【詩】春のひは沈む
咲くことを
こらえている様な、
桜のいろが、
ずいぶんと濃くなってきた。
高まってくる、
ざわめきに似たものに、
枝をゆさゆさと
ゆすって居る。
車道ごしの
こうえんの芝生のうえに、
鹿たちが
あたまを下げて、
雨にぬれている。
春のひは、
うすぼんやりと
空にあったが、
やがて
沈んだ。
建物をでると、
すずしい程の
雨あがりの
よるの坂道。
星々のひとみが
こずえに宿り、
雲間からみている、
ひとつのめの月。
濡れたじめんは
ひんやりと静まり、
昼間のきおくを、
もうすっかりと
鎮めてしまった。