寒い夜
夜、寒さは僕の
鼻腔をいじめる
身体の表面は毛布に
守られるが
冷たくても
空気は吸わねば
ならないから
寒さは僕の鼻から侵入して
じんわりじわじわ
冷たい触手を広げていく
暑さは冷風が
吹き飛ばしてくれるが
寒さは隙間から
シレっと入ってくるから
油断ならない
僕は布団と毛布にくるまって
かたく目を閉じた
寒さは僕の耳もとに
息を吹きかける
頬をゆっくり撫で
キスをする
冷えきった手足をこすり合わせて
自家発温
無駄な抵抗と寒さは布団の隙間から
侵入すると僕の腹を撫でた
寒い、寒いよ
我慢できなくなって、僕は
寒さを口にした
寒いよ、寒い
心の奥から熱いものがこみあがると
自家発温、フル稼働
寒さは恐れをなして僕の内から出て行った
こめかみに伝った涙を
寒さは目ざとくみつけて
吐息をふきかけた
僕は気にせず、流れる涙をそのままに
深い眠りに落ちていった