魂魄灯の涙
血は、心の涙だ。
心からの渇望が、血涙になって頬を伝う。
友人の妹を殺した。
たわいもない、血を欲していただけのことだ。
少なからず良心が働いていた頃は、監禁生活の中で地道に採血するなどと工夫を凝らしたものだが、日に日に必要となる血の量が増えれば、理性が崩壊するのも時間の問題だった。
一人の人間を生かすためならば、他の命を貪ることは避けて通れぬというのだろうか。
当然だ。
生き物は他者の犠牲を糧に生きている。命をいただき、命を粗末にし、今日も日を終える。
それが自然の摂理にも関わらず。
人としての生き様を棚に上げ、世界平和を謳う愚かな人間がごまんといる。
今までに貪った命へ目もくれず、目の前の尊い命を乞う醜い人間が腐るほどいる。
世界がそれを許すのならば――――大切な者のために他人の命を貪ることもまた、許されるのではないか。
日々の努力は、室内に響く骨の砕けた音で徒労に終わった。
肺の中の空気が抜けていくような短い声を最後に、無垢な少女は命を絶つ。
艶やかな黒の長髪は乱れ、ひしゃげた四肢は本人の意志で曲げることのできない方向へ歪んでいる。
押し花を連想させたのは、遠い記憶に押し花のしおりを作った思い出があったからなのだろうか。ただ、もっと身近なもので例えられそうな気がして――
――――ああ、なんだ。
それはまるで、漆色の糸に吊された傀儡のように美しかった。