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崩れる日常

作者: ヘル

反応あればその2、その3出します。リハビリ執筆です。

 暗い部屋で一人、パソコンの画面に向かってひたすら集中して作業をしていると背後が気になる時がある。

 買い物や通勤、通学で外出した際にふと二度見してしまうことがある。

 疲れたとき、何かが視界をよぎる。

 こんなこと、誰でも体験することだろう。しかし、ごく稀に決して見てはいけないものがある。

 

 大学の授業が終わり、コンビニで立ち読みを済ませ、大して欲しくもないのについつい無駄な買い物をして帰る。今日は雑誌とチョコレートを買った。

 店を出て、スマホがメールを受信した気がして取り出してみるが、迷惑メールだった。開いたついでに、先月別れた彼女から来たメールをつい見てしまい、見なければ良かったと後悔しつつ歩く。

メールの内容は、俺が浮気したからどうのと意味不明な内容で終っていた。これきり連絡は一切ない。良くある突然の破局とかそういったものだろう。

 俺の家は街のメインストリートから少し外れた場所にある。昔はアーケードも賑っていたそうだが、俺が小学生になるくらいにはシャッターの下りた店が目立つようになっていた。今では開いている店の方が少ないくらいだ。

 アーケード最後の店のガラスをふと見る。俺の横に誰かいたように見えた。

 周りを見てみるが俺以外の通行人はいなかった。


 家に帰り、母親と大学の授業や単位、取得したい資格についてとか、他愛のない話をする。母親が入れてくれたお茶は何故か二つだった。

「母さん、なんで湯飲み二つでてるの?」

「あら、お友達と一緒だったような気がして、変ね?」

 母親も不審そうに湯のみを見ていた。

 

 夕飯時、父親が帰宅して玄関で怒鳴っている。

「どうしたの、父さん?」

「どうしたもこうしたもない、玄関に犬の糞か何かわからん、腐ったゴミがいっぱい落ちてるんだ。誰の嫌がらせだ!!」

 正直心当たりもないので、ゴミ袋を持って出て行き玄関を掃除している父親を手伝う。

 これはひどい。門や、階段、玄関入り口まで何箇所も気持ち悪いゴミが落ちていた。

 全部終る頃には夕飯がすっかり冷めてしまっていた。食欲もなくなったので、ハンバーグは残してしまった。

 

 風呂に入り、自分の部屋でレポートをまとめる。提出日は来週だが、早めにやっておかないと忘れる可能性がある。家族は1階のリビングでテレビを見ながらくつろいでいる。


 自分一人の部屋。

 なのになんで耳元に生ぬるい息遣いを感じるのだろうか。

 背中から首、頬までを一気に鳥肌が覆いつくした。

「・・・・・・あ、の・・・・・・ぇま・・・か・・・・・・?」

 耳元を羽虫が飛ぶようなノイズ感のある嫌な声で話しかけられた。

 心臓の鼓動が跳ね上がり、冷たい汗を感じる。

 横は一切見ない。パソコンデスクの椅子の高さを調節して、一気に下げる。

「・・え、き・・ぉえれ・・・んで・・・ぉ?」

 再びのノイズ音。耳の真横から声は聞こえる。つまるところ、椅子を下げた俺に合わせてくれたようだ。やめてほしい。


 それから30分ほど経った。横の気配だけをひたすら感じる。パソコンの作業は終ってしまったのでネットサーフィンをする。動画でも流して気分転換したいところだが、スピーカーから変な音が流れてきそうな上に、動画自体に横の奴が登場されたら俺は耐えられないだろう。

 ニュースサイトを見てからネット小説のサイトに飛ぶ。カチカチとマウスの音が響く中、耳元では水っぽい音と、ポト、ポトと、何か柔らかいものが落ちる音が聞こえてくる。もうダメだ耐えられない。

 俺は限界ぎりぎりのところで踏みとどまる。そうだ、ネットでお祓いの方法を見つけよう。あった。どんな悪霊も即消滅!!これなら効きそうだ。なになに・・・・・・まず日本酒を用意・・・・・・却下だ。移動できないのだから前提が間違えていた。再び検索。念仏や真言を唱えるタイプのものを複数コピーしてメモに貼り付けていく。

「南無阿弥陀仏、何妙法蓮華・・・アーメン、سورة المرسلات」

最後の方とか何読んでるのか最早意味不明だったが、確信を持っていた。これは効く!!どうだ!!

 意気揚々と真横を向いた俺の顔に生ぬるく、鶏肉が腐ったような生臭い息がかかる。

 40センチはあるだろう、でかい顔だった。口に唇はなく、穴があいている。その穴から蛆虫がぽとぽとと落ちる。目の中には3,4つの眼球がむりやりつめられていた。皮膚は紫の死斑まみれ、髪の毛はへばりつくようにぬめっている。

「ぷぴゅ・・・・・ぷしゅる・・・・・・・おぼぉ・・・・・・」

 口から蛆虫を漏らしながらそいつは俺に抱きついてきた。


 俺は失神した。

 気が付いたら朝になっていた。つけっ放しのパソコンをシャットダウンする。足元には蛆虫と、泥のような何かが落ちていた。

「夢じゃないのかよ」


 つぶやいた俺は、電源が切れて暗くなったパソコンのモニタを見て凍りついた。

うつりこんだ俺に、抱きつくようにして昨日のあいつがいた。


 


誤字脱字、評価、なんでもください。よろしくお願いします。

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