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自分史  作者: 暮葉畏啓
紅楼古社
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捻くれたタイムカプセルに言葉を詰めよう

これは一話にしないといけないなと言う俺の思いがそこにあった。そんな文章が書けてしまったようにも思う。なにかが、形になった。そんな曖昧な感覚が、確かに形となって生まれて俺の中から旅立った気がした。 それは、なかなかどうして。 じゃないか。


今受験が終わった。


昨日、情報関係の仕事に就職した。


一昨日に退職した。


3日前に婚約相手が死んだ。


明日、俺は死ぬ。


平日の夕方、俺は自室で椅子に座る。無表情の顔に若い血が通っている。ただタブレットを見るその目に皺はまだない。五つの短文を打ち込んで俺は天井を仰いだ。


小学生の頃から見慣れた白い天井に白く光るLEDの丸い照明。


この景色が今の俺が見慣れた現在の環境だけれど、少し経てばそれも変わっているのだろう。


その時、どんな顔をして過去を振り返るのだろうか。


五つの短文を俺は打ち込んだ。


そこに書かれているのは恐らく俺が長い人生の中で口に出す言葉。


いつか俺が言う言葉。


それを言う時の俺は、その言葉に対して現実味が薄いはずなんてないけれど、今の俺には現実味が薄い。


けれど、いつかそれを言う時の俺は、目の前の現実をただ言葉にしているだけで、そこに驚きなんてない。


だからたぶん逆もあると思う。


俺が今、当たり前に見ている景色に友達に課題に未来に好きなこと。


それらは今の俺にとっては、ただ目の前に広がる現実。


けれど、別の俺にとっては懐かしいもう、現実味も持たない記憶の中の思い出。


俺に違いはない。


いつも俺で、連続した俺がいつの時代もいる。


俺が生きている大体100年は少なくとも俺が入れ替わることなどなく、すっとこの街にいるはずだ。


だから、笑ってしまう。


同じ場所にいても、時が違えば全く別物の世界のようで、それを思い出す時、俺は全く別の世界を見ている気分になる。


それは今の俺も経験するし、恐らく全く別の世界にいる俺も経験することだ。


妙な一体感。恥ずかしいような嬉しいような連帯感。


なぜかそれが気持ち良い。


だって、いつだって俺は別の俺が知らない全く別の体験をしているのに、思う感想は同じなのだから。


だから、ここに文章を残す。


これが未来に俺や俺の子孫に何かを残す文章になることを思って。


今の俺が未来の俺に少しだけ思いを馳せるきっかけになったことを喜んで。


そうやっていつまでもこの文章は残り続ける。


俺は俺。


俺は俺じゃない。


けれど、この文章はいつも俺のそばにあり続ける。



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