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少し残酷かもしれないです。
「『イェーガー、だっけ?あんた、アノ一族の末裔?』」
「まあな。それが、なんだ。」
「『それじゃあ、死んでもらおうと思って。』」
「っ!や、やめ」
「『殺処刑』」
辺り一帯に轟音が響き、鮮やかな赤が空間を満たした。私はそれをどこか他人事のように感じていた。自我があるようでない。考えることはできるけど、体を動かし、脳をはたらかせているのは何か別のもの。自分の体のようで自分ではない。そんな不思議な感覚がした。
イェーガーがふらつき、よろめきながら身体を起こした。
「『あんた、まだ生きてるの?まさか、避けた?』」
「…かはッ!っ!ぐはぁ!……そのッ、まさ、かだ。お前に、夏希がいる、ように、ぐはッ!…はぁ、俺にも、光希が、いる…。」
「『そうか、光希を助けたいんだっけ?じゃあ、味方につくなら治療してもいい。』」
「…誰がッ!誰がお前なんかの!くはッ!」
「『それじゃあ、光希は助からない。残念だ。』」
「…いや、頼む。光希を助け、て。」
「『誓約、できる?』」
「っ!分かった。」
「『宣誓』」
「我、イェーガー、及び光希はアルヴィトに味方し、生涯裏切らないことを誓約とします。」
イェーガーと私は金の光に包まれた。光はやがて糸となり、私とイェーガーを繋いだ。
「『治療』」
私の手から何か温かいものが放出され、イェーガーを包むとイェーガーの傷はどんどん治っていった。
翌日、光希は元に戻っていた。
「あの、ありがとう夏希。あと、イェーガーが暴走してごめん。アルヴィトにもよろしく。」
「『良ければ、一緒に旅をしない?誓約をしたから、この村にはもういられない。』」
「ありがとう。だけど、とりあえず資料集めをしなきゃ。」
「『分かった。でも、ゆっくりはできない。』」
「分かってる。じゃあね、夏希。信じてくれてありがとう。」
「じゃあね、光希。こちらこそ。」
巳波禽村がこれからどうなっていくか、そんなこと、私には分からない。だけど、今仲間ができた。それは確かなことで、喜ぶべきことだった。
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