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お城での食事を終えて操心館へと戻ってきた

20191008改稿。

 お城での食事を終えて操心館へと戻ってきた。


 外はすっかり暗くなっている。

 道中に外灯の類は一切なく、本当に真っ暗だった。提灯を持った澪がいっしょにいてくれなかったら、足がすくんで動けなかったかもしれない。


「ここがキヨマサ君の部屋になるんだけど……」


 火のついた行灯(あんどん)を手に部屋まで案内をしてくれた澪が中を見て固まっていた。


「はわぁ、すごい立派な部屋なんだね……びっくりしちゃった」


 案内された先は襖で仕切られた八畳二間の部屋だった。

 印象としてはちょっといい感じの和風旅館ってところだ。落ち着いた雰囲気で悪くない。何より畳敷きというのがいい。

 畳の上なら板間と違ってごろりと横になることも可能だ。そういうのに憧れていたんだよ。僕の部屋はフローリングだったからな。


 手前の部屋の隅には文机がある。こちらが普段使いの部屋で、奥が寝室だろうか。

 二部屋あるのなら僕と葵で使い分ける形でいいかな。

 葵に部屋の奥を使ってもらって、僕がこちらの部屋を使おう。


「澪の部屋は隣になるんだっけ」

「うん、そうなんだけど、私なんかがこんなに立派な部屋に移ってもいいのかなぁ。ここって上士用の部屋なんだよね」


 上士とはつまり上級武士のことだ。

 知行を持つ澪だって上士だろうに。


「明日は操心館を案内するね。みんなを紹介したいけど、まだ国境に詰めている人もいるから全員は無理かな」

「うん、よろしく」


 今のところは敵の動きもなく、国境付近を厳重に警戒している。操心館に所属している操士もそれに加わっているそうだ。


「今日はいろいろと助かったよ。澪がいてくれなかったら行き倒れになっていたかもしれないし」

「それはないでしょ。だってキヨマサ君ってすごく強いんだし。あと精神的にも強かったしね」

「そうかなあ」

「そうだよ。私、国王様に直接声をかけられるなんて初めてのことで、頭の中真っ白だったんだからね」


 あー、思い返してみると、澪って「はっ」と「ははっ」しか言ってなかったような気がする。


「お世話になったお礼に澪の部屋の引っ越しを手伝おうか。力仕事なら役に立てると思うよ」

「ううん、大丈夫。コウジュたちにやってもらってるから」


 紅寿は斥候に伝令に引っ越しと大活躍だな。

 僕にもそんな雑用をやってくれる子がほしい。


「ここ、キヨマサさまのお部屋ですか?」


 荷物運びをしていた翠寿が部屋の中を覗いている。


「そうだよ。そんなところに立っていないで入っておいで」

「やったー」


 ニコニコ顔で翠寿がやってくる。

 ちなみに旅館のように部屋に入ってすぐに小さな土間があり、そこで履物を脱いでから部屋に上がる仕組みだ。


「すごいねー。きれいなお部屋。ひろーい。いいなー!」

「そうかそうか」


 耳をヒクヒク、尻尾をパタパタしているのが本当に愛らしい。

 ああ、かわいい。うちの子になってくれないかなあ。


「畳の上でゴロゴロしてもいいよ」

「ほんと!?」


 きゃーきゃー言いながら、部屋の隅から隅へゴロゴロと転がってはしゃいでいる。


「すごーい! たーのしー! 畳のいい匂いがするー!」

「いつでも遊びに来ていいからね」

「いいの? ほんとに?」

「ダメよ、スイジュ。キヨマサ君はいろいろあるんだから」


 僕に向ける澪の視線が冷たいように思う。

 あ、あれ? なんかまずいこと言いましたかね。


「部屋に遊びに来るぐらい迷惑とは思わないよ」

「やたー!」

「そうじゃなくて、キヨマサ君とスイジュが二人きりになったら危ないかもしれないって話をしてるの、私は」


 そっちかぁ。

 だからお風呂の件は説明したじゃないか。あれは僕が望んだことではなかった、澪の説明不足が悪かったんだって。

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