改めて自己紹介するね
20191004改稿。
「改めて自己紹介するね。私はフジカワ家家臣のアワブチ・ミオ。ここは関谷国で、白相国、東にある霧峰国との国境に程近いところよ」
ほほう、関谷に白相と霧峰か。どれも覚えがあるぞ。
関谷は大陸の中心部から少し東にある海に面した小国だ。
国土の大半が山だから米の生産力に換算する石高は低い。その代りに山からとれる木材や鉱物の生産地として有名なのと、その加工品による交易で商業的な発展を遂げている国だと設定したはずだ。
関谷の東にある霧峰はゲームの初期段階で主人公のいる国に侵攻してくる大国として設定していた。
ちなみにゲームの主人公が最初にいる国が白相国だ。関谷の北にあり霧峰とも接している。
やはりこの世界のベースは『カラクリノヒメ』で間違いなさそうだ。
ただゲームのスタート地点と違う国に来てしまったのが気になる。どういう理由なんだろう。
「キヨマサ君はどこから来たの?」
「えっと……」
弱ったな。どこから来たと言えば不審がられずにすむだろう。
この世界で霧峰は関谷と敵対している可能性が高いから駄目だ。遠すぎる国も除外しよう。
そこそこ近くて関谷と関係が悪化していなさそうな国は……。
「城陽だけど……」
ここは賭けだ。中盤以降で主人公たちが訪れることになる国をあげてみる。
「すごーい。もしかして、その服はあっちで流行ってるとか? でも身体の大きさにあってないよね。へぇ、こういう格好がねぇ」
澪の不躾な視線を受けつつも、内心はほっとしていた。
「僕が倒したのはどこの機巧武者だったんだろう。場所的に考えたらやっぱり霧峰かな」
「たぶんだけどね。山があるとはいえこのあたりも霧峰と接してるし。関谷は小さな国だから攻め落としてもあまり利はないと思うのよね。なんでわざわざ攻めてきたのかな。争いなんてなくなればいいのに……」
霧峰はゲーム序盤の障害となる国だった。
それ故に好戦的な国家方針という設定にしてあったから機を見て他国に攻め込むのも不思議ではない。
ゲームと違って関谷に攻め込んだ理由まではわからないけど。
「そういえば別の場所にも機巧武者が出たんだっけ?」
「うん。みんなが必死に戦ってくれたけどヒロハタ様が……」
霧峰は大国と設定してあるだけあって国力は関谷を圧倒している。
機巧武者の数を揃えられたら関谷になす術はないだろう。
「もしかして亡くなったとか……」
僕が決めた設定のせいで人死が出ているのだとしたら目覚めが悪い。
いや、すでに人は死んでいるのか。三桜村の光景が蘇る。
「ううん。なんとか一命は取りとめたから。それにね、敵もなんとか押し返せたんだよ! みんなが力を合わせて頑張ったの。ほんと、すごかったんだから」
「そうか。関谷の機巧武者は強いんだね」
「うんっ」
顔をほころばせながら胸を張る澪。
「あっちが落ち着いたと思ったら三桜にも機巧武者が姿を見せたって報告があってね。山奥にある村だし、なんでだろうって思ったんだけど、なんとか生きている人だけでも助けたいと思って私だけ急いでこっちに来たの」
澪たちが最初に戦っていた場所とここがどれだけ離れているかわからないけど、さっき言っていた転移できるシステムを利用して文字通り飛んで来たのだろう。
「あ、そうだった。村の人たちを守ってくれてありがとう。まだお礼を言ってなかったよね」
「気にしないでよ。あれはたまたまなんだしさ」
「ううん。そのたまたまでも命が助かった人がいる。キヨマサ君は大事なみんなを守ってくれたんだもん。ちゃんとお礼を言わせて」
「じゃあ、うん。受け取ります」
「ふふ。変なの」
澪の笑顔に救われた気持ちになれた。
戦いは嫌なものだ。大切なものが簡単に失われてしまうから。
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