいのですかっ。それとも何かの罠ですか!? 僕の日頃の行いを評価してということなら触っても許されるんだよな?」


 手を伸ばして柔らかな髪を梳いてみる。

 艶々でサラサラだった。

 僕の手の動きが気持ちいいのか、ピクピクと耳が動いている。


「ふあぁぁぁ。おはよーございまふぅ」


 ゆっくりと頭が持ち上がった。

 とろんとした目をしている。

 まだ半分以上は寝ているみたいだ。


「ああ、おはよう。翠寿はいつからそこで寝てたの?」

「んんぅ……朝からぁ、でしゅ……」

「わざわざ起こしに来てくれたんだ」

「うん……」

「うんじゃなくて、はい」

「ふぁい……」


 布団の上で翠寿が微睡んでいるのを見ている僕。幸せだ。

 ああ、犬を飼っていたらこんな感じだったのかなあ。

 毎朝起しに来てくれる犬を飼いたいだけの人生だった……。


「主様、入ってもよろしいでしょうか?」

「構わないよ」


 すっと襖が開くと葵が部屋に入ってくる。

 肌着一枚なのでドキリとしてしまう。


「主様を起こしに行くと言っていたのに、この子は何をやっているんでしょうね」

「昨夜は翠寿と一緒に寝たんでしょ。どうだった」

「ひどくはしゃいでいましたね。こんなに綺麗な部屋で寝るのは初めてだと。興奮してなかなか寝つけなかったのでしょう」


 そういえば遅くまで声が聞こえていたなあ。

 襖越しだからはっきりとは聞き取れなかったけど。


「じゃあ、もう少し寝かしておいてやるか」

「それはいけません。彼女には仕事があるのですから」


 それもそうだな。

 かわいそうだが起きてもらうとしよう。


 翠寿がどうしてもというので制服に着替えるのを手伝ってもらった。

 ありがたいとは思うけど、他人に肌を見られるのって思っていたよりも恥ずかしいんだよな。どうやら僕は貴族様になれそうにない。


「誰かが来たようですね」


 葵の言葉に扉を見ると、三度、ノックされる。


「どうぞ。開いてるよ」


 ちなみに扉は横開きで鍵というものはついてない。実質、プライバシーなんてないようなものだ。


「開いてるって、当たり前だよね」

「そこは気にしないでもらえると嬉しい」

「みんなちゃんと起きてるんだね。偉いえらい。スイジュもしっかりお仕事できてる?」

「うん……じゃない。はいっ」


 翠寿の返事に、澪は嬉しそうに笑っていた。

 一晩寝て、気持ちの切り替えができたのだろう。


「これ、葵の君の制服。受け取っておいたから着替えてきて」

「わかりました」

「スイジュは手伝ってあげて。最初は戸惑うと思うから。ちゃんとわかるよね」

「わかりますっ。葵の君さま、あたしがお手伝いするです」

「はい。よろしくお願いします」


 二人はそろって隣の部屋に姿を消す。

 その後ろ姿を澪はじっと見つめていた。


「大丈夫だよ。昨日は二人一緒に寝てたし。葵も翠寿のことは気に入っているんじゃないかな。少なくとも悪いようにはしないから」

「……ありがとう」

「こちらこそ。あんなに優秀な子を預けてくれてありがたいよ」


 かわいい翠寿は僕が全力で守る。そして愛でる。男の誓いだ。

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