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第6話 協力しよう

キャラの名前の読み方

雪倉冬貴ゆきくらふゆき

燕泉凛つばめいずり

 巨竜の喉奥で雷光が脈動し、次の瞬間、灼熱と電撃が混ざり合ったブレスが咆哮とともに吐き出された。


「くっ……!」


 泉凛は辛うじて身を翻し、直撃を回避する。だが、ブレスが背後の壁に直撃。


 ドォン!!


 轟音とともに岩壁が崩れ、一部の瓦礫が泉凛の背中に叩きつけられた。


「ぐっ……!」


 思わず膝をつき、体勢を崩す。


(このダンジョン……壁や天井が脆いのか!?)


 冬貴は状況を見ながら、直感的にそう判断する。


 そして――。


 その隙を逃さず、巨竜が爪を振り上げる。


 鋭く研ぎ澄まされた爪が、泉凛を仕留めるべく猛然と振り下ろされる。その一撃は、躊躇もなく、まさに致命の刃となって迫っていた。


「リアライズ――【爪盾クローシールド】!」


 瞬時に冬貴がアルカナを展開し、閃光のごとく駆け出す。


 展開された防御壁が獣爪の猛撃を受け止め、火花が散った。衝撃が腕に伝わりながらも、冬貴は踏み込んで耐える。


 歯を食いしばりながら、冬貴は拳を握りしめる。


「くっ……!」


 泉凛は荒い息をつきながら、悔しげに冬貴を睨みつけた。


「……何で、邪魔するのよ……!」


 冬貴は真っ直ぐな視線を向け、一歩踏み込む。


「頼む! 協力してくれ!」


 泉凛は顔を背けるようにして、声を張り上げた。


「これは……私の戦いなの!!」


 冬貴は少しだけ息を吐き、静かに目を細める。


「君がどんな事情を抱えているかは分からない」


 静かに言い放ち、冬貴は続ける。


「だけど――たった一人で勝てなかったからって、ここで終わるつもりか?」


「……っ!!」


 泉凛の瞳が揺れる。


「でも、二人で戦うと、足を引っ張り合うかもしれないじゃない!」


「さっきの攻撃……俺が防いでなかったら、君、死んでたかもしれないんだぞ」


「……!」


 泉凛が言葉を詰まらせる。


「二人なら、カバーし合うことができる。一人より勝てる可能性が高い」


「……それで勝っても、私の強さは証明できない!」


 泉凛は叫ぶように吐き出す。


「違う!」


 冬貴の声が強く響く。


「一人で勝つことが強さの証明じゃない! 全国大会の君の試合、君が倒されたことで敗北した。だけど――それは、君が敵より弱かったからじゃない!」


「……!」


「君はあの中で誰よりも強かった。でも! 君が仲間との協力を拒んだから負けたんだ。もし仲間からの援護があれば、もっと敵を倒せていた」


 冬貴は続けて、力を込めて言う。


「君の強みを、君自身が殺してるんじゃないのか?」


「――――っ!」


 泉凛の表情が大きく揺れる。


 長い沈黙が落ちた。


 そして――


「……その、協力ってのは……どうやるの?」


「勝てる可能性がある策が一つだけある。その策のために、俺の言ったとおりに動いてほしい」


 冬貴は静かに言う。


「……ハッ。この私に指示するつもりなの? でも……」


 泉凛は、震える拳を握りしめた。


「この場を切り抜けるために……今回だけ、聞いてあげる」


 小さく、自分に言い聞かせるように呟いた。


「ありがとう」


「ッ……!?」


 冬貴の言葉に、泉凛が顔を赤くする。


「それで、策ってなんなの?」


 泉凛が怪訝そうに尋ねる。


「その前に一応確認させてくれ……モンスターのHP、君が全部削ったわけじゃないよな?」


「え?」


 泉凛が眉をひそめる。


「俺の予想だけど……ドラゴンのブレスが、何かの拍子で天井に直撃して、崩落した瓦礫がヴェルキオスに直撃したんじゃないか?」


 冬貴は慎重に言葉を選びつつ問いかける。


「……そうよ。あいつの攻撃を避けようと跳んだときに、ピンポイントでブレスを撃ってきたの。そしたら天井ごと落ちてきた……」


 泉凛は少し悔しそうに肩をすくめる。


(たしか、ヴェルキオスは確実にプレイヤーに大ダメージを与えられると判断した時だけ、強力な必殺技を仕掛けてくる……)


 冬貴は攻略サイトの情報を思い出した。


「私は、せいぜい二割くらいしか削ってないわ」


(それでも一人で二割って、十分に化け物だけどな……)


 冬貴は内心で舌を巻きつつも、確信に至った。


「やっぱりそうか……なら、俺の策で勝てる」


 冬貴が呟くと、泉凛も勘づいたようだ。しかし、すぐに表情を曇らせる。


「でも……あの時はマジで死ぬかと思ったんだから! 空中で避けようがなくて、直撃したのよ。しかも、瓦礫も降ってきたし……HP満タンだったからギリギリ耐えたけど……次は無理。絶対即死よ」


 淡々と言うが、その声には焦りと恐怖が滲んでいた。


「――大丈夫だ」


「は?」


 泉凛が目を丸くする。


 冬貴はモンスターの攻撃の隙をついて、彼女に近寄り、声を潜めた。


「いいか、こうしてほしい――」


 そう言って、彼は策を話す。


「……アンタ、頭おかしいんじゃないの?」


「どうかな」


 冬貴も肩をすくめ返す。


「でも、勝つにはこれしかない」


 沈黙。


 そして、泉凛は小さく息を吐いた。


「……この私に指示したんだから、絶対にヘマするんじゃないわよ!」


 泉凛は力強く言い放った。


「じゃあ頼むわよ!」


 泉凛は言い、冬貴が頼んだ作業に取り掛かった。


「――こっちだ、ドラゴン!」


 冬貴が声を張り上げると同時に、銃を抜き放つ。


 引き金を数度引いた。銃声が洞窟に響き、弾丸がヴェルキオスの鱗に火花を散らす。


 咄嗟に編み出した挑発だった。狙い通りとは言えないが、巨竜の瞳がこちらを向く。


 洗練された戦術でもない。ただ必死に、注意を引きつけるためだけの行動だった。


 ヴェルキオスが低く唸る。爛々と光る眼が、今度は冬貴に標準を合わせた。

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