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あの事件から1ヶ月がたち、情報収集もある程度終わった。私たちは巳波禽村からでて、妃羅巳村へときていた。
「そういえば、多重人格ってことはアルヴィト以外にも人格あるのかな?」
「僕にはイェーガーしかいないけど、どうだろう。アルヴィトさんは高度魔法も使えてたし。」
私が奥に引っ込み、アルヴィトが主導権を握った。それと共に金髪のイェーガーが、顔をだしてきた。
「『いる。この状態になればあと何百人かは。』」
「百単位?!それってアレだろ?“略奪”ってやつ。」
「『そうだけど?かけようか?』」
「おいおい…。それお前が言うと冗談じゃなくなるぞ…。」
「『冗談じゃない。』」
「おまっ!ヤンデレだとしてもそれはない!」
「『詰まらないやつ。』」
そしてまた表に出される感じがした。イェーガーも光希に戻っている。
「…ははは。」
「“略奪”かあ。人格を奪うのかな?」
「そうみたいだね。文献には性格、容姿、特性を奪うって書いてあった。」
「奪われた人はどうなるんだろう。」
「自我が、薄くなる。なくなる訳じゃないけど。あとは、副作用で仮死状態に陥る。」
「仮死状態って、死なないの?」
「死ぬ方が多い。」
私はその時初めてアルヴィトに恐怖を覚えた。
『ごめん。』
アルヴィトが謝ったけど、私は何も返事ができなかった。
その夜、私は寝れなくて月を見にテントの外にでた。少し涼んで頭を冷やそうと思ったのだ。しかし、木の辺りに不穏な影が動いた。
「誰?」
その影は少しずつ私に迫ってきていた。その手の辺りにはキラリと光るモノが。私は知らず生唾を飲み込んでしまっていた。その影はどんどん私に近づいてくる。
「コウキヲ、イェーガーヲ、カエセ」
金属音を隠そうともしなくなったソレは、機械的な声で言った。
「あなたは巳波禽村の人?」
「…」
「っ!じゃ、じゃあ誰なの?」
何も話そうとしない不気味さと、月明かりで見えるようになった能面のような顔が、私に生理的嫌悪感を与えていた。私は思わず後ずさりをしてしまった。
「ナゼ、ニゲル?」
ソレはもっと近づいてきた。ソレには目がなかった。
「あ…あああ…ああ…いや…。」
私の生理的嫌悪感の我慢の限界を超えた。それと共に私が奥に引っ込まれた。
「『光希は返さない。残念ね。』」
「ニクイ!ニクイ!ニクイ!ニクイ!!愚者!コロス!コロス!コロス!!」
ソレは短剣を私に向けて走ってきた。
「『破壊』」
刹那、ソレは内側から爆発した。
「夏希?」
轟音で光希が起きてきた。爆発したソレを見ると目を見張った。
「…アヤメ!アヤメ!」
「知ってるの?」
「…刺客だよ。巳波禽村の。本名は…光太。」
「まさか…」
「僕の弟だ。」
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