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二人のトークはさらに盛り上がる

20191007改稿。

 二人のトークはさらに盛り上がる。


「城下の人形師たちが葵の君の美しさを目にすれば、創作意欲を新たにすること間違いございませんでしょう。そうすれば人形雛の品質もさらに向上し、より多く売れることになり、我が国が益々富むというわけですな」

「そうだな。それは期待をしたいところだ。しかし本当に葵の君はいい。どうだろうか、儂の手元に置いておくというのは」

「それでしたら私が引き取らせていただきたく」

「いやいや、儂が」

「いえいえ、私が」

「儂が」

「私が」

「儂!」

「私!」


 スパパーン!と軽快な音が重なった。

 王様の背後に控えていた小姓の二人がハリセンをもって国王様と井田家老の頭をはたいたのだ。

 国のトップになんてことを!

 すわ、この場で切腹でも申し渡されるのか!?っとドキドキしていたんだけど、国王様は「なんだよ、ちょっと話が盛り上がりすぎただけだろ。これだからクソ真面目な九十九(つくも)は……」とかブツブツ言うぐらいだった。井田家老も頭をかいているだけだ。


「毎度のこととはいえ、お二人とも加減というものを覚えていただきたいっ。お二人を御諫めする小姓たちのハリセンさばきに磨きがかかるなど、本来はおかしいことなのですからな!」


 福岡家老が一喝したら、国王様と井田家老が体を小さくして反省をしていた。芸術提督とも言われた深みのある声で叱られたら僕だって反省する。

 しかし、この国って本当に大丈夫なんだろうか。

 あ、もちろん、葵は誰にもあげませんがね。


「さて、フブキとやら」

「はい」


 む、さっきまでのダメ人間っぷりをこれでもかと発揮する趣味人らしい雰囲気と様子が変わったぞ。ここからが本番ってことかな。


「斥候の情報、そして葵の君の存在を知ればお主の活躍は疑いようもない。機巧操士の活躍には武具をもって応えるのが武家の習い。儂からはこれを授けよう」


 先ほど見事なツッコミを入れた小姓の二人が僕の前にそれぞれが持っていた武具を置いた。なお、ハリセンではない。

 ちなみに二人とも色白で美少年だ。そっち系が好きなお姉さま方がいたら鼻息が荒くなること間違いない美貌である。


「我がフジカワ家に伝わる天弓(てんきゅう)山翡翠(やませみ)人刀(じんとう)獅童(しどう)だ。受け取れ」


 お、ここでもゲームの設定が出てきたな。

 武器ランクにおいて銘ありの逸品ものは名称の頭に天・地・人がつく。


 たとえば、天弓と付いた山翡翠は最上位の性能を持つ弓となる。貫通性能に大幅な補正が付いていた。

 もう一つの獅童については記憶にないけど、人刀とある以上、業物であるのは間違いない。

 この小太刀も悪くないし、弓は間違いなく大当たりだ。これ以上の武器となるとなかなか手に入らないだろう。

 むしろこんなレアものをもらってもいいのだろうか。

 怖いなあ。なんだか無理難題を吹っかけられそうな気がする。


「ありがたく頂戴いたします」

「しかしながら此度の成果を考えるとこれだけではちと不足しているようにも思う。他にも褒美を取らせようと思うがどうだ? 望みのものがあれば言ってみよ。儂にできることであれば叶えよう」


 顔は笑っているけど目は違う。何か裏がある申し出なのは間違いないだろう。


 こういう場合、警戒しておいて損はない。

 どんなのでもいいから新規ゲームの企画を持ってきてと猫なで声で言ってくるプロデューサーみたいなものだ。

 迂闊に相手を信じて後で痛い目を見るのは遠慮したい。


 さて、ここはどう対応すべきか。

 大きすぎる要求をして墓穴を掘るのは避けたい。

 逆に全く望まないのもよくない。

 欲がないと思われるならばまだしも、何か企みがあるのではないかと相手を不安にさせてしまう可能性があるからだ。


 すでに天弓と人刀をもらっているのだから、そこそこの要求をするのが望ましいだろう。

 この世界の元になったであろうゲームを作ったとはいえ完全に同じではないし、知らないことがあまりに多すぎる。戦いが身近にある世界では無知は即ち死に直結しかねない。

 今の僕の急務は、この世界での常識を身に着けることだ。それを学べる状況を整えたい。

 あとは衣食住の保障があればいい。それ以上は過剰な要求になる。


「どうした。なんでもよいのだぞ。好きなものを望むがよい」

「それでは申し上げます。しばらくこの国に滞在する許可をいただければと思います。一念発起して生まれ育った故郷を飛び出してきましたが、未熟者ゆえに世間に通じておりません。ですからこの国の人々と触れ合い、いろいろなことを学びたいと思うのですがお許しいただけるでしょうか」

「構わぬぞ。お主が望むのならいつまでもこの関谷で暮らすがよい。生活は保証しよう。だが本当にその程度でよいのか? なんであれば、儂はお主を知行一千石で召し抱えようと思っておるのだが――」

「こ、国王様! それは……それはあまりに過ぎますぞっ」

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