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醜悪の庭―unsightly garden―※試し読み版  作者: 弐城弥斗
魂魄灯の涙
4/51

プロローグ(3)

 「ハッハッハ、アーッハッハッ! ハッ――」


 狂気に震えて笑う少女の視界を完全に覆うべく、霧の中から姿を現した棺桶男は布袋を取り出し、慣れた手つきで彼女の顔を覆った。


 視界が暗転するまでの僅かな時間で、棺桶男の正体が少女の記憶へ植え付けられる。


 くたびれた黒革のロングジャケットに白のシャツ、つば付きの帽子を被る顔は――――血飛沫がまばらに彩る奇妙な仮面で隠されていた。


 なるほど、少女は壊死していく心の中で納得する。


 出会った異形の正体はまさに、紛うことなき怪人だったのだと。


 やがて、傀儡のように糸で拘束された少女は、六体の人形たちによって棺桶に幽閉された。


 精一杯の叫びも、嘆きも、霧の中に飲まれて消え失せる。


 奪われた視界、闇に包まれた閉所、反響する慟哭、入り乱れる恐怖と狂気の果てに――棺桶の少女は、失禁した。


 呼吸を荒げ、意識が遠のいていく最中で、骨の軋む音が聞こえる。


 そして、それは人形たちの身体が鳴らしているものだったのだと。


 少女を封じた棺桶は人形たちに担がれ、棺桶男と共に霧がけぶる夜闇へと消えていく。


 伝染する失踪の答えは霧に紛れ、日常世界には行方不明者の数がまた一人刻まれる。

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