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醜悪の庭―unsightly garden―※試し読み版  作者: 弐城弥斗
第一章 そして、少女たちは霧に消えた。
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1-2

 それがクラスメイトの一人である陸井くがい智人のりとだと認識できた頃には、怒りの感情を握り拳で表現する彼がこれでもかと言わんばかりに開口していた。


「おいお前ら! 枢人のありがたい忠告をちゃんと聞いてたんかぁ? 忙しい中わざわざ声かけてくれてんだから少しは協力してやれよ~、だろ! 賢治!」


「ちょ、俺はちゃんと初日に提出した枢人マジリスペクト優等生だから! 貢献度高くてそろそろポイント交換で景品もらえるレベルだから!」


 智人の茶化すような発言に対し、同じく友人である沖渡おきど賢治けんじは機敏な対応でツッコミをいれる。


 何が絶妙かと言えば、それこそ内容がいまいち遠回しな点と頭の悪そうな言葉の乱立である点だということをまだ誰も伝えない。


 それも彼らしさだと尊重するからだろうか。


 「生徒会書記、お疲れさん! これから賢治と他に何人か誘って遊びに行こうと思うが、都合はどうだ? 本命ボーリング対抗カラオケ大穴に片梨かたなし丘の魔女屋敷へ探索ってところだが」


 どうであれ、色濃い人間たちに囲まれる生活は今のところ可もなく不可もない、というのが枢人の本心に隠された評価だ。


「ごめん、今日も生徒会に用事があるんだ……」


 両手を合わせて念入りに謝る枢人を前に、玉砕したと言わんばかりの派手なリアクションで智人は後ずさりした。


 賢治の絶妙なツッコミも余韻を残していたのか、クラスに残る少数のクラスメイトたちからは小さな笑いが続いている。


「お前、本当に働きづめだな。そんだけこき使う生徒会も生徒会だが……賢治、お前は空いてるだろ?」


 ため息交じりに肩を落とす智人は、背後にいるであろう友人に声をかけたつもりだったが、いざ振り向くと肝心の本人は教室の扉に手をかけている。


 気まずそうな視線の対話を経て、賢治は申し訳なさそうに口を開いた。


「すまん、俺パス! 今日は妹の買い物に付き合わなきゃ酷い目にあいそうでさ! サディスティックマイシスターがベリーアングリーみたいな?」


 文字に起こしただけでも目まぐるしそうな言葉の乱立に枢人が苦笑いする中、納得いかんとばかりに智人は賢治へめがけて飛びかかる。


「枢人はいいとしてお前は毎回怪しいんだよなぁ~っ! 俺らに黙って女なんか作ってた日にゃあ重罪だぞ、け~んじくぅぅぅぅん?」


 恐れを抱かせる不思議なイントネーションに枢人は頬を緩ませつつ、二人に駆け寄って仲裁に入る。


「買い物に行くかどうかは知らないけど、賢治に妹さんがいるのは本当だよ、家族でいるの見かけたことあるし」


「なんだなんだ? ホラ吹き野郎かと思ったらただのシスコンかい! 家族を大事にするやつに用はないやい! 帰れ帰れぃ、待ち合わせに間に合うよう急いで帰れぃこんちくしょーが!」


 智人の拘束を何とか逃れた賢治は、後で埋め合わせをすると言葉を残して一目散に立ち去った。

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