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エさん、何て言った?

作者: 史町
掲載日:2026/04/23

声が小さい。

「学級委員らしいけど、それなりにがんばります」


頭をペコペコと下げ、私は席に座る。


…。

なんで学級委員なんだ? 私。

1年生の1学期は、先生が決めた委員会じゃないといけないらしいけど、高校受験の成績がよかったのか? 知らんけど。


入学式の翌日、自己紹介をすることになった。


自己紹介終わったと、ひと安心し、私は『そちら』に顔を向ける。


…やっぱり格好いい! 同じ女子だけど格好よすぎて好きになりそう!


あの子だけ、あり得ないくらいに格好いい。

顔つきとか、雰囲気とかが、とにかく格好いい。

名前は分からない。知りたくてたまらん。


…。

よし、あの子の順番が来た。


椅子から立ち上がり、やはり凛々しい顔つきで、

「…エです、よろしくお願いします」


…。

エさん?

油断してたから最初らへんは聞き取れなかった。


周りの人たちも『エさん』が何て言ったか分からず、ざわざわと。

「今喋ったよね?」「喋った…のかなあ!?」

他の人たちは『全て』聞こえなかったらしい。


私の聴力最強!




エさん? エさんなの?


いや、そんな訳ないよな。


2時限目、体育。

私たちはグラウンドでストレッチ、いわゆる準備運動をしている。


2時限目だけど、未だにあの『エさん』の名前が分からない。


周りの人たちは恥ずかしくて会話できないらしいし。

まあ、格好いいから。


声はものすごく小さいけど。

顔は堂々としているのに。


いや、私、耳には自慢があって、聴力検査のときは得意気になっちゃうけど。

本当、エさんの声はすごく小さい。


1時限目は当たらなかったし。先生があの『エさん』を当てたら、名前が分かったんだけど。

私は念じまくったのに、当てろと。


「はい、じゃあ、2人でするストレッチなんで、2人1組になってー」

先生が言う。


すると、走って『エさん』が私に近づいてきて、隣に立った。


集中。


「よろしく」


よし、聞き取れた。


けど、え…、なぜに私?

走って近づいてきたんだけど。イケメン女子が。


モテ期到来?




「一緒に帰ろうか」

「…はい」


そして、『エさん』と2人きりで下校。

向こうが誘ってきて。


『一緒に食べようよ』『一緒に移動しよう』


今日だけでも何回誘われたか。


いや、いやいやいや、マジで訳分からん。何した、私このイケメン女子に何した!? 昨日の入学式でこのイケメン女子の存在を知ったんだけど!?


…格好いいから許せるけどね!


いやー、まさかこんなイケメンに好かれるとは! 百合には興味ないけど当事者になっちゃいそう!


てなことはおいといて、


「…何で私なの?」


思いきって聞いてみる。


「あと、名前教えて」

これは小さな声で(このイケメン女子程じゃないけど)。


『エさん』はやはり凛々しいまま、


「江尻さんが学級委員だから」



「自分、生徒会長になりたいんだ。だから、学級委員の隣にいて、言動とか、学級委員は何するかとか、学びたいなって」


声はものすごく小さく、けどものすごく真面目な顔で。


「生徒会長になりたいの?」

「夢なんだ」

「声小さいけど?」

「…うん。だから、まずは、態度だけでも真面目にしている。昔から、声が小さいから」


生徒会長。


「変かな」


「いや。

一緒に頑張ろう!」


モテてるから、ではないらしい。

私が学級委員だから、らしい。


正直、私は生徒会長になる気なんて全くない。


「全力でサポートするよ!」

格好いいし!


「…き」

隣にいたのに、何て言われたのか、分からなかった。


顔が赤く、微笑んではいた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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