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あー、澪

20191010改稿。

「あー、澪。ちょっといいかな?」


 澪の反応はないけど話を続ける。


「実はさ、身の回りのことをしてくれる人を探そうと思っていたんだ。その意味で翠寿の提案は僕としては渡りに船なんだよ」


 ぴくんと澪の肩が震えるのがわかった。


「これから澪にはいろいろと頼ることになると思うんだけど、全部ってわけにはいかないだろ? その意味でも澪の配下にいる翠寿とは面識もあるし、僕としても助かるんだ」

「じゃあ、キヨマサ君はスイジュをとったりしないの?」

「とらないよ。翠寿はずっと澪の配下でいるつもりなんだろ?」

「うん」

「……だって、さっきはそんなこと言ってなかったのに……」


 確かに翠寿の言い回しはちょっとわかりにくいからな。

 だが言いたいことを整理すれば翠寿の意図なんて明白だ。


「翠寿はちゃんと澪の役に立ちたいって言ってただろ。な、翠寿」

「うん。あたしはミオさまにご恩をおかえししたいです」

「それはそうだったかもしれないけど……それに恩なんて返してもらわなくてもいいんだし……」

「考え方としてはレンタル――澪のところから翠寿を派遣してもらう感じかな。翠寿を借りている間は僕から給料を払う形でどうだろうか」

「お給料とか関係なくて……」


 澪の瞳が揺れている。

 冷静になり、整理して考えてもらえば問題ないはずだ。

 きっと自分のところから翠寿が出奔してしまうと勘違いをしているだけなのだから。


「翠寿はこれからも澪の配下だよ。僕に仕えてくれている間もそれは変わらない。その上でお給料は僕から翠寿に出す。いきなり三百石ももらったけど使い道ないしさ。それでどう?」


 結局、僕は関谷の客将として蔵米三百石をもらえることになった。

 澪のような領地を持つのとは違い、いわば給料の形で三百石をもらえるわけだ。

 いきなり年収三千万ですよ。現実世界でもこれぐらいもらえていたら犬が飼えるマンションに引っ越してたんだけどなあ。


「翠寿はそういうことを言いたかったんだよな」

「うん」

「うんじゃなくて、はい、な。言葉づかいをちゃんとしないと本当の主である澪に恥をかかせることになるぞ」

「う――じゃなくて……はい」

「よし、いい返事だ」


 澪の両腕から力が抜けて、だらりと垂れ落ちた。


「……本当に? 本当にスイジュはどこかへ行ったりしない?」

「はい、ほんとです」

「キヨマサ君はスイジュにひどいことしない?」

「しないって。っていうか、澪は僕のことをどう思ってるんだよ。まずはそこのところから話し合いをしないと駄目なのか?」


 ようやく、澪の顔に微笑みが戻ってくれた。

 翠寿が離れていくことを恐れているみたいだったけど、過去に何かあったんだろうか。折を見て澪から教えてくれたらいいなあ。


「じゃあ、スイジュのお布団はこっちに運んできなさい。それでいいのよね?」

「奥の部屋を葵と一緒に使ってもらうから大丈夫。葵もそれでいいよな」

「はい、構いません」

「翠寿もいいな」

「いいです。だけどキヨマサさまをお守りするのなら同じ部屋のがいいです」

「それは却下します」


 その希望は澪が一刀両断にした。

 異議あり!って言いたかったけど我慢する。

 積極的に墓穴を掘る必要はないもんな。


 翠寿には澪の部屋の引っ越し作業を引き続きしてもらい、それが終わったら僕のところへ来ることになった。

 作業の引き継ぎは大事だ。物事は円満に進めるのが望ましいもんな。

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