それが自作自演では興ざめだ
20191011改稿。
それが自作自演では興ざめだ。
ワクワクした気持ちが霧散してしまう。
そういった意味で保証が欲しかった。
この世界は僕の妄想ではないという保証だ。
「目標を定めたのが誰というものはありません。命令も受けていません。強いて言えば――吾自身でしょうか。吾は混沌を望みません。そして主様と吾であれば、この戦乱を鎮めることができます。力ある者がそれを行うのは当然のこと。そのように吾は考えています」
「戦乱が落ち着いたとしよう。そのとき僕はどうなる」
目標を達成したらエンディングが見られるのか?
ソーシャルゲームには事実上エンディングはない。
サービスの終了がエンディングとも言えるが、そこにはいわゆるスタッフロールやエンディング画面なんていうものはほぼありえない。ウェブサイトにサービス終了のあいさつが掲載される程度だ。あんなものエンディングと呼べない。
戦乱を鎮めるのが僕の目的だとして、その後、僕はどうなるのか。
そのままここで暮らすというのはできれば避けたい。
現実世界に戻りたいと思っている。
そうしなければゲームが作れないからだ。
「天下を平定すれば主様は覇王ということではないでしょうか。それは目的ではありますが終着ではないと思います。主様は天下を治めていくことになるでしょう。人生は続いていくものなのですから」
「最初はRPGで、それをクリアしたら国家運営ゲームになるのか? その次はなんだ? 神様になって歴史をシミュレートでもするのか?」
エンディングはない。
少なくとも葵は知らない。
葵にあたっても仕方がないのはわかっている。
ただ、はっきりしない状態は落ち着かないのだ。
明確な指針が欲しかった。
「……悪かった。今言ったことは忘れて」
「はい」
葵が知らないのであれば、知っている奴を探せばいい。
慌てることはない。まずはこの世界を楽しもう。
一つずつ目の前にあることを順番に片付けていくとしよう。
「強いてあげるとすれば、この世界で多くのことを見て、聞いて、体験していただきたいと思います。きっと主様の知らないことがあふれていますから」
「それは望むところだけどさ」
ふんわりとした笑みをどこかで見たような気がする。
誰だったのだろう。
こんな美人の知り合いなんていた記憶はないんだけど。
「はあ……今日はもう疲れたよ。そろそろ寝ようか」
「はい」
うなずいた葵が帯を緩めている。
「あのー、葵さん。何をしていらっしゃるので?」
「ですから寝る用意をと思いまして」
帯をほどき、袴と上着を脱ぐ。
白い肌着一枚になると、布団の前で三つ指をついて頭を下げる。
「よろしくお願いいたします」
「………………なにを?」
「ですから、床入りをするのでしょう?」
艶然と微笑むと、僕用に敷いてある布団に入ってしまう。
「さ、どうぞ」
違うから!
そういうのじゃないから!
普通に寝るだけだから!
なんとか誤解を解いて、葵を奥の部屋に追いやる。
襖を閉めるときだ。
「ああ、主様は優しく、そして初心なお方なのですね……それとも女を焦らして試していらっしゃるのでしょうか……はあ」
なんて色っぽい溜息が聞こえてきた。
やっぱり、聞いていないことにした。
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