エさん、何て言った?
声が小さい。
「学級委員らしいけど、それなりにがんばります」
頭をペコペコと下げ、私は席に座る。
…。
なんで学級委員なんだ? 私。
1年生の1学期は、先生が決めた委員会じゃないといけないらしいけど、高校受験の成績がよかったのか? 知らんけど。
入学式の翌日、自己紹介をすることになった。
自己紹介終わったと、ひと安心し、私は『そちら』に顔を向ける。
…やっぱり格好いい! 同じ女子だけど格好よすぎて好きになりそう!
あの子だけ、あり得ないくらいに格好いい。
顔つきとか、雰囲気とかが、とにかく格好いい。
名前は分からない。知りたくてたまらん。
…。
よし、あの子の順番が来た。
椅子から立ち上がり、やはり凛々しい顔つきで、
「…エです、よろしくお願いします」
…。
エさん?
油断してたから最初らへんは聞き取れなかった。
周りの人たちも『エさん』が何て言ったか分からず、ざわざわと。
「今喋ったよね?」「喋った…のかなあ!?」
他の人たちは『全て』聞こえなかったらしい。
私の聴力最強!
エさん? エさんなの?
いや、そんな訳ないよな。
2時限目、体育。
私たちはグラウンドでストレッチ、いわゆる準備運動をしている。
2時限目だけど、未だにあの『エさん』の名前が分からない。
周りの人たちは恥ずかしくて会話できないらしいし。
まあ、格好いいから。
声はものすごく小さいけど。
顔は堂々としているのに。
いや、私、耳には自慢があって、聴力検査のときは得意気になっちゃうけど。
本当、エさんの声はすごく小さい。
1時限目は当たらなかったし。先生があの『エさん』を当てたら、名前が分かったんだけど。
私は念じまくったのに、当てろと。
「はい、じゃあ、2人でするストレッチなんで、2人1組になってー」
先生が言う。
すると、走って『エさん』が私に近づいてきて、隣に立った。
集中。
「よろしく」
よし、聞き取れた。
けど、え…、なぜに私?
走って近づいてきたんだけど。イケメン女子が。
モテ期到来?
「一緒に帰ろうか」
「…はい」
そして、『エさん』と2人きりで下校。
向こうが誘ってきて。
『一緒に食べようよ』『一緒に移動しよう』
今日だけでも何回誘われたか。
いや、いやいやいや、マジで訳分からん。何した、私このイケメン女子に何した!? 昨日の入学式でこのイケメン女子の存在を知ったんだけど!?
…格好いいから許せるけどね!
いやー、まさかこんなイケメンに好かれるとは! 百合には興味ないけど当事者になっちゃいそう!
てなことはおいといて、
「…何で私なの?」
思いきって聞いてみる。
「あと、名前教えて」
これは小さな声で(このイケメン女子程じゃないけど)。
『エさん』はやはり凛々しいまま、
「江尻さんが学級委員だから」
?
「自分、生徒会長になりたいんだ。だから、学級委員の隣にいて、言動とか、学級委員は何するかとか、学びたいなって」
声はものすごく小さく、けどものすごく真面目な顔で。
「生徒会長になりたいの?」
「夢なんだ」
「声小さいけど?」
「…うん。だから、まずは、態度だけでも真面目にしている。昔から、声が小さいから」
生徒会長。
「変かな」
「いや。
一緒に頑張ろう!」
モテてるから、ではないらしい。
私が学級委員だから、らしい。
正直、私は生徒会長になる気なんて全くない。
「全力でサポートするよ!」
格好いいし!
「…き」
隣にいたのに、何て言われたのか、分からなかった。
顔が赤く、微笑んではいた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!




