表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/26

第24話 新たなアルカナ

キャラの名前の読み方

雪倉冬貴ゆきくらふゆき

燕泉凛つばめいずり

小針御代こばりみしろ

櫛形耕平くしがたこうへい

阿賀野氷純あがのひすみ

三条稲咲さんじょういなさ

 静寂の中、稲咲の声が落ち着いた調子で響いた。


「では、私はどうすればいいのでしょう?」


 しかし、その表情には微かな影が差していた。氷純の冷徹な評価を受け、自身の力不足を痛感しているのだろう。


 そんな彼女に、泉凛が腕を組みながら言葉を投げた。


「まぁ……ただ」


 少し言葉を選ぶように口ごもりながらも、意を決して続ける。


「この私ですら、たまには攻撃を外すけど……稲咲は一度も外さなかった。それって結構すごいことじゃない?」


 冬貴も同意するように頷く。


「確かに。近距離、遠距離、どんな間合いにも適応できる。それに、【妖精】の敏捷性を活かしたヒットアンドアウェイも洗練されていますね」


 それでも、氷純の指摘した「全国レベルには通用しない」という言葉がのしかかる。耕平が顎をさすりながら提案した。


「なんか新しいアルカナでも作ったらいいんじゃねぇか?」


 その言葉に、冬貴の思考が動く。


「……確かに、それが最適解かもしれません」


 彼は稲咲を見やり、静かに問いかけた。


「何か使えそうなアルカナ素材がないか、持っているものを見せてもらえますか?」


 稲咲は「かしこまりましたわ」と優雅に頷き、ステータスウィンドウを開く。そこには彼女が今まで集めてきた無数の素材が並んでいた。


 冬貴はそれをじっと見つめ、何度かスクロールしながら呟く。


「ふむ……」


 隣で見ていた耕平が笑う。


「冬貴が考えるなら、間違いねぇよ」


 御代も優しく微笑みながら続ける。


「冬貴くんはアルカナの考案が得意なんです」


 冬貴は素材一覧を丁寧に確認していた。その中で、ふと手を止める。


「……これは?」


 彼の目に留まったのは【魔樹の種核】。レアリティは最大値5に近い「4」。そして、その能力は「急成長する植物の種を出現させる」というものだった。


=============================

【魔樹の種核】


▶ タイプ: 植物系

▶ レアリティ: ★★★★(4)

▶ 攻撃力: 380

▶ 消費MP: 15

▶ 発動時間: 1.5秒


▶ 効果:


特殊な種子を生成し、地面に植えた瞬間に爆発的に成長させる。ツタや根が瞬時に伸び、敵の動きを封じると同時に攻撃を加えることも可能。しかし、周囲の土壌の栄養を急速に吸収するため、発動には十分な栄養が必要となる。


=============================


(これは……)


 攻撃力が高い上に、消費MPも少ない。それに、敵を拘束する効果まである。


 冬貴は【魔樹の種核】の性能を確認しながら、思わず唸った。攻撃と妨害を兼ね備えた、極めて優秀な素材だ。


「三条先輩……ここにある【魔樹の種核】っていうのは?」


「ああ、それは……ルフォレーヌ東方にあるダンジョンのボス【ヴァルディス・グロウス】から入手した素材ですわ」


 冬貴はその名を聞いて、ふと記憶を辿った。


(……そうか、稲咲がボスを倒したことがあると言っていたのは、こいつのことだったのか)


 【ヴァルディス・グロウス】――そこそこ強く、また、非常に攻略が厄介な植物系モンスター。その討伐には手間がかかり、プレイヤーが苦戦を強いられる存在だ。冬貴も以前、ネットでその情報を目にしたことがあった。


「これ、なぜ使わなかったんですか?」


 冬貴の問いかけに、稲咲は静かに視線を落とした。そして、落ち着いた口調で答える。


「確かに強力なのですが……発芽には十分な栄養が必要なのです。普通の土では不十分で、環境が整っていなければ、ただの種ですわ」


「なるほど……」


 冬貴は思考を巡らせる。


 稲咲先輩はヒットアンドアウェイを得意とする。そして、この【魔樹の種核】は発芽条件が厳しい……。


 だが――使い方次第では?


 冬貴は、以前ネットで調べた情報を思い出す。植物系のボスモンスターの中には、プレイヤーに寄生するように種を植え付ける能力を持つものもいるという。


(肥沃な土壌……栄養のある土壌……それは、必ずしも大地である必要はないのでは……?)


 彼の脳裏に、一つの閃きがよぎる。


「一度、街へ戻りましょう」


 氷純が興味なさげにぼそっと呟く。


「どうしたの?」


「俺に考えがあります。もしかしたら、強力なアルカナを作れるかもしれない」


 稲咲は小さく微笑み、「分かりましたわ」と頷いた。


●▲■


 冬貴たちはアルカナ製造所へと向かった。この施設は街ごとに一つだけ存在し、素材を組み合わせて新たなアルカナを生み出せる場所だ。


 ルフォレーヌの製造所は、木々に囲まれた神秘的な建物で、魔力の光が淡く揺れていた。室内には魔法陣が刻まれた台座があり、そこで素材を精製できる。


 冬貴は稲咲に言う。


「【魔樹の種核】を中心に、【吸精蔦】【血染めの刃片】【迅速成長の苔】を補助素材として作成してください」


 稲咲が頷き、素材を配置すると、魔法陣が光を放ち始める。粒子が収束し、新たなアルカナが形を成していく。やがて光が収まり、手のひらサイズのアルカナが残った。


「できましたわ……!」


 御代が期待を込めて言う。


「これで強いアルカナが?」


 冬貴は慎重に首を振った。


「……わからない。発動するかも未知数だ」


 その言葉を聞いた氷純が、じっとアルカナを見つめ、静かに呟いた。


「……なるほどね」


 彼の鋭い分析眼が、何かを見抜いたらしい。


 数分後、新たなアルカナが誕生した。


「完成しましたわ」


●▲■


 再び草原へと戻ると、【フェングロウル】が彼らを見つけ、唸り声を上げた。


 稲咲は静かに剣を構え、戦闘態勢を取る。


「では、新しいアルカナの威力、確かめてみますわね」


 彼女の声が広がると同時に、フェングロウルが低い唸りを上げ、猛然と突進してくる。その爪が稲咲を狙い、一瞬で間合いを詰める――。


「【ブライア・エンチャント】!」


 鋭い斬撃と共に、剣が淡い緑の光を帯びた。その刃がフェングロウルの身体をかすめた瞬間――。


 モンスターの傷口から、無数のツルが爆発的に飛び出した。


「うお……何これ!?」


 泉凛が驚愕の声を上げる。


「やっぱり! 栄養のある土壌は必ずしも、土じゃなくてもよかったんだ」


 冬貴が叫ぶ。


 ツルはまるで生き物のようにうねりながら瞬く間に広がり、フェングロウルの全身を絡め取った。モンスターが暴れようとするが、ツルは締め付ける力を増していく。


 抵抗すればするほど、その生命力を吸い取るかのように、モンスターの体力がみるみるうちに削られていった。


「【魔樹の種核】に加えて、種を出現させる素材と、エンチャント素材、さらに種の消滅を防ぐ素材を組み合わせましたの」


 稲咲が静かに説明しながら、満足げに剣を構え直した。


 やがて、モンスターは抵抗する力を失い、草原に沈んだ。


「おお……。すげぇ」


 耕平が感嘆の声を漏らす。


 全員が圧倒されていた。だが、冬貴の胸には別の感情が沸き上がっていた。


(やったぞ……!)


 自分の戦略が、見事に成功した瞬間だった。

読んでくださりありがとうございます!


この小説を読んで


「面白そう!」 「続きが気になる!」


と少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!


あなたの応援が、作者の更新の何よりの原動力になります!


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ