腹が空いた日には
天気が良いので窓を大きく開けた。すると突然何かがさあっと開いた窓をすり抜けて部屋に入ってきた。あっと思うとそれは小さな雀だった。その雀は雛を大分大きくしたようなそれでいてまだ雛の面影を残す大人になり切らない子供の鳥のようであった。さっと部屋に忍び込んできた割にはまだうまく飛べないようで舞い降りた畳の上で体を左右に揺らせながら壁際によたよたと歩いて行った。驚いた私は、これ以上何かが部屋に入ってくるのを防ぐため慌てて網戸を閉めた。壁際を心もとなくくちばしでつついては方向確認をしている子雀を私はじっと見つめた。
すると突然網戸の向こう側でちゅんちゅんちゅんと立て続けに声がした。振り返ってみると部屋の中の子雀より1廻り程大きな雀2羽が縁側の網戸越しに心配そうに鳴いている。壁際の子雀を見つけたようだった。壁際の小雀もそれを聞き、我に返ったようによたよたと網戸に向かう。1メートルほどの距離をよたよたとピョンピョンと飛びながら網戸に向かう。ようやっとたどり着いた子雀は網戸越しに切なそうに悲しそうにちゅんちゅんと鳴く。それを見た大振りの雀が網戸の向こう側でさらに激しく鳴き返す。「網戸を開けて子雀を逃がしてやらなくちゃ」そう思った私は見ていたちゃぶ台から体を起こし座布団の上に立ち上がった。
とその時、それまでちゃぶ台の横で昼寝をしていたかのようにじっと動かなかった猫が音もなく体を起こし、一瞬構えたかと思うとそのまま大きく跳ねるように網戸際に居た子雀にとびかかった。あっ、と思った瞬間、子雀は猫の前足で押さえつけられ同時に悲鳴のようなか細い鳴き声が聞こえたかと思うと子雀の体が猫の口の中に消え、一面に綿のような羽が舞い広がった。私は蒼白になりただ黙って凍り付いたようにその光景を凝視していた。
ふと我に返ると遠くから猫のいらだったようなみゃあみゃあいう鳴き声とどんどんどんとドアを叩くような音が聞こえる。頭を起こし音のする方に顔を向ける。寝室のドア越しに猫の鳴き声が一層大きくなる。みゃあみゃあみゃぁぁぁぁああああああっ。どんどんどんどんどーーんどーーん。ドアのノックの音が一層激しくなる。ふとベッド脇の時計に目をやる。6時5分過ぎ。いつもの時間を5分過ぎている。
先ほどの子雀は腹の空いた猫が見せた悪夢か。
ほっとした私は小さく深呼吸をし、布団を勢いよく払いベッドからでる。「分かった。今行くよ」それを聞いたドア向こうの猫はやっと叩くのをやめると、催促するように最後にもう一度みゃああんと鳴く。私はドアノブに手を掛けそろそろとドアを開ける。すると向こう側にはいつものように12個のまん丸の期待に満ちた瞳が私を見つめている。
「すまないね。今日は5分遅れたよ。さあ朝飯にしようか」




